友人
イルミスに礼を言って校舎を出ると、すでに辺りは真っ暗だった。
校舎から寮に行くのは二度目だが、迷うほどの道ではない。
アルマークが帰ろうとすると、誰かが彼の方に走りよってくるのが見えた。
「あ、いたいた。おーい、アルマーク」
モーゲンとネルソンだ。笑顔で手を振っている。
「ああ、どうしたんだい」
「君が寮に帰るのは今日が初めてだから、迷ったらいけないってウェンディが心配してね。みんなで待ってたんだ。さっきまでウェンディたちもいたんだけど、あんまり暗くなるとリルティが怖がるんで、女子は先に帰したところ。みんな君によろしくってさ」
とモーゲン。
「そうなんだ。わざわざありがとう。ずいぶん待ったんじゃないのかい」
「俺たちも放課後には自主練習したり森に行ったり、色々してるからね。ま、もののついでさ」
とネルソン。言い方はぶっきらぼうだが、好意的な響きがある。
「さあ帰ろう。おなかすいたよ」
モーゲンのその言葉を合図に、アルマークは彼らと連れだって歩き始めた。
二人は、アルマークに道すがら、学校のことや自分達のこと、色々なことを話してくれた。
夜、寮の自室で一人、アルマークはイルミスに教えられた瞑想を実践していた。
自らの体内に宿る魔力を感じること。魔法の始まり。
今日の昼には、魔力を流れる血液のようにイメージしていたが、今は何となく、体の奥、芯のほうに溜まっているひとかたまりの水のように感じる。
自分のイメージが正解かどうかは分からない。
イルミスも、今はまだ正解を求める段階ではない、と言っていた。
学院へ至る旅路、孤独な旅空の下で自分自身と対話する経験を重ねてきた。それと同じようなものだ。
アルマークは飽きることなく瞑想を続けた。
翌日から、アルマークの忙しい日々が始まった。
ちんぷんかんぷんな授業に必死に食らいついていく。
分からないところはウェンディが親切に教えてくれたが、彼女にばかり甘えるわけにもいかなかった。校舎内の図書室に通い、自習に励んだ。
放課後は、イルミスのもとで瞑想。
イルミスはずっと付き合ってくれることもあれば、一言二言アドバイスをして出ていってしまうこともあった。
ウェンディたちは快く協力を申し出てくれたが、今はただ瞑想しているだけで、手伝ってもらうような段階にはない。それにウェンディたちも放課後はそれぞれ何かしら忙しそうではあったので、アルマークは申し出に感謝し、いずれ時期が来たら手伝ってもらうことを約束した。




