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第四十一話 湊二郎さまは本当にしょうがない人ですね。


 リハビリを始めて三日後、今日も私は湊二郎様とリハビリを終えて部屋に戻ってきました。すると、部屋の中にはお見舞いに来た人たちが机の下にいるようでした。


「何をしてるんですか?」

「あっ、あはは……ちょっと驚かせようとな……」


 机の下から出てきたのは姉様と俊太郎様でした。

 そこから出てきてどうやって私を驚かせようとしたのかが気になりますが、お二人ともお元気そうで何よりです。


「……少し老けました?」

「うるさいなッ!」


 そういえば俊太郎様ももう53歳ですか……人間というのは老いるのが早いものですね。それに対して湊二郎様はあの頃より少し大人びた感じがする程度で、おじさんという雰囲気はありませんね。

 もしかしたら姉様の影響かもしれません。だとすると私と同じぐらいの寿命があるのでしょうか? それとも人間と猫耳の半分ぐらい? まあ、そういうのは長ければ長いほどいいですね。私もできるだけ湊二郎様の近くに居たいです。


「あれ? 姉様……?」


 以前よりも姉様のお腹が大きくなっているような気がします。さては太ったのでしょうか?


「何を考えてるのかわからないけど、凄い失礼なことを考えてるのだけはわかるわ」

「これは湊二郎の妹だ。もうすぐ生まれるらしいぞ」

「そうなんですね。おめでとうございます」


 まさか俊太郎様がそんな年になっても欲にまみれてるなんて思いませんでしたよ。昔っからアレだけイチャイチャしてたというのにまだイチャつき足りないんですか?


「なんか凄いバカにされてるような……」

「気にしちゃダメよ。私だって同じこと思ってるんだから」

「小春っ!?」


 姉様と俊太郎様とお話をすると、お腹にいる子は美冬(みふゆ)ちゃんという名前に決めたらしいです。私も湊二郎様との……こ、こども……とか……


「心雪、ちょっと確認して欲しい書類があるんだけど」


 そう言って姉様が差し出してきたのは1枚の紙でした。そこには既に湊二郎様のお名前と判子、その他必要な記入事項を書き終えてありました。


「これは……?」

「ほら、さっさとサインしちゃいな」


 湊二郎様の方を見るとなにやら小さな箱を手に持ってそれっぽい感じになってました。

 えっ!? これって本当ですか!? それこそドッキリとかそういうのじゃないですよね!?


「心雪、結婚してくれ!」


 湊二郎様は箱を開けて指輪を見せながら私に言ってきました。

 頭が追いつかない私は脳をフル回転させて処理していきます。


「よ、よろしくお願いします……」


 ちょっと恥ずかしかったですが、湊二郎様に左手を差し出して言いました。すると、湊二郎様は私の薬指に指輪を嵌めました。

 全く、普通入院中に結婚を申し込みます? 湊二郎様は本当にしょうがない人ですね。


「……あれ? 心雪、この腕輪……」

「え?」


 私の腕には紗由理様から戴いた腕輪がついていました。どうやら持ってきてしまったようですね。これは退院したら離れ屋にでも置いておきましょう。


「紗由理さまからの贈り物ですね……」


 私は腕輪を外して横にある棚に置きます。そして、私はペンを手に持ちます。


 さて、気を取り直して、サインをしましょう! これで結婚準備は完了です!


「湊二郎さまっ、よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしくな」


 

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