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夏の焦れ恋  作者: 衣谷強
4/7

治部田 累

第四話です。


千文字以内と銘打っているのに、千文字ぴったりにこだわってしまう。これがわからない。


どうぞお楽しみください。

まいー! 今日もかわうぃいねー! 大好きー! 愛してるー!」

「うっさいバカるい。あんたいい加減にしなさいよ。高校生にもなってバカな事ばっかり言って」

「怒った顔もソーキュート! ねー、チューしていい?」

「いいわけあるか!」


 俺の言う冗談めかした告白を、舞が叩き落とす。

 それが小学校の頃からのやり取り。

 あまりにも近すぎて、その近さが壁になる関係。

 それでもどんどん綺麗になる舞が、他の男のものにならないための牽制。

 そして外堀から埋めて、「お前らもう付き合えよ」と周りから言わせる作戦。


「はぁ……」


 我ながら姑息だと思う。

 でも舞が彼氏を作るとか考えるだけで吐きそうになる。

 だからこの告白はやめられない。

 これが舞と俺をつなぐ、一番確実な方法なんだ。




「……あっじぃ〜……」


 夏休み。

 する事もなく、俺は部屋の真ん中で溶けていた。

 早く学校始まらないかな……。

 そうしたら舞に会える。

 俺の冗談めかした告白に、怒ったり、時には教科書で叩いたりする舞。

 日に日に可愛く綺麗になっていく舞。

 夏が終わり、残り半年。

 高校を卒業したら……。


「……アイスでも買ってくるか……」


 部屋に一人でいるとネガティブになる。

 携帯と財布だけポケットに突っ込んで外に出る。

 うへぇ、暑い。

 夏なんか早く終わればいいのに。


「あれ? 累じゃない」

「!?」


 舞!? 何でこんなところに!?

 ってご近所だから当たり前か!


「よぉ、今日も可愛いな」

「ウザ。あんた学校じゃなくてもそのノリなの?」


 あ。そうか。

 学校じゃないから、牽制も外堀もいらないな。


「お前どっか行くの?」

「図書館で勉強」

「受験生だもんな」

「あんたもでしょ」

「外語大だっけ? 小学生の時からの夢だったもんな、外交官」

「へぇ、覚えててくれたんだ」


 あれ? 何かいい雰囲気……。

 今なら気持ちを伝えても……?


「あのさ、舞……」

「何よ」


 いつも言ってる言葉。

 「可愛い」

 「好きだ」

 「付き合って」

 「愛してる」

 それをマジで言ったら俺と舞は……!


「俺さ、あの……」

「何」

「えっと……」


 な、何で言えないんだ!?

 いつもは平気で話せてる言葉が胸で詰まる!


「あんたホント大丈夫? 熱中症とかなら飲み物買ってこようか?」

「……い、いや、大丈夫……」

「そう? じゃあね」


 すたすたと立ち去る舞を見送る俺を絶望感が襲う。

 俺もしかして、軽い告白ばっかりしてたからマジ告白できなくなってる……?

 い、いや! 急に会ったから戸惑ってるだけだ!

 早く夏終われ!

 学校が始まればきっと……!

読了ありがとうございます。


治部田じぶた るい……高校三年生。チャラ男な容姿をしているが、中身は真面目で一途。『女になら誰にでも声かけてそう』という印象で、外堀はあまり埋まっていない。


月岡つきおか まい……高校三年生。クールでサバサバ系女子。そのため友人以外からは『こえー女』扱い。本人は気にしていない。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ある意味、狼少年状態になっている彼が彼女に本当の告白が出来る日は来るのか……やはり続きを想像すると楽しいですね。 [一言] 実は彼の本当の気持ちに気付いていて、ようやく本当の告白が出来たわ…
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