治部田 累
第四話です。
千文字以内と銘打っているのに、千文字ぴったりにこだわってしまう。これがわからない。
どうぞお楽しみください。
「舞ー! 今日もかわうぃいねー! 大好きー! 愛してるー!」
「うっさいバカ累。あんたいい加減にしなさいよ。高校生にもなってバカな事ばっかり言って」
「怒った顔もソーキュート! ねー、チューしていい?」
「いいわけあるか!」
俺の言う冗談めかした告白を、舞が叩き落とす。
それが小学校の頃からのやり取り。
あまりにも近すぎて、その近さが壁になる関係。
それでもどんどん綺麗になる舞が、他の男のものにならないための牽制。
そして外堀から埋めて、「お前らもう付き合えよ」と周りから言わせる作戦。
「はぁ……」
我ながら姑息だと思う。
でも舞が彼氏を作るとか考えるだけで吐きそうになる。
だからこの告白はやめられない。
これが舞と俺をつなぐ、一番確実な方法なんだ。
「……あっじぃ〜……」
夏休み。
する事もなく、俺は部屋の真ん中で溶けていた。
早く学校始まらないかな……。
そうしたら舞に会える。
俺の冗談めかした告白に、怒ったり、時には教科書で叩いたりする舞。
日に日に可愛く綺麗になっていく舞。
夏が終わり、残り半年。
高校を卒業したら……。
「……アイスでも買ってくるか……」
部屋に一人でいるとネガティブになる。
携帯と財布だけポケットに突っ込んで外に出る。
うへぇ、暑い。
夏なんか早く終わればいいのに。
「あれ? 累じゃない」
「!?」
舞!? 何でこんなところに!?
ってご近所だから当たり前か!
「よぉ、今日も可愛いな」
「ウザ。あんた学校じゃなくてもそのノリなの?」
あ。そうか。
学校じゃないから、牽制も外堀もいらないな。
「お前どっか行くの?」
「図書館で勉強」
「受験生だもんな」
「あんたもでしょ」
「外語大だっけ? 小学生の時からの夢だったもんな、外交官」
「へぇ、覚えててくれたんだ」
あれ? 何かいい雰囲気……。
今なら気持ちを伝えても……?
「あのさ、舞……」
「何よ」
いつも言ってる言葉。
「可愛い」
「好きだ」
「付き合って」
「愛してる」
それをマジで言ったら俺と舞は……!
「俺さ、あの……」
「何」
「えっと……」
な、何で言えないんだ!?
いつもは平気で話せてる言葉が胸で詰まる!
「あんたホント大丈夫? 熱中症とかなら飲み物買ってこようか?」
「……い、いや、大丈夫……」
「そう? じゃあね」
すたすたと立ち去る舞を見送る俺を絶望感が襲う。
俺もしかして、軽い告白ばっかりしてたからマジ告白できなくなってる……?
い、いや! 急に会ったから戸惑ってるだけだ!
早く夏終われ!
学校が始まればきっと……!
読了ありがとうございます。
治部田 累……高校三年生。チャラ男な容姿をしているが、中身は真面目で一途。『女になら誰にでも声かけてそう』という印象で、外堀はあまり埋まっていない。
月岡 舞……高校三年生。クールでサバサバ系女子。そのため友人以外からは『こえー女』扱い。本人は気にしていない。
次話もよろしくお願いいたします。




