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第三十七話 こんな寒い日には炬燵ですっ!


「いらっしゃいませー」


 前略湊二郎さまっ、心雪です。お元気ですか?

 私はメイドやってます。理由は私が知りたいです。メイドをやる記憶なんて全くなかったというのに、なぜやってるのでしょう?


「もえもえキュン♪」


 これ本当にやらないといけないのですかッ!?

 私は厨房から覗いてるクラスメイトの方々を睨み付けますが、彼らは必要なことだと目で訴えてきます。というか誰か1人ぐらい手伝ってください。給仕が間に合いません。


「いらっしゃいませー! お会計ですね。はいっ、ご注文は? お待たせしましたメロンソーダです! もえもえキュン♪」


 私は永遠と終わらない作業をやり続けました。

 それから三時間後、お昼休憩の為、私は教室を離れると立ってられずに足から崩れ落ちました。


「はぁ……」

「お疲れさま。はいっ、お茶」


 紗由理様がお茶を差し出してくれました。私は紗由理様からお茶を受け取って一気に飲み干します。


「ぷはぁ……」


 もうくたくたです。動けません……


「心雪、演劇行かない?」


 紗由理様がお誘いしてくれました。

 まあ、演劇見るだけなら大丈夫でしょう。ここに居ても、もう一度仕事に入れと言われかねませんからね。


「私が連れてってあげるね」


 紗由理様がそう仰ると、紗由理様は私を背負って体育館へと向かいました。

 紗由理様の背中は湊二郎様と違って小さいですが、湊二郎様と同じ温かみを感じます……あれ? なんだか眠気が……いけません。まだお昼ですし、紗由理様のめいわく……に…………


「心雪? ……お疲れさま」



 ◇◇◇


 私はいつの間にか眠ってしまっていたようです。目を覚ますと離れ屋にある紗由理様の布団の中で眠っていました。服も浴衣に着替えてることから紗由理様が着せてくれたのかと思います。

 私は布団から起き上がって母屋へと向かいます。


「心雪、おはよ」

「おはようございます」


 どうやら夕方まで寝ていたようで、既に日が暮れていました。私は急いで夕食を作ろうと台所に向かうとそこにはサランラップに包まれたオムライスが置いてありました。


「それ、クラスのみんなからだって。私はもう食べたからそれ温めて食べなよ」

「はいっ!」


 私はオムライスを電子レンジで温め、スプーンを持って居間に運びます。

 そして、オムライスを一口分に切って掬い上げ、口に運びます。

 すると頭が急に痛くなり、ふらふらとしました。


「やさい、だめ……です……」

「心雪ッ!? 玉ねぎ一欠片(ひとかけら)だよ!?」


 私はそのまま気を失いました。

 残ったオムライスは紗由理様(スタッフ)が美味しくいただきました。



 ◇◇◇


 翌朝、私はいつもの時間に目を覚ましました。けれど、いつもより寒くて布団から思うように出られません。

 不思議に思って外を見てみると庭一面に真っ白な雪が降り積もっていました。

 さすがに下駄では霜焼けしてしまいますね。確かブーツがあったはずです。


 起き上がろうと試みるも、寒くて布団から出られません。雪は嫌いではありませんが、猫なので寒いのは苦手です。こたつが恋しいです。せっかくですので今日出してしまいましょう。


 それから二時間後、ようやく布団を抜け出した私は母屋に移動して炬燵(こたつ)を用意しました。そして、トースターにパンを乗せて焼きます。パンが焼ける前にお湯を沸かしてお茶の準備をしました。


「おはよ心雪。雪遊びしよっ!」

「おはようございます。紗由理さまっ。1人で行ってきてください」


 紗由理様は居間に来ると同時に浮かれている子供みたいに雪遊びを誘ってきました。私の選んだ答えは当然のごとく拒否です。

 パンを焼き終えるのを確認するとバター塗りました。それと同時に湯呑みにお茶を注ぎます。

 私はお茶とパンをお盆に乗せ、居間に運ぶと炬燵の中に吸い込まれていきました。


「なんて無駄のない動き……」


 朝食を食べ終えると紗由理様が私を炬燵から引き離そうとしたので、必死に抵抗しました。すると、私は紗由理様に首輪をつけられて無理やり外に放り出されました。


「雪だるま作るよ!」

「そうですか……」


 私は紗由理様が満足するまで近くで見ていて、ただ寒いだけの時間を過ごしたのでした。



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