第三十九話 私は紗由理さまのことが大好きです。
二章もようやく終わりです!
最近予約投稿に頼り過ぎだと思われますが、全くその通りで言い返せません!!
紗由理様に月詠さんのお世話を任せて、私は洗濯物を洗いに行きました。
「冷たっ!」
真冬の川は冷た過ぎです。本来ならお洗濯は今日やる必要はないのですが、紗由理様への気づかいです。紗由理様が居たから湊二郎様が居るわけなのですからね。
川での洗濯を終えると、物干し棹にかけて母屋に戻ります。
すると顔を赤く染めた紗由理様が奇怪な行動を取っていました。
「ええっ、でもさすがに……」
なんというか……うにゃんうにゃんという効果音が鳴りそうです。
黙って見てるべきでしょうか……? ……ん? 月詠さんの呼吸が一定過ぎる……月詠さん、起きてません?
「紗由理さまっ、お茶をお持ちしましたよ」
「えっ!? あ、うん……ありがと。私ちょっとトイレ行ってくるね」
紗由理様に恥をかかせるわけにはいきませんので、私は紗由理様に予め用意しておいたお茶を出しに行きます。
そして、紗由理様がトイレに行くと言って遠くに行くのも予測済みです。
━━━━私は月詠さんの頬を引っ張叩きました。
『ファッ!?』
「あなたという人は、女の子に恥をかかせるつもりですか」
『そうだけどさ。引っ張叩く必要はなくない?』
……そうかもしれませんね。ではもう一度引っ張叩いておきましょう。
━━━━私は月詠さんの頬を引っ張叩きました。
『なんでまたッ!?』
「なんとなくです」
『なんとなくで叩かれるこっちも考えろよ!?』
っと、そろそろ紗由理様がお戻りになられてる頃でしょうか? 今頃は襖の裏で盗み聞きしてるに違いありません。
……イタズラでもしてみましょうか。
「あの、一緒に寝ても宜しいですか?」
『ああ、おいで。心雪は俺の大切な子だからな。そういうのは大歓迎だ!』
という罠をふりかけると襖が勢い良く開いて紗由理様が私に飛びついてきました。
「心雪……月詠くんのこと知ってたの?」
「それはまあ、はい……こんなのでも一応、ご先祖様なので……」
「……え?」
紗由理様の呆けた声が部屋中に響きました。
実は月詠さんは私たち猫耳のご先祖様になります。というのも、月詠さんは太陽暦の終わった日に猫という動物を猫耳に進化させたのです。つまり、血縁関係こそありませんが、全ての猫耳の産みの親になるというわけです。
「妬きました?」
「ふぇっ!? い、いやっ! そんなわけないでしょ!!」
「紗由理さまはかわいいですねぇ」
「心雪っ! まったくもう……」
私は紗由理様の頭を撫でます。もうすぐ紗由理様とはお別れになってしまいます。この時間は大切にしなくてはいけませんね。
『すっかり蚊帳の外なんだが……』
◇◇◇
それからの時間はあっという間でした。たったの五日しかなかったとはいえ、基本的に紗由理様と炬燵でゴロゴロと過ごしていたので、当たり前といえば当たり前です。一応昨日は大晦日とお正月の準備のためにお買い物にいきました。
私が未来に戻っても、私の存在や記憶はうまく調節されるらしいので準備だけはしておいて、残りはいつかの私にお任せするとしましょう。
……そろそろ時間ですね。紗由理様から離れないと……
「紗由理さまっ、少しお手洗いに行ってきますね」
「待って」
私が炬燵から離れてお手洗いに向かおうとすると紗由理様に呼び止められました。
「もう会えないような気がするのは気のせい?」
「……っ!」
私はこのまま黙って未来に行ってしまって良いのでしょうか? ……いいえ、よくありませんね。これではきっと後悔します。もう、後悔はしないって決めましたもんね。
「紗由理さまっ、実は━━━━」
私は紗由理様に黙っていたこと全てをお話しました。途中からは涙を堪えられず、泣きついてしまいました。そんな私を見て、紗由理様はゆっくりと頭を撫でてくれました。
━━━━ちょうどそのときでした。私は謎の光に包まれて徐々に身体が透け始めたのです。
「心雪……」
「紗由理さまっ、私は紗由理さまのことが大好きです。もう会えないかもしれませんので、私の最後のわがままです……」
私は紗由理様の頬っぺにキスをして、紗由理様を笑って見つめると、私は光の粒となってその場から消えていきました。
「心雪……」
『紗由理! 新しい心雪だよっ!』
月詠さんがパチンと指を鳴らすと、私ではないもう一人の私が紗由理様の前に現れました。
「台無し過ぎるよっ!!!」
◇◇◇
一方その頃、光の粒となって消えた私はたくさんの鳥居がある不思議な場所にいました。
「……ここは?」
『へいらっしゃい! 心雪ちゃん! この鳥居を真っ直ぐ進むとそこは愛しの湊二郎くんのいる場所! 行ってらっしゃい!!』
……なんか、いろいろと台無しにしてきますね。先ほどまでの感動的な雰囲気を返してくださいよ。
私はため息を吐きながらも、無数にある鳥居を潜って湊二郎様のいる所へ向かったのでした。




