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第13話 え? もう一回言って欲しいのですよー。

こっそり書き溜め分第2弾。

ダンジョンさんツアーから半年。

あれ以来、死んだ魚のような目をしていたシロさんと、無表情ながらも微妙な雰囲気となっていたリアナさんの2人は、暫くその状態が続いたのですが、カンテラが返ってきた頃にようやく何時もの調子に戻ったみたいです。

私もようやく返ってきたカンテラのおかげで本調子に戻ったのですよー。


そんな感じで復活した私達ですが、現在お茶会中です。


「相変わらずシェーネさんとマタムネさんのお茶は美味しいのですよー。でもリアナさんが入れるともっと美味しくなりますねー? 入れ方がうまいのでしょうかー?」


「お茶の入れ方は毎日研究しておりますので。クロマ様おかわりはいりますか?」


「いるのですよー」


「っく! リアナ! 帰ったら特訓だ!」


「分かりました。花嫁修業ですね」


お茶菓子もマタムネさん特製なんですよー。

幸せとはこの事です。

美味しい物は幸せの塊なのですよー。


「あ、スライムさんも紅茶飲みますかー?」


「!」


普段椅子になってもらっているスライムさん。

紅茶は大好物です。

体を触手のように伸ばして先っぽをスプーンのように変形させて飲んでいます。

スライムさんって本当に知能がないんでしょうかー?


「キュー!」


「クー!」


お菓子の匂いに誘われて来たのかカルマさんとこだまさんが来ました。

子供はお菓子、大好きですからー。

マタムネさんが子供達のおねだりに耐えられずにお菓子をよく作っているみたいですけど、太らないか心配ですねー。

虫歯になる可能性もあるかもですよー。


「カルマさん、こだまさん。お菓子は食べ過ぎちゃ駄目ですよー。歯磨きも忘れないでくださいね?」


「クキュイ!」


「クゥ!」


元気な返事なのですが不安を感じますよー。


「キヒヒッ!」


あ、ランテさん。ちゃっかり気配消して背後から私の茶菓子取らないでくださいよー。


「追加のお茶を持ってきたのにゃー」


「お菓子も、あるよ」


マタムネさんとシェーネさんがお茶とお菓子のおかわりを持って来くれました。


「あれ? 頼んでいましたっけー?」


「皆さん匂いに釣られてやってきますからにゃー……」


「予想、通り……」


なるほどー。

確かに来ていますねー。

皆さん結構食い意地張っています。

いつの間にか結構な人数が来ていますねー。

暇なのでしょうかー。


「昨日辺りから冒険者が急激に減ったようですにゃ。いつもにゃったら朝でも数人は来るのに昨日からほんの数人しか来てないにゃ。今日は今のところ0人にゃし」


はー、何かあったんでしょうかー?

風魔さんなら何か知っているかもしれませんね。

でも、ここ最近全く姿が見えないです。

前から居ない事が多かったですが、ここ数ヶ月は姿を見た覚えすらないですねー。

どこに行っちゃったんでしょうかー?


「……ここに」


急に隣に現れた風魔さん。

本当に神出鬼没です。


「驚かさないでくださいよー。でも、久しぶりですねー風魔さん」


風魔さんが現れた時って毎回なにか用事がある時だった気がするのですが、今回も何か用事があるのでしょうかねー?


「何かあったのですかー?」


「……ご報告申し上げます。勇者暗殺に成功しました」


風魔さんの言葉にわりと騒がしかった食堂が静かになりました。

私もちょっと風魔さんの言葉が理解できなくて固まってしまったのですよー。


「え? もう一回言って欲しいのですよー」


「……ご報告申し上げます。勇者暗殺に成功しました」


先ほどと全く同じ口調で全く同じ事を言ってくれました。

そのおかげで一応理解できたと思うのですが信じる事が難しいです。


「本当、ですかー?」


「……証拠として勇者の首を持ってまいりました」


私、勇者の顔知らないので首を持ってこられても困るのですがー。

どうするんですかー? これ。

なんか呪われそうなのですごく要らないのですがー。


「捨ててきてください。なんだか呪われそうなのですよー。ちゃんと処理してきてくださいねー」


「……御意」


ふう、これで安心ですねー。


「ちょっと待ってぇぇぇぇ!! 兄さん!? 暗殺って何!? 勇者の首!? どうなってんのーーーーー!!」


「にゃ、にゃにが起きてるのにゃーーーーー!!」


「私、耳がおかしくなったのでしょうか……いけませんね、最近調子が悪いように思います」


「ふ、風魔! 少し待て! 確認が終わらぬうちに捨てに行くな!」


『ヒャハハハ! オイオイ風魔サンヨォ……何ソンナ楽シソウナ事1人デヤッテンダヨ……代ワリニオ前ヲ切ラセロ』


「ふぉっふぉ……わし、もう駄目じゃな。補聴器でも作らねばのう……」


『……どうやら俺も補聴器が必要のようだ。今から工房で設計図作るか』


「私の分もお願い……」


「ケケッ! 大騒ギダネ。楽シイネェ!モット騒ゲ!」


「皆、うるさい……」


大パニックとはこの事を言うんでしょうねー。

というか魔物さん達のリーダーさんが殆ど全員食堂にいるのですが、持ち場はどうなっているんですかー?

段々食堂が阿鼻叫喚となっていますし、片付けるの大変そうなのですよー。


「あ、スライムさん。防御お願いしますよー」


「!」


パニックのせいで食堂が戦場のようです。

一部どさくさに紛れて味方を攻撃する人もいるみたいですが、スライムさんが流れ弾を防御してくれるので安心です。

後はパニックが収まるのを待つだけですねー。


なんか、すごく長引きそうですがー。




数時間後。


あれから乱闘騒ぎになったせいで食堂が滅茶苦茶です。

乱闘騒ぎの主犯は逃亡しちゃいましたし、片付け誰がするんですかー?

マタムネさん、本気で泣いていますよー?


「マタムネ……私も、手伝う」


「ありがとにゃ……シェーネ……」


子供にだけ手伝わせるのは駄目ですねー。


「私達も手伝いましょうかー」


とりあえず残っている人達と分裂スライムさん達でお片付け大会なのですよー。




さらに数時間後。


とりあえず厨房の方の被害は少なかったようなので夕飯は大丈夫そうです。

それに片付けをしているうちに皆さん落ち着いたみたいですねー。

あー、一仕事終えた後のお茶は美味しいです。


「あれ? 僕達何しに来たんだっけ?」


「確か、お茶会だったと記憶しておりますが」


あれー? なんでシロさんとリアナさんがいるんでしょうかー?

何時ものように遊びに来てたんですかねー?

片付けを手伝わせてしまったみたいで申し訳ないのですよー。

後でマタムネさんにお土産を作ってもらいましょう。


あー、お茶が美味しいです。









―――――――王都エルヴェール


勇者が拠点としている世界最大の王国、エルヴェール。

そこで大事件が発生していた。


それも、建国以来なかったような大事件が……


王城の謁見の間では重苦しい空気が立ち込めていた。

誰もが言葉を発する事すらできないような状況の中、王の前に跪く兵士は青ざめ小刻みに震えながら王の言葉を待つ。


「……確認は取れたのか?」


王の言葉も微かに震えており、動揺を隠せていない。

しかし兵士は王の言葉が震えている事にも気付かないぐらい何かに怯えていた。


「……はい。勇者様の部屋で発見された首のない死体は……勇者様本人との事です」


その報告を聞いた瞬間、周りにいた国の重鎮達は報告が信じられぬと報告をした兵士へ怒声を飛ばす。

しかし王の静止により声は収まり、皆が王の言葉を待つ。


「報告ご苦労であった。下がって良いぞ」


「……っは!」


兵士は青ざめた顔のまま退出し、王は残った重鎮達を会議場へと移るように指示を伝えた。

古くからの友人でもある近衛騎士団の団長を1人残した王は呟く。


「人類の希望が消えた今、我らに残された道があると思うか?」


「……弱気になるなど王らしくありません。……確かに勝機は限りなく無くなったのも事実です。しかし……私達が諦めるわけにはいかないでしょう?」


「そう、だな……人類の希望は勇者であっても、人類の代表は我ら王だからな……民を導く義務が我らにはある」


「そうです……ゆえに、諦めるわけにはいかない」


「我は最後まで戦い抜く。お前も、ついて来てくれるか?」


「もちろんです。どこまでもお供しましょう」




こうして王城で静かなる決意が行われた。


勇者が死んだ事で希望を失い絶望した人類。


彼らの行先に果たして希望があるのか?


それはまだ、誰も知らない……





次回、最終話という名のエピローグ……一応。



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