第四十三話 変わりすぎじゃありませんかッ!?
あれから二ヶ月が経ち、今日も私は病院内を車イスで彷徨きます。最近では湊二郎様の手助けがなくても動けるほどになったので、練習も兼ねて動き回ります。
そんな中、私にも病院仲間ができました。
「心雪ちゃん、こっち」
「白雪さん! こんにちは!」
私が話しかけたのは二人の女の子です。白雪さんとネムちゃん。この二人は姉妹らしいです。白雪さんは23歳で、ネムちゃんは今年から小学生になるらしいです。
週に一度、ネムちゃんの健診に来ていると聞きました。深く聞いてないのでどのような病気なのかはわかりませんが、きっと大変な病気なのでしょう。
「ネムちゃんもこんにちは」
ネムちゃんは無言で頷いていました。この子はあまり喋りません。白雪さんの方は結構喋るのですが……
「ネムちゃんもふもふぅ~!」
白雪さんは相変わらずの妹大好きっぷりですね。たしか湊二郎様はシスコンとか言ってました。もふもふされてるネムちゃんも嬉しそうにしてるので、きっとネムちゃんもシスコンなのでしょう。
ですがこの二人、以前どこかで見たことあるような気がします。いったいどこで見たのでしょうか?
「心雪ちゃんも触る? もふもふしてるんだよ!」
「で、では少しだけ……」
白雪さんからネムちゃんを受け取ってもふもふしてみます。するとふわふわする髪質、ぷにぷにの身体に綺麗なお肌。その全ての感触がしました。
ヒトをもふもふするとこんなに気持ちいいものなのですね……湊二郎様や紗由理様が私の耳を触りたいと言っていたあの気持ちがわかったような気がします。
「もふもふといえば心雪ちゃんの耳ももふもふしてるね?」
気がついたら私は両手をネムちゃんにしっかりと掴まれ、逃げられない状態になっていました。
そして、ゆっくりと白雪さんが私に近づいてきました。
「フフフフフ……」
私は触られると感じて目を強く瞑りました。そして、手が耳の近くに来るのを感じました。
しかし、何分経っても触られることはなく、ずっと耳の近くに手があるだけです。いつまでも焦らしてるぐらいならいっそのこと触って欲しいです。
「ふにゃっ!?」
ゆっくりと目を開けた瞬間に耳を握られました。
そこからはまさしく白雪無双という感じで、ネムちゃんと一緒に永遠ともふられ続けたのでした。
◇◇◇
あれから2時間が経ち、白雪さんと別れて私は病室に戻りました。
すると、病室では湊二郎様が金髪でサングラスをかけた見知らぬおじさんとお話をしていました。
「湊二郎さまっ、この方は?」
「多久郎だよ。忘れたのか?」
「変わりすぎじゃありませんかッ!?」
私はこんなヤンキー知りませんよ!? 絶対アレに手を出してますよね!? 柚葉ちゃんは何してるんですか!?
「多久郎~飲み物買ってきたぞ~」
「柚葉ちゃん!?」
久しぶりに見た柚葉ちゃんはミニスカで露出度高め、ヘソだし、色黒ギャルへと大変身してました。
この二人ガチで道を外しましたよ! いったいどのような生活を送ったらこうなるのですかッ!?
「マジパリピって感じじゃない?」
「ぱ、ぱりぴ……?」
また新しい用語が勝手に作られてますよ。エレベーターといい、コンクリートといい、いったい何なんですか!? 嫌がらせですか!? 私に対する嫌がらせなんですかッ!?
「そうそう、この前さザギンでシースーしてトッポギしたんよ」
「ざぎん……し、しーすー?」
「そしたらマジまんじって感じでさ」
「まんじ……?」
ゆ、柚葉ちゃんはいったい何をいってるのですか!?
湊二郎様の方に助けを求めましたが、湊二郎様も首を振ってるだけでした。多久郎さんに至ってはちょべりば? とか柚葉ちゃん同様、謎過ぎる言葉を発していました。
この日、私は柚葉ちゃんから少し距離を取るべきか本気で悩んだのでした。




