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最終話 いってらっしゃいませっ! 湊二郎さまっ♪


 朝起きると私の真横には湊二郎様が寝ていらっしゃいました。

 シーツが乱れていて、昨夜何があったのかを思い出しました。


「……そうでしたね。今日はゆっくりでいいですよね」


 私は湊二郎様に毛布をかけて再び深い眠りにつきました。



 ◇◇◇



「うわぁぁあああっ!!! 遅刻ぅぅぅ!!!」


 次に目を覚ますと湊二郎様が1人で騒ぎながら、急いで服を着てました。

 いったいどういうことなのでしょうか?


「心雪! おはよう! いってきます!」

「いってらっしゃいませ……?」


 湊二郎様が慌てて部屋を出ていったので、ふと時計を見ると既に10時を超えてました。これは寝坊ですね。


 私としては丑の刻とかの方がわかりやすいのですが、最近のものに合わせないと時代遅れみたいに思われてしまいますからね。

 仕方ないので色々勉強して合わせています。


「昨日はずいぶん盛んだったわね」


 ビクリと肩を震わせ、声のした方向……つまり窓の方を見ると窓の外から姉様がニヤニヤしながらこちらのことを見ていました。


「なっ!? み、見てたんですかッ!? というか危ないので中に入ってくださいッ!」


 私は窓を開けて姉様を部屋の中に入れます。姉様は部屋に入ると何故か鼻をつまんで扉と窓を全開にしました。


「くさい」

「そうですか?」

「アンタもくさい。先に風呂に……お風呂の入り方、教えてあげるわよ」


 えっ? いや、それぐらいは私も知ってますよ……? ちょっと、わかりましたから押さないでください!


 ◇◇◇


 お風呂の入り方……というか、身体の洗い方を姉様からじっくりと教わりました。

 なんか凄い疲れました。やけに詳しかったですが、姉様も同じようなことを俊太郎様としたのでしょうか?


「……心雪、生まれるよ」

「え? なにがですか?」

「子ども」


 はいっ? いやいや、いくらなんでもそれはありませんよ。だってお腹だって膨らんでませんし、姉様だってまだ産んでないじゃないですか。



 それから二時間が経ちました━━━━━━



「おぎゃあああああああっ!!!」


 産まれました。

 ……はやすぎませんか? いや、いくらなんでもこれは早すぎますよ。


「湊二郎の時もこれぐらいだったわよ。1人目だけは異常に早いのよ」

「そ、それは驚きです……」


 湊二郎様、帰ってきたらどのような反応をされるのでしょうか?

 あと名前も考えておかないといけませんよね。お名前はどうしましょうか?


「……ふふっ」

「初めての子は可愛く思っちゃうわね。私もそうだった。湊二郎が産まれた頃は━━━━━━」

「私に丸投げしたじゃないですか」

「……ごめん」


 私が姉様に口を挟んで、冷徹な目線を送ると姉様は素直に謝ってきました。

 どうやら自覚があったようです。まずそこに驚きでした。



 ◇◇◇



「で、産まれたと」

「はいっ、湊二郎様の子どもですよ♪」

「そっか……」


 湊二郎様は嬉しそうに赤ちゃんの手を握って、頭を撫でました。ちょっと羨ましそうに見てると私の頭も撫でてくれました。


「それで名前はどうした?」

「名前ですか? それはもちろん氷衣三郎(ひょいさぶろう)ですよ!」


 私がどや顔で自信満々に湊二郎様に言いますが、何故か湊二郎様は冷ややかな視線を送ってきます。

 いったいどうしたのでしょうか?


「よしっ、あとでゆっくり決めような。そんな慌てることじゃないだろうし……な?」



 その後、湊二郎様と色々考えた結果、お名前は氷衣三郎…………


 ではなく、『雪耶(ゆきや)』になりました。


「雪耶、ゆっくり育ってくださいね」





 それから数ヶ月が経ちました。雪耶も首がすわるようになって、毎日親バカかと思われるぐらい愛でてます。


「雪耶は今日もかわいいですね」

「以前の心雪だとそっち側のアホっぷりは全然見られなかったな」

「そうですか? 湊二郎さまも毎日かわいいと思ってますよ? なんたって湊二郎さまはこの私が育てたのですからッ!」


 湊二郎様は少し照れくさそうに頭を掻くと私に顔を近づけて、キスをしてきました。


「じゃあ、いってきます」


 湊二郎様がそう言ったので、私は湊二郎様にキスをして今まで通りで、いつも通りの返しをするのです。



「いってらっしゃいませっ! 湊二郎さまっ♪」



世話好き少女の恋愛譚はこれで完結です。


今回の感想としては他の作者さんの影響を良くも悪くも変な形で受けちゃったなと書いてて思いましたね。

そして、予定よりも1ヶ月早く終わってしまいました。


次回作は今のところ未定となってます。今後の執筆量と学校の課題量によってという感じです。


というわけで「世話好き少女の恋愛譚」をご愛読いただき、ありがとうございました。


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