第二十五話 真夏日は家で過ごします。
翌朝、私は目を覚ますと顔を洗う為に裏庭に流れている川まで向かいました。
そして、川にたどり着くもう少しの場所で突然右足に力が入らなくなり、そのまま崩れ落ちました。
「っ!?」
私はそのまま頭から川に突っ込みました。おかげでびしょ濡れです。
今日は朝からついてませんね。それにしてもどうしたのでしょうか? 急に力が入らなくなりましたね。
「……まあ、偶然ですかね。早く着替えないと風邪を引いてしまいますね」
私は家に戻って身体を拭いて着物に着替えました。
今日の朝食は何にしましょうか? たしかお肉が冷蔵庫にあったはず……よしっ! 今日は牛丼にしましょう!!
それから幾分かの時間が経ち、私は湊二郎様とテーブルに朝食を並べました。
「朝から牛丼とは……」
「もしかしてイヤでしたか……?」
私が湊二郎様に顔を近づけて訊ねると、湊二郎様は私の口唇に軽いキスをしてから言いました。
「いや、大丈夫だ。よしっ! 食べるか!」
「はいっ!」
私は湊二郎様と朝食を食べ、洗い物を済ませました。そのあとは、湊二郎様と居間でゴロゴロと過ごしています。外はまだまだ暑いので買い物には行く気にもなれません。
「湊二郎さまっ、かき氷でも食べますか?」
「ああ、食べるか……」
湊二郎様のご要望にお応えするため、立ち上がろうとしますが、思うように力が入りません。どうやら夏は天敵のようですね……
「そうじろーさまっ、あついです……」
「着物なんて着てるからだろ。早くかき氷作ってくれ……」
「はいぃ……」
湊二郎様に言われて思い出しました。私、着物着てるんでした。薄手の浴衣にでも着替えましょう。
私は浴衣に着替えてかき氷を作り始めました。浴衣に着替えるととても涼しくて気持ちよくなりました。
「湊二郎さまっ、かき氷ができましたよ」
「ああ、ありがと」
「シロップはどちらがよろしいですか?」
私はメロンとイチゴのシロップを見せて湊二郎様に訊ねました。
「そうだな……じゃあメロンで!」
「はいっ、ではかけますね」
私はメロンのシロップをかき氷にかけます。
余談ですが、かき氷のシロップって何味を選んでも色が違うだけだとよく伺いますよね? でも実際に食べるとそんな気はしませんよね。
それって実はただの錯覚なんですよ。目に入れた情報からメロン味だと認識することで、起きるらしいです。
なので、目を瞑った状態でかき氷を食べ比べて何味かを当てるのは不可能なんですよ。
というわけで今私がかけているシロップは『色が緑色のイチゴ味』と言っても間違えではないんですよ。
どうですか? この将来使うことのない確率が非常に高いマメ知識は?
……こんなことどうでもいいですよね。さて、湊二郎様にかき氷を与えてあげましょう。
「湊二郎さまっ、あーん」
「……あーん」
湊二郎さまっ照れちゃってかわいいですっ!! 見てるこっちが恥ずかしくなってきますよっ!
すると湊二郎様は私の肩を叩いてきたので、私は湊二郎様の方を向き直すと湊二郎様が私にキスをしてきました。
「っ!?」
湊二郎様の舌が私の口に入ったので、驚きました。その直後、湊二郎様が先ほど口に含んだばかりのかき氷が私の口に入ってきました。
えっ!? ええっ!? こ、これって口移しですかッ!? でも……
私の顔は真っ赤に染まりながらも湊二郎様を離すまいと、湊二郎様の背中に手を回してくっつきました。
「おい湊二郎、遊びに来た……ぞ……? お邪魔しましたー」
いつの間にか家に遊びに来たであろう多久郎さんが私と湊二郎様が濃厚接触してるところを目撃しました。
私と湊二郎様は顔を真っ赤にして多久郎さんに迫り、捕らえました。
「アツアツでしたね~。ヒューヒュー」
「黙ってろっ!」
「それ以上口を開かないでくださいっ!」
私と湊二郎様は多久郎さんの首をいつでも絞められるような状態にして両手両足を縛りました。
さあ、尋問開始です……!
「多久郎さん、柚葉ちゃんとはどんな感じなんですか?」
「ひぃっ!?」
私はにっこりとした笑顔で多久郎さんに言いました。するとなぜか多久郎さんは顔を真っ青にして怯えていました。
「そうかそうか。多久郎は柚葉さんのことが好きなのか」
この日を境に多久郎さんの心は、柚葉ちゃんのことだけを考え始めたのでした。
「では記憶を消しますね」
「まって。それはおかしい」
鈍器を構える私を見て、冷静に対応しようとする多久郎さん。そんな多久郎さんを見ても私は先ほどの恥ずかしい記憶を彼から奪うのでした。
「アーーーーーーッ!!!」




