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【書籍化】アルマーク ~北の剣、南の杖~  作者: やまだのぼる
第七章

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戦いを終えて

 モーゲンが試合場を下りると、2組の選手たちが一斉にモーゲンに駆け寄った。

 アルマークチームもトルクチームもない。

「モーゲン!」

 興奮で顔を真っ赤に染めたネルソンがモーゲンに抱きつく。

「すげえ。お前、本当にあのコルエンを。すげえ、すげえよ」

「ありがとう」

 モーゲンはぎこちない笑顔で答える。

「おめでとう、モーゲン」

 少し涙ぐんだウェンディが言う。

「あなたの勇気が伝わってきた」

 モーゲンはネルソンに抱きつかれたままで、その言葉に照れた笑顔を返す。

「ありがとう、ウェンディ」

「可能性はゼロじゃねえと思っていたが」

 とトルク。

「コルエン相手にやってのけるとはな。大した奴だぜ」

「僕だけの力じゃ」

 首を振ろうとするモーゲンの肩をデグが叩く。

「モーゲン、かっこよかったぜ」

「本当にやってくれたね。練習通りに身体が動くだけでも凄いのに、きっと今日の君の動きはその上を行っていたよ」

 レイドーもそう言って頷く。

「ありがとう」

 モーゲンは彼らの後ろにようやくアルマークを見つける。

「アルマーク」

 アルマークはトルクとデグの間から笑顔で頷く。

「モーゲン、おめでとう」

「やっぱり怖かったよ」

 モーゲンは言いながら、自分の持っていた剣をアルマークに差し出す。

「もう僕は当分、剣は握らなくていいよ。まだ震えてる。武術はお腹いっぱいだ」

 その剣を受け取りながら、アルマークは言う。

「僕は何の心配もしていなかったよ、モーゲン。君はやるべき時にやる男だから」

 その言葉にモーゲンは顔をしかめて抗議する。

「だから、いつも君がそうやって僕を買いかぶるから」

 それで、僕はこうやって。

 その後の言葉をモーゲンは飲み込んだ。

 笑顔で首を振る。

「でも、こんな経験は初めてだ。ありがとう、アルマーク。全部君のおかげだ」

「君が自分で自分の力を証明したんじゃないか」

 アルマークはそう言って笑う。

「僕は練習に付き合っただけさ」

 そのアルマークの声をかき消すように、ネルソンが叫ぶ。

「これで俺たち2組の優勝だぁ!!」

 その声に、観客席の2組の女子たちからも呼応するように大歓声が上がった。



「あ、そうか」

 観客席。

 フィッケが今気付いたように声をあげる。

「そうだよ、この試合で3組が勝てば俺たち1組の優勝だったんだ。俺、どうして2組を応援してたんだろう」

「なんだ。僕は君がそれでも2組を応援してるのかと思って、少し感心してたんだぞ」

 アインが呆れ顔でフィッケを見ると、フィッケは顔をしかめて首を振る。

「アイン、お前頭いいくせに何バカなこと言ってるんだ。どこの世界に競争相手を応援する奴がいるんだよ。知ってりゃ3組を応援したに決まってるだろ。ああ、くそ。コルエンの奴、なんで負けたんだ」

 地団駄踏んで悔しがるフィッケを見て、アインはため息を一つついた後、試合場の2組の様子を見て呟く。

「でも、もともとの僕の予想では2組は最下位のはずだった。彼が転入してくるまでは」

 その目は、穏やかな笑みを浮かべているアルマークに注がれていた。

「ウェンディやネルソン、それにモーゲン。みんな以前とはまるで別人みたいだった」

「トルクだって前より強かったぜ」

 フィッケが口を尖らす。

「なんか変に落ち着きが出ちまってさ」

「そうだな」

 アインは頷く。

「クラス委員のウォリスがいないのに2組はよくまとまっていた。あのトルクまで、自分達のリーダーをアルマークだと認めていた」

 決して前に出るタイプではないのに。

「不思議な奴だな」

 アインは笑みを湛えた目でアルマークを見つめた。



 試合を終え、再び2組と3組の出場選手全員が試合場の中央に整列する。


「ありがとう、楽しかった」

 アルマークは、目の前に立つポロイスに言う。

「色々と懐かしい気持ちを思い出せた。君のおかげだ」

 ポロイスはその言葉に一瞬怪訝な表情をしたが、すぐに厳しい顔になって、答えた。

「僕はもう誰が相手であっても決して見くびったりはしない。それが今日の教訓だ」

 アルマークに、というよりも自分に言い聞かせるように。

「うん」

 アルマークは穏やかに頷く。

「僕だけじゃなく、君にも得るものがあったのなら僕も嬉しいよ」


「今日の借りは必ず返す」

 エストンがネルソンに言う。

「ネルソン。名前を覚えたら僕はしつこいぞ」

「おう。望むところだ」

 ネルソンは笑顔で頷く。

 その顔に、エストンは指を突きつける。

「次はノリシュ無しで勝負だからな」

「最初からノリシュに助太刀なんか頼んでねえよ」

 ネルソンは顔をしかめる。

 が、エストンの真面目腐った顔を見て、苦笑する。

「だけどまあ、またやろうや」


「素晴らしかったわね。モーゲンは」

 ロズフィリアが、レイラに言う。

「まさかコルエンが負けるなんて。あなたたちのクラスの団結は本物ね」

「……次は勝つわ」

 レイラはたった一言、それだけ言った。

「……ええ。またやりましょう。私に勝つ方法を一生懸命考えてらっしゃいな」

 ロズフィリアはそう言って、微笑んだ。


「負けたよ、ルゴン」

 レイドーの言葉に、ルゴンはためらいがちに言う。

「途中までは完全にお前のペースだったぜ。最後、どうして……」

 レイドーは首を振る。

「勝ったのは君の強さ。負けたのは僕の弱さだ」

「……お前にもいろいろあるってことかな」

「君と同様にね」

 レイドーは頷いて、笑って見せた。


「武術って合同授業ねえのかな」

 コルエンが背を屈めてモーゲンに囁く。

「え、どうして」

 モーゲンが聞き返すと、コルエンはちらりと横目でアルマークを見る。

「俺、アルマークと試合やってみたいんだよな」

「アルマークはきっと頼めばやってくれると思うよ」

「本当かよ」

 コルエンは満面の笑みを浮かべる。

「今度、寮の部屋に行くって言っておいてくれ」

「試合が終わったばかりなのに……君はすごいね」

 モーゲンは苦笑いする。

「僕は、もう当分剣を見るのも嫌だよ」

「そりゃそうだろ」

 コルエンは笑って、自分の胴を叩く。

「お前は自分のやる気を、残らず全部ここにぶつけたんだから」

「うん」

 モーゲンは頷く。

「受け止めてくれてありがとう」

 それを聞いてコルエンは、おかしそうに笑う。

「ありがたいと思うなら、よくよくアルマークに言っておいてくれ」

 その笑顔を見ているうちに、モーゲンはようやく身体の震えが止まっていることに気付いた。





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― 新着の感想 ―
他の方のコメントを読んで思いましたが、武術大会を一人一人丁寧に描写したとはいえ、この長尺をずっと面白いままでいさせてくれた技量に感服致しました。すっごく面白かったです!
終わったー!ってノーサイド感がすごくいいですね。 互いに色んな思いを持ってそれを伝え合って…本当に良い大会になったと思います
[良い点] 読んでいてすごく気持ちがいい
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