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第三十八話 クリスマスプレゼントですっ!


 十二月二十五日 クリスマスの夜のことです。

 紗由理様が眠ったことを確認した私は1人で離れ屋から母屋の地下室に向かいました。


「家中を漁るので見つかるのではないかとヒヤヒヤしましたよ……」


 地下室は暗くて辺りが見づらいので、どうやら紗由理様は気づかなかったみたいですね。

 まさか地下室の床に小さな床下収納があるなんて誰も思いませんよね?

 私は床下収納から紗由理様のクリスマスプレゼントを取り出して離れ屋に戻りますが、ここで私は気づいてしまいました。


「紗由理さまってお寝坊さんだから朝取りに来てもよかったのでは……?」


 なんでわざわざこんな深夜に起きて、寒い思いをしながらクリスマスプレゼントを取りに来なければならないのでしょうか?

 そう考えるといつまでも起きてた私がアホみたいですね。


「今度から気をつけましょう」


 私はプレゼントを持って母屋を離れますが、その際にとても強い風が吹きました。


「きゃっ!?」


 さ、さむいです……っ! 何なんですかこの異常な寒さは……! 私を殺すつもりですかッ!?

 離れ屋に入った私はプレゼントを紗由理様の頭の上に置くと布団の中に入りこんで紗由理様を湯タンポ代わりに使いました。

 もう手とか足がかじかんでしまって布団の中が炬燵のように感じます。ですが、冷えきった手ではどうも寝付きにくいです。……仕方ありません。紗由理様、お許しください。


「ふひゃんっ!?」

「あっ……」


 まさか背中に手を入れただけで目覚めてしまうとは……予想外ですっ!


「心雪冷たい! なにしてんの!?」


 どうやらプレゼントには気づいてません。今なら誤魔化せそうです。


「い、いえ、寒かったので、つい……」

「ついでやって良いことじゃないよ!? っていうか心雪冷たッ!? どうしたの!?」

「冷え性なんです。さっ、寝ましょ。紗由理さま」


 紗由理様は冷えきった私のことを抱きしめて、温めてくれました。おかげで私はぐっすりと眠ることができました。


 翌朝、目を覚ますと枕元になにかあることに気づきました。


「……なんですかこれ?」


 紗由理様の方を見ると昨日私が置いたプレゼントは置いてありました。ではコレを置いたのは誰なのでしょうか?

 ……まさか本物のサンタさんですか!?


 私はプレゼントの箱を開封します。すると、プレゼントの中にはお皿に盛られた蒟蒻(こんにゃく)が入っていました。


「……なんてすばらしいのですか!?」


 蒟蒻ですよ!? これだけあれば四日は蒟蒻料理ができますよ!? 凄くないですか!?


「まあ、そんな冗談はおいておきましょう」


 私は深呼吸をして落ち着きます。蒟蒻を渡してくる人なんて月詠さん以外にはいません。

 つまり、私が未来に帰る方法が見つかったということなのでしょうか? とりあえず朝食を作ってから神社に行ってみましょう。


 私は紗由理様に置き手紙を残して月詠さんの居る神社に向かいました。


「来ましたよ。月詠さん」

『心雪、見つけたよー』


 月詠さんの声が聞こえましたが、どこかやつれている様子でした。相当苦労を掛けたのでしょう。あとで何か持ってきてあげましょう。


『帰る方法は年が変わる瞬間……つまり、12月31日と1月1日の狭間にある時間軸に入ることだそうだって……時間神が言ってた』


 ……月詠さん? それだと聞いただけのように聞こえますが、その目の下についてる隈はなんですか?


『ん? ああ、昨夜ハズドラのランキング戦があって徹夜してたんだよ。だから寝不足で……』


 ランキング戦……? よくわかりませんが、関係のないことですよね? 少しでも心配した私の気持ちを返してくださいよ。


『まあ、その辺はうまく調節してくれるらしいから、感謝してよ……』

「アリガトウゴザイマス」

『なんで棒読み……』


 私は月詠さんの問いに答えようとしますが、その前に月詠さんが事切れて眠ってしまいました。

 このまま放置するのはさすがに申し訳なく、思い、家に連れ帰ることにしました。


「ただいま戻りましたー!」

「心雪、どこに行って……月詠くん!?」

「目の前で倒れていたので連れてきましたが、紗由理さまの知り合いでしたか。とりあえず運びますね」


 あくまで私は月詠さんを知らないという呈で紗由理さまとお話します。余計なことをしてしまうといけない気がしますので。


 そして、私は適当に考えた嘘を言って、紗由理様にどこへ行ってたのかを説明したのでした。


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