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第953話『帰路』

 ダンジョンの端っこをクト様の爪に組み合わせたところ、天空大陸へと続くヒビ割れを広げる効果が得られた。ただし、普通に巻き付けただけでは、人が通れる形状のヒビ割れは作り出せないものと見受けられる。


 「これが天空大陸……キラキラはしてますが、よく見えないです」


 ジェラさんが初めて見る天空大陸の光景を見て、なんとなも言えない顔をしている。たくさん生っているであろう黄金爪の輝きしか見えないので、あまり感慨もないようだ。


 ジェラさんがのぞき終わったところでヒビ割れを閉じ、メフィストさんはクト様の爪をシロガネさんへと返す。とりあえず、ダンジョンの端っこはもらっていくとして、これからどうするかについてメフィストさんが話を始める。


 「次は、クラフトについて詳しい人に会いに行かないといけない」


 「ええ。ミルキス山脈にいるというドン・ガレッキ氏ですわね。ワタクシも情報を収集いたしましたが、帝国に所属している職人の中にも、彼を高く評価している方が多く見受けられましたわ」


 帝国の工房に行ったついでに、シロガネさんがドン・ガレッキさんについても聞いてきてくれたようだ。その筋では一流と呼ばれている人たちからも一目置かれているとすれば、腕に関しても期待通りなのだと思われる。


 「でも、ミルキス山脈って……少し前に大規模な魔人討伐作戦があった場所の近くですよね。今、どうなってるんでしょうか」


 ジェラさんも魔人討伐作戦に関しては、新聞などで話に聞いているようだ。そうか。あの戦いがあったのは、ミルキス山脈の近くだったのか。確かに、雪国って言っていた気もするな。


 そんなジェラさんの不安について、シロガネさんが知り得ている情報を明かしてくれる。


 「魔人討伐作戦につきましては経過を観察しておりますが、現状は別の地域から魔人がやってきている様子などもございません。暫定的には成功と判断されております」

 

 「じゃ……じゃあ、行っても問題はないんですね。寒そうなのは難ですけど……」


 一応、勇者の人も雪山を見に行ってくれたしな。これだけ作戦から日が経って、特に異変もないとあれば、油断はできないまでも滞りなく終わったと見てよさそうではある。


 「寒い場所ですか~。ラピスラズリーちゃん、なんかあったかい装備ないですか?」

 「帝国製の装備があれば、そこまで寒さは感じないかと思います。はい」

 「気持ち、もうちょっとあったかくしたいです。見た目とか」

 「でしたら、いいものがあります。少々、お待ちください」


 エメリアさんから温かそうな装備との要望を受け、ラピスラズリーさんがお店の奥にある暗闇へと消えていく。スカートのすそを伸ばすようにして立ち上がりつつ、シロガネさんがエメリアさんに告げる。


 「あなた、お金を持っておりませんわよね」

 「でも、いい装備があれば全員分、あった方がいいと思います」

 「……品物を見てから考えますわ」


 備えあれば憂いなしなので、シロガネさんも絶対に買わないとは言い切れない。しばらくして、白い毛布みたいなものを持ったラピスラズリーさんが戻ってくる。


 「ふかふかマントです。前の留め具に炎の魔石を取り付けると、マントの中に熱がこもって温かいです。軽くて省エネ仕様です」


 「それ私、欲しいです。他に欲しい人、何人います?」


 「あ……私も欲しいです」


 ジェラさんも含めて、全員が手を挙げる。マントの形といい、炎の魔石で中から温められる構造といい、着るこたつ……もしくはカマクラといった印象である。魔石を取り付けなくても、普通に温かそうではある。


 「あれ?ジェラちゃんも、どこか寒いところに行くんですか?」

 「え……いえ、私も……皆さんのお役に立ちたいと思いまして。ダメでしょうか」

 「そんなことないです。一緒に行きましょうよ」


 ジェラさんはダンジョンの件に限らず、ミルキス山脈にも同行してくれる様子だ。リディアさんが今、街を離れて行動できる状態ではないので、人手はあると助かる部分も多いかもしれない。


 「私もンジュー族として、ちゃんと胸を張って天空大陸に行きたいです。ただ連れて行ってもらうだけでは申し訳ありません。お役に立ちます」


 「黄金爪を安全に食する方法が見つからない以上、ンジュー族の方にご協力いただく必要も出てくるやも解りません。ワタクシたちも食した後、どれほど寝込むか推定できません」


 シロガネさんからも協力の要請があった。リディアさんの不調が、あと何日くらい続くのかも不明である。なんせ、昔はスパイスの状態で食べたものを丸ごといったからな……その分、味も強力と見ていい。


 「……5着、ございますか?マントをいただきますわ」

 「1着、3ジュエルです。はい」

 「本当にお安く、なんでもある店ですわ……」


 リディアさんの分も確保していくとして、シロガネさんがマントを購入してくれた。試しにエメリアさんが着てみるようだ。


 「……ぬくぬくしますね。寝袋にも使えそうです」


 マントにはフードもついており、しっかりと耳まで守ってくれる。見た目はまるっとしたウサギのようで可愛らしくもある。雪の中で着ても姿を見失わないようにか、フードの横に赤くて丸いポンポンがついている。


 「ラピスラズリー様。ダンジョンの探索や、ダンジョンの端っこに関する料金は……」

 「そちらは必要ありません。地下の巨大な魔獣も……よろしく頼むと言っております」


 今もまだラピスラズリーさんは、テレパシーのようなもので聖獣と繋がってはいるようだ。ダンジョンの端っこの価値についてはシロガネさんも、幾らほどになるか想像がつかないようで、この場はお言葉に甘えることとしたようだ。


 ラピスラズリーさんに案内してもらい、お店の入り口まで移動する。お気に召したようで、まだエメリアさんはマントを着ている。


 「それではまたお待ちしております。はい」

 「大変、お世話になりましたわ」


 ラピスラズリーさんにお別れを告げ、みんなはお店を出た。すぐさま、メフィストさんが次の計画に意気込む。


 「次はミルキス山脈へ行く」

 「お待ちを……まずは休息と準備が必要ですわ」

 「そうです。ジェラちゃんも疲れてます。明日にしましょう」

 「わ……私は今からでも。がんばります」

 「ジェラちゃんがよくても、私が疲れました。休みたいです。おひるごはんも食べたいです」


 すぐにでも行けるというメフィストさんとジェラさん。休んだ方がいいというシロガネさんとエメリアさん。ただ、後者の二人に関しても、準備をしたい人と単純に休みたい人に分かれる。


 「まずは、お嬢様にご報告いたします。そして、お嬢様の体調管理もワタクシの務めですわ」


 黄金爪が体に良いという点は差し引いても、シロガネさんはリディアさんが心配であるようだ。何かあれば執事のゲンブルさんが報せてくれそうではあるが、ひとまずはルビィさんのお屋敷に帰ることとなった。


 「ジェラ様は……どちらにお住まいが」

 「私はギルドの寮です。といっても小さな集合住宅みたいなものですけど……」


 連絡が取りやすいよう、シロガネさんはジェラさんの住んでいる場所を確認している。ギルドには寮もあるらしい。リディアさんが寮に入らなかったのは、部屋が空いていなかったからとかなのだろうか。


 細い路地を抜けて大きな通りへと出たところで、ジェラさんがみんなに呼び掛ける。


 「私は、これからギルドに行って、ギルド長と話をしてきます。ダンジョンで見たこととか、話しても大丈夫でしょうか」


 「あー。なんかギルド長も色々と事情は知ってそうですし、いいんじゃないですか?」


 「解りました。では、またお力になれそうな時は呼んでください。よろしくお願いします」


 エメリアさんから適当な許可をもらい、ジェラさんは羽を広げてギルド本部のある方へと飛んでいった。ギルドへの報告は、あちらに任せてしまってもよさそうである。


 「じゃあ、私たちも帰りますか。その前に、お昼ご飯、食べて帰ります?」

 「お嬢様を差し置いて外食は、メイドの流儀に反しますわ」


 喫茶店で頼む飲み物はセーフだが、食事はメイド的にアウトであるらしい。エメリアさんもメフィストさんも一応、メイド見習いではあるようなので、そこはメイド長に従うこととしたようである。


 ダンジョンにもぐっていた時間は体感より、かなり長かったようである。ラピスラズリーさんのお店に入った時は朝だったのに、今は昼時が近い。街の活気も今が最高潮である。


 「夢魔……あなた、いつまで防寒用のマントを着ているのです。目立ちますわよ」

 「かわいくないですか?」

 「マントはともかく、中身はかわいくありませんわ」


 まだエメリアさんはマントを着ている。かわいいのは確かにそうだが、白いフード付きのマントが街で浮いて見えるのも言う通りである。


 「そういえばラピスラズリーちゃんが、炎の魔石をつけると、もっとあったかいって言ってました。シロガネちゃん、持ってないですか?」


 「用意はございますが、今はつける必要がございませんわ」


 「いえ、もしも雪山で使ってあったかさが足りなかったら大変です。試しておいた方がいいと思います」


 効果を見ておくのは大事だと考えたようで、シロガネさんが赤くて小さな石を手渡す。それをマントの前にある留め具みたいなものへと取り付ける。


 「あー……だんだん、あったかくなってきました」


 見た目には解らないが、マントの中が温まってきたようだ。


 「……」


 メフィストさんがエメリアさんの顔をのぞきこんでいる。若干、顔が赤い。汗っっぽい感じもする。ついに耐え切れず、エメリアさんがマントを脱いで魔石を外す。


 「……まだあったかいですよ。シロガネちゃんも着てみませんか?」

 「イヤですわ……」

 「じゃあ、メフィストちゃんに」

 「うん」


 シロガネさんにお断りされたので、メフィストさんが代わりに着せられている。なお、マントを着て留め具で胸元を閉めると、ネックレスについている俺としては前が全く見えない。温かさとは関係なく、そんなささいな問題点が1つ明らかとなった。

続きます。

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