第三十四話 衣替えの時期ですね
今日は休日です。私は一週間分の溜まった掃除や洗濯で大忙しです。なので紗由理様がお買い物に行ってくれたのはとても有り難いです。
「ひくちっ!」
なんか最近冷えてきましたね。そろそろ衣替えでもしましょうか。
私は母屋から離れ屋へと向かい、押し入れから冬物を取り出します。そして、タンスから夏物を取り出して入れ替えます。
「少し寒いですね……」
折角なので私は薄手の着物を脱いで厚手の着物に着替えます。着物なんてあまり変わらないと思ってましたが、厚手の方が断然温かくて心地良いです。
「心雪ーーッ!! 帰ったよー!」
「はいっ! おかえりなさいませっ!」
母屋に居なかったので紗由理様のご帰宅には気づきませんでした。私は母屋に戻り、紗由理様から買い物かごを受けとります。
「お疲れさまでした。あとはゆっくりしててくださいね?」
次に私は夕食の用意に入ります。最近肌寒い日が続いているので、今日は湊二郎様が好きなすき焼きにしました。湊二郎様が好きなのですから紗由理様も好きに決まってます。
野菜などを切って、ある程度夕食の準備を終えると今度は洗濯物を取り込みに裏庭へと出ます。
「手伝おうか?」
「いえっ、これぐらい大丈夫です! お買い物に行って戴けただけでも助かってます!」
「そう、無茶はしないでね?」
「はいっ!」
洗濯物を取り込むとお鍋をちゃぶ台の上に置いて野菜や豆腐、お肉などを煮詰めます。
その後、卵を2つ割って取り皿に1つずつ入れます。お肉が煮詰まるまでの間にごはんをよそい、お箸と共に運びます。
「紗由理さまっ、準備ができましたよ」
「わかった。ありがと」
紗由理様の取り皿に野菜を入れていきます。その後、お肉をちょこんと乗せて渡してあげます。
そして、私の取り皿には大量のお豆腐を入れた後にお肉をこんもりと入れました。
「ちょちょちょちょちょっ!!!」
紗由理様が突然止めてきました。何か変なことでもしたでしょうか?
「首傾げられても困るんだけど!? なに普通にお肉大量に持っていこうとしてんの!? 使用人だよね!?」
「はい、使用人ですけど……それがなにか?」
「そういうのはご主人様に渡すべきじゃないの!?」
「ご主人様が太らないように管理するのも使用人の務めですよ」
「いやいや! そのままだと太るのは心雪だから!」
仕方なく私は紗由理様にお肉を渡します。まったく、紗由理様は変なところで強情なんですから。
「……首輪つけ直す?」
「いいえ、やめましょう。アレ意外と重たいんです」
アレはつけてると首は苦しいし、肩は凝るしで本当に最悪な気分でしたよ。
さて、お豆腐でも食べましょうか。
「「いただきますっ!」」
夕食を食べ終え、お皿を洗い終えると紗由理様に連れられて温泉に入りました。
「はふぅ……」
温泉に入ると1日の疲れが消え去って行くように感じます。それにこの温泉は湊二郎様とのことを思い出します。……ちょっとだけ、いいですよね……?
「心雪?」
「少しだけこうさせてください……」
私は紗由理様の右腕にしがみついて紗由理様の肩に頭を乗せます。すると紗由理様は左手で私の頭を優しく撫でてくれました。
……湊二郎様に逢いたいです。湊二郎様は今頃どのように過ごしてらっしゃるのでしょうか?
「心雪って好きな人でもいるの?」
「居ますよ。私はあの人が愛おしくて仕方ありません」
私がハッキリと申し上げると紗由理様はポカンとした顔をしていました。
「それってどんな子なの?」
「そうですね……紗由理様によく似てらっしゃいますよ。あとは食べるのが異常に早くて、デザートが大好きなんですよ」
「……今度逢いに行く?」
紗由理様の提案はとても有り難かったですが、私が湊二郎様に逢うにはあと70年ぐらいは必要ですね。
「向こうから逢いに来てくれますよ」
「そっか……逢えるといいね?」
「はいっ!」
それから私は紗由理様に湊二郎様のことを矛盾が産まれないようにお話したのでした。




