第12話 ダンジョンさん見学ツアーですねー。
こっそり最新話投稿。
第28回ダンジョンさん会議から半年。
未だにカンテラが返ってこず、最近私のいらない子感が漂ってきたように思うのですよー。
一応カンテラがなくとも戦えるには戦えるのですが、魂の力の保管もできないし魔法の威力も落ちますし……
この状態で人間さんと戦うのはやっぱり不安です。
結局いらない子なのですよー。
「兄さん! ダンジョン内見学させて!!」
いきなりやってきたと思ったらそんな提案をするシロさん。
悩んでいて気付きませんでした。いたんですねー?
それにしてもどうして見学したいんでしょうかー? 結構頻繁に来ていると思うのですがー?
「ほら、僕の配下を探索隊とかに貸してるじゃない。だから兄さんはある程度僕の所の配下を知ってるでしょ? でも僕ってあまり兄さんの配下って知らないなーと思って。それにダンジョン内もいつも案内に従って来てるからちゃんと見た事ないし」
何も言っていないのに答えてくれました。
女の人は皆、読心術を習得しているのでしょうかー?
「兄さんの言いたい事なら分かる!」
私限定ですかー?
それでも怖いですねー。
「兄さんにダンジョンを案内して欲しいんだ!」
何か、話がすり替わっているというか強引に変えられているような気が……
「さあ早く! 今すぐ! 私と一緒に!!」
考える事すらできないです。
助けてくださいよー。リアナさん。
「シロエ様、それは少々強引すぎるかと。先ほどの説明も説明になっていません。せめて同盟を組んでいるのだからある程度の情報共有を持ちかけるべきかと……まあ、それは置いておいて」
そこで一旦区切ったリアナさんは一度目を閉じるとカッ! と擬音が付きそうな勢いで目を開きました。
「ダンジョンはある意味魔王の家です! と言う事はこのダンジョンはクロマ様の家! そのような場をデートの場とするのは如何なものかと!」
「ッハ!?」
何か衝撃的な事実に気付いたように四つん這いとなるシロさん。
話が見えないのですよー。
訳が分からないです。
説明が欲しいですねー。
「つまり、シロエ様はクロマ様と今日1日一緒にいたいと言う事ですよ」
「今日1日だけじゃない! いつも一緒にいたいんだ! 常に一緒にいたいんだ! お風呂も、寝る時だって……ふふふふふふふ」
「シロエ様、なんでしたら私がお風呂も就寝時もご一緒致しましょう。遠慮はいりません。いつでもよろしいですよ?」
「僕は、兄さんと、いたいんだーーーーー!!!」
なんでしょうね?
シロエさんとリアナさんは一緒にいると独特の雰囲気を出すのですよー。
これが二人の世界ってやつですかねー?
「さすがですクロマ様」
「違うんだ兄さーーーーーーん!!」
私、さっきから一言も喋っていないのですよー。
それなのに会話が続いています。
結局なんの会話をしているのか分からないのですがー?
えーと、こんな場の事をなんて言うんでしたっけー?
「……」
なるほど、混沌と書いてカオスですかー。
ダンジョンさん、どうにかなりませんかねー?
「……」
無理と即答しないでください。
考えるのも面倒くさい? 見捨てないでくださいよー。
数分後。
「さあ兄さん! 案内よろしく!」
何故私は腕をがっしりシロさんに捕まえられているのでしょうかー?
「理解せずとも良いのです。流されてください」
まるで逃げないようにと肩に手を置くリアナさん。
無表情で肩掴むの止めてくださいよー。怖いです。
「しゅっぱーつ!!」
案内してくれと言っているのに引き摺らないでください。
色々体中が痛いのですよー。
食堂
「ここは……食堂? なんでスライムまみれ?」
巨大な机と料理を出すカウンターと厨房、そしてたくさんいるスライムさん達。
そんな光景を見て驚いているシロさん。
リアナさんは無表情で驚いているのか全く分からないのですよー。
表情筋が死んでいるのでしょうかー?
「お望みでしたら表情を変えますが、どんな表情をお望みでしょう?」
チェンジ可能なんですかー?
気になるけどなんか怖いです。
なんでしょう? 見てはいけない感じなので止めておきます。
「ねえ、兄さん。なんで食堂にこんなスライムがいるの? というかスライムって何食べるの?」
スライムさんの主食は水というか水分ならなんでも良いらしいです。
食堂にスライムさんがいるのは、料理を運んだり椅子になっていたりするからですよー。
ここにいるのは分裂スライムさんだけですが常に一定以上います。
昼型の人や夜型の人もいるので皆さん自由に食堂に来ますからねー。
食堂は年中無休で働ける従業員はいくらいても良いのですよー。
あ、ちなみにスライムさんは色んな所で仕事しています。
生産組さん達の工房や家畜部屋、畑部屋……わりとダンジョンさんの中ならどこにでもいますねー。
スライムさん万能すぎるのですよー。
「スライムにこんな運用法があったとは……クロマ様も中々侮れませんね」
「兄さん天才!」
私よりスライムさんがすごいと思うのですがー。
まあ、次に行くのですよー。
食べ物系生産部屋前
厨房の近くに扉が三つあるのですが左から家畜部屋、養殖部屋、植物部屋です。
ここの部屋からいつでも新鮮な食材が得られるのですよー。
「植物部屋、とは?」
畑や果樹園、薬草畑とか植物系を育てている部屋の総称です。
今の時間だったら管理人のシェーネさんがいるはずですねー。
「女の名前!?」
何か殺気を出したシロさんが植物部屋に突撃して行っちゃいました。
植物が嫌いなのですかー? もしかして野菜が嫌いとかー?
好き嫌いはダメなのですよー。
「後を追いましょう。それとシロエ様はピーマンとニンジンが嫌いです」
嫌いなものが子供っぽいですねー。
とりあえず行きましょうかー。
植物部屋
「兄さん……まさかロリコン!? っく! まさか兄さんの好みが子供だったなんて! 私が童顔で小柄だったら……!」
「……誰?」
首を傾げるシェーネさんとよく分からない事を叫ぶシロさん。
童顔で小柄が良かったんですかー?
十分童顔で小柄だと思いますよー?
小さい男の子って感じの外見ですねー。
「男の子!? 兄さん! ショタは! ショタは好きじゃないの!?」
リアナさん。解説頼むのですよー。
「つまりクロマ様の性へ……いえ、好みのタイプを聞いているのです。クロマ様はどのような方が好みなのですか?」
好みのタイプ、ですかー?
考えた事がないですねー。
難しい質問なのですよー。
「若返りの薬を作る必要性が……? 仕草も子供らしくした方が……でも……」
ブツブツと何かを呟きながら暗い目をしているシロさん。
答えないといけないですかー?
そこまで重要な事でしょうかー?
ん? 何か服が引っ張られています。
「クロマ……これ、美味しいよ」
シェーネさんいつの間に果物の収穫していたのですかー?
あ、これ、美味しいですねー。
なんか不思議な食感と味なのですよー。
マタムネさんが喜びそうですねー。
「うん。マタムネ、いつも喜ぶ……可愛いの」
そうなのですかー、それは良かったです。
では、ご馳走様でした。
果物のお礼に撫でてあげますよー。
浮かして果物を食べたので手は汚れていませんし、ちゃんと手で撫でるから心配ないのですよー。
「……えへへ。……ありがとう、クロマ」
こちらこそなのですよー。
「微笑ましい光景ですが、シロエ様完全に忘れられていますね」
あれ? リアナさんどうしたのですかー?
「なんでもありませんよクロマ様。少々お待ちください。少し用事ができましたので」
用事ってなんでしょうかー?
とりあえずシェーネさんとお話して待ちましょう。
数分後
青ざめて死んだ魚のような目をしているシロさんが目の前にいるのですがー。
いったい何があったんでしょうねー?
軽くホラーな顔ですよー?
「気にしないでください。さあクロマ様、案内の続きを」
気になりますが気にしてはいけないのですねー。
では、次行きますよー。
食堂
あれから侵入者用のフィールド以外を中心に色々回って、一通り案内を終えたので食堂に戻ってきました。
なにやら微妙な雰囲気が漂っています。
何かおかしな事がありましたっけねー?
「むしろおかしな所しかなかったかと」
「どうなってるの……このダンジョン?」
えー、普通だと思うのですがー?
おかしな所って何処でしょう?
あれから回った部屋は食べ物系の生産部屋その後に子供部屋、生産組さんの工房に修練場……何処もおかしな所なんてないじゃないですかー。
「食物系の部屋も異常でしたがまだ良いのです。……子供部屋も数百歩譲って良いでしょう。しかし工房や修練場はおかしいです」
「あれ、なに……? 異常を作っているの? どういう事なの?」
異常を作るってなんですかー。
工房で作られる物はとっても便利な物が多いですよー。
生活がとても楽になります。
あ、でも今の生産組さんは何か幽鬼となっているので、そこは異常かもですがー。
「……それ以上に作っている物が異常だったのですが……これ以上聞いても答えを得られそうにありませんね」
特に変な物を作っているようには見えなかったんですがー?
シロさんとリアナさんは何かを見つけたのでしょうかー?
もしかして、二人は見えないものが見える能力があるのですかー?
「……」
「……そのような能力は持っておりません。私達の見た物はクロマ様と変わらないです」
異常な物……やっぱり思い当たらないですねー。
「すみません。私達の見間違いでした。……おかしな物など無かったのです。そうですね? シロエ様」
「無かった……無かったよ……僕は何も見なかった……見なかったんだっ!」
そうですかー、気の性だったのですねー。
なんかシロエさんの様子がおかしい気がしますがそれも気の性ですねー。
「……最後に1つお聞きしたいのですが?」
なんでしょうかー?
「あの修練場……いえ、やはりこれも気の性なのでしょう。すみません、やはりいいです。聞くべき事は何もありませんでした」
そうですかー。
他にダンジョンさん以外の事で何か聞きたい事がありますかー?
なければこれで案内はおしまいにして、マタムネさんに何か作ってもらいましょう。
お腹がすいたのですよー。
「……」
「何もございません……」
じゃあ、ご飯なのですよー。
マタムネさーん、お願いします!
あれ? 聞こえなかったみたいですね?
「……」
喋り方を忘れたのかって?
何を言ってるんですかダンジョンさん。
私はちゃんと喋っていますよー。
「……」
え? 読心術が使えないから何言っているのか分からないって?
……あ! 私、今日一言も喋っていません!
喋らなくても会話できるのでうっかり忘れていたのですよー。
ところでダンジョンさん。
どうやって喋るんでしたっけ?
実は結構前から書き溜めてはいたんですが、ある程度書くまで投稿しないでいようとぐだぐだしてたら1年以上経っていました……
亀更新過ぎて待っている人はいるのか……って感じです。
いたらありがとうです。
こっそり挿絵も投稿したので興味のある方はどうぞー。
何時の間にか色々変わっていてびっくりですよー……




