ホワイトラビィ
それは黒かった。煤けたと言ってもいいくらい黒かった。そういう色なのかと思ったけどそうじゃないのはすぐに分かった。だってその黒い毛玉じっと見てたら。
『ホワイトラビィ』
って出てるんだ。てことは白いんだろ?!
「えーっと・・・」
これは近づいていいものか悩みどころだな。怯えたり警戒したりする動物に手出すほどバカじゃない。でも、街の中で動物見たの初めてだし、実体あるし、汚れてるっぽいけど気にはなる。
これって家持って帰ったら怒られるのかな?拾ったって言って大丈夫なんだろうか。
ホワイトラビィの近くでしゃがみながら考える。そもそも触れなければ連れ帰ることなんてできないのでこれからしだいなんだけど。
そうっと手を近づけてみる。軽く身じろいだようだが逃げないので背中のあたりを触ってみる。軽く触れる程度に、それでも逃げないのでゆっくり撫でてみる。逃げない、そして・・・・・・汚い。
手が少し黒くなった土の汚さというよりは埃の汚さっぽい。脂は出てないようで気持ちパサついている。
「洗ったら白くなるのかな?なるよな、ホワイトっていうくらいなんだし」
逃げないし抵抗もしないのをいい事に撫でながらぶつぶつ声に出てしまっているとホワイトラビィの出てきた方から走ってくるような音がした。
「ねぇ!ここらに黒いの来なかった?!」
リーアと大して歳の変わらなそうな声に振り向くと虫取り網みたいなものを持った気の弱そうな男の子がいた。
「黒いの・・・・これ?」
大丈夫そうなのでホワイトラビィを抱き上げる。服が汚れるが気にしない。
なぜか男の子は目を見開きリーアとホワイトラビィを交互に何回も見る。
「な、なんで触れるの?」
「なんでって、おとなしいから?」
実際腕の中のホワイトラビィはおとなしい。ちなみに触ってみた感じだとちゃんと耳は長いようだが毛がかなり長いために埋もれてしまっていまだに黒い毛玉にしか見えない。
男の子は「いや、でも、あれ?」と何か混乱しているようだ。
「この子の飼い主?」
そうであれば物申す!とまでは言えないけど確認するとなんとも言えない微妙な顔をされた。
「まぁ、持ち主だよ。捕まえてくれてありがとう。ほらこっちこ・・ってぇ!」
男の子は礼を言った後すぐに手を出してきてホワイトラビィに齧られた。そしてホワイトラビィは隠れるようにリーアの腕と腹の間に潜り込もうとしている。
慌てたように今度は網を被せようと迫ってきたが網の縁が身体に触れたとたんにホワイトラビィは暴れだした。
「ちょ、待って待って!危ないから!落とす!」
自分の腕も爪で引っかかれるけどそれよりも変に落として怪我しちゃっても嫌だし、それにコイツ!なんなんだ!飼い主なら嫌われてるんじゃないよ!
いや、まぁいたよなぁペットに嫌われてる飼い主って・・・もしくは下に見られてる飼い主か。
リーアはトリマー時代の飼い主さん達の中でも本当に飼い主ですか?と聞き返したくなるような関係のペットと飼い主を思い出していた。
まぁ極々一部だったけどね。そして目の前のコイツは接し方がなってないのだけは確かだ。いきなりケンカ売ってるようなものでしかない行動はいろいろどうかと思う。だから逃げられるんだよ。




