野田 華子
第三話です。
ちなみに主人公は女子・男子と交互になってます。
これで性別不明な名前が出ても大丈夫、なはず。
どうぞお楽しみください。
野田 華子、十八歳。
私は今、恋をしている。
「あ、華子さん」
「いらっしゃいませ」
「今日も花束お願いできるかな」
「勿論です」
このイケメン大学生、九条 盛仁さんに……。
「いつものようにヒマワリベースで女の子向けに。夏らしくクルクマを入れてみましょうか」
「お願いします。やっぱり女の子に贈る花は、女の子に選んでもらうのが一番いいですね」
「……アリガトウゴザイマス」
叶わぬ恋だと知っていても……。
九条さんが初めてうちの店に来た日、私は配達に行った父の代わりに店番をしていた。
日曜の午前は滅多にお客も来ないので、私は花の在庫のチェックをしていた。
そんな時だ。
「すみません」
「はっはい!」
すらりとした高身長のイケメンに嬉しくなるも、
「女の子に贈る花束を作ってもらえますか?」
一瞬で胸の高鳴りは消え失せた。
「……ワカリマシタ。ゴ予算ハ……?」
「三千円くらいでお願いします」
「ドンナ感ジニシマショウ……」
「落ち込んでる子が笑顔になるような明るい感じで」
「っ! か、かしこまりました!」
にこっと笑う九条さんに胸のときめきが復活するのを感じて、私は慌ててヒマワリをメインに花束を作った。
「すごい! これで三千円なんて! ありがとうございます!」
「い、いえ、喜んでもらえたなら良かったです!」
笑顔で花束を抱えて出て行く九条さん。
その姿を見送りながら、胸に込み上げる喜びと苦しさに、私は恋に落ちた事を自覚したのだった……。
「今日の花も素敵だ。いつもありがとう」
「いえ、喜んでもらえて嬉しいです」
私の花束が九条さんを笑顔にしている事は誇らしいけど、それを共に喜ぶ彼女さんを思うと、胸が燃えそうになる。
「で、これ、迷惑じゃなかったら」
「え?」
差し出されたのは取手付きの紙箱。
行列のできるスイーツ店の箱だ。
え、私に……?
「いつも素敵な花束作ってくれるから、ちょっとしたお礼」
「え、そ、そんな……。こちらこそいつもありがとうございます……」
「嫌いじゃなかったら食べてくれると嬉しいな。じゃあまた」
「あっ……」
九条さんはそのまま帰っていった。
「……わ」
箱の中身はゼリーパフェだった。
メロン味であろう緑のゼリーにさくらんぼ、上にはクリームとデンファレ……。
デンファレの花言葉は『お似合いの二人』……。
「……ぅ……、ぐすっ……」
彼女がいる人にこんな気持ち持っても仕方ないのに……!
視界が歪む。
パフェがクリームソーダみたいに、ゆらゆら揺れて見えた……。
読了ありがとうございます。
野田 華子……高校三年生。小学生の時から店を手伝っていて、すでに店はほぼ一人で回せるレベルまで到達。将来の夢は自分のアレンジした花に囲まれた結婚式。
九条 盛仁……大学三年生。三歳下に妹がおり、夏休みを利用して持病の手術をするために入院しているところに、花を持って行くのが毎週のルーチン。妹は間もなく退院できる模様。
次話もよろしくお願いいたします。




