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第二十四話 だれが老眼ですかッ!!


 花火大会の翌日、家には郵便屋さんが来ました。恐らくこの前の健康診断の結果だと思われます。

 毎年来るのが遅過ぎるのですよ。何かあったらどうするつもりですか?



「……例年よりも分厚いですね。何かあったのでしょうか?」



 湊二郎様は本日、多久郎さんと遊びに行くそうで、夕方まで帰って来ないらしいです。

 なので、私は居間のテーブルで封筒を開封して結果を見ました。



「体重は……変化なしですね。勝手に変更されてると思いましたよ……これは?」



 書類が何枚か重なっていました。うち1枚は毎年無視している「新主人案内書」ですね。紗由理様から湊二郎様への引き継ぎがまだ完了してないので、今回も無視です。



「もう一枚は……」



『老眼ギミ』



「……チッ」



 おっと、私としたことが舌打ちをしてしまいましたね。失礼しました。

 ……誰が老眼ギミですかッ!? ふざけるのもいい加減にしてくださいッ!!



「気分転換に荷物整理でもしましょう」



 私は離れ屋に向かい、離れ屋の整理をし始めました。

 整理と言っても、大抵は懐かしいモノを見て思い出に読み耽るだけなのですが……



「あっ、この髪飾りまだあったのですね」



 私が手に取ったのは初めて自分のお給料で買った髪飾りでした。今はもう付けることもないのですっかり忘れてましたね。


 それからしばらく私は思い出に読み耽っていました。気がついた頃には夕方になっていて、湊二郎様がわざわざ離れ屋まで私を呼びに来ました。



「……え? 湊二郎さま?」

「ん? どうかしたのか?」



 私はとても嫌なことを思い出してしまいました。

 健康診断の書類、()()()()()()()()()()()

 居間に戻るなりすぐに確認すると既に手遅れで、湊二郎様に見られた形跡がありました。私は涙目で湊二郎様の方を睨みました。



「えっと、その……ごめん……」

「謝らないでくださいッ!!」



 湊二郎様に謝られると余計に惨めに感じてしまいますっ!



「キスしてくれるまで許しませんからっ!」

「はいはい……」



 湊二郎様は高さを合わせるために膝を少し曲げて私の口唇に軽いキスをしました。

 まさか本当にしてもらえるとは思わず、私は顔を赤面させて後ろを向きました。



「ゆ、夕食作ってきます……!」

「あっ、俺も手伝うよ」



 私がスタスタと歩いて台所に向かうと湊二郎様まで台所に入ってきました。すると湊二郎様は手馴れた手つきでお米を磨ぎ始めました。

 もうすっかり湊二郎様はお米当番です。さて、私もお味噌汁と主食を作りましょうか。


 私は魚を焼いてお味噌汁を焦がすこと5分。夕食が完成しました。



「なあ、心雪」

「はいっ、なんですか?」

「……いや、今度メガネ買いに行くか」



 湊二郎様は何か言いかけましたが、私はそれよりもメガネという単語にイラついて湊二郎様の頭を叩いてしまいました。



「へぇ、ご主人様にそんなことをやる度胸があるのか」

「あっ、ちょっと待ってくれます……?」

「心雪……それはムリ」



 湊二郎様は私の腰に手を巻いて膝の上に座らせると耳をもふもふとし始めました。



「ひゃあっ!? す、すいませんでしたッ!! だから、ゆるひ━━━━ふにゃあっ!? ごめんなさいッ! ごめんにゃしゃいッ!!!」



 途中でバテてしまったので詳しくは覚えてませんが、1時間は湊二郎様に撫で回されたと思います。



「お、お風呂入ってきます……」

「ああ」



 私は温泉へと向かって歩いて行きました。

 部屋に1人残された湊二郎様は私が戻って来ないことを確認するとタンスの中から1枚の書類を取り出しました。



「あの様子だと気づいてないよな。はぁ……どうするか」



 湊二郎様はその書類を私の手が届かない場所に隠してしまいました。





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