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第二十三話 花火大会に行きますよっ!



「確かに先に寝てしまった私が悪いとは思います。ですが、お泊まりさせるとは何事ですかッ!?」



 翌日、夏海さんが帰った後に私は湊二郎様を怒っていました。

 湊二郎様は私というものがありながら、夏海さんを家に泊めるというなんともイヤらしいことをしたのですッ!

 あり得ませんね! 最低ですッ!! 夏海さんという人はッ!!!


 ……え? いや、私が湊二郎様を嫌う訳がないじゃないですか。一体何を勘違いしているのですか? 夏海さんが居なければそもそもこんな事態にはならなかった訳ですから、悪いのは夏海さんです。

 ですが、赤の他人を説教するのは良くないと思うので、私は湊二郎様に怒ってます。全く、私という人は贅沢な人ですね。

 もし湊二郎様が変なご主人様でしたら私なんて湊二郎様にけちょんけちょんにされてますよ。



「はい、すいませんでした」



 湊二郎様は謝ると私の頭を優しく撫でました。

 その程度で私の機嫌を直そうとしたってそうは簡単に行くと思って…………



「合格です」

「そりゃどうも」



 私は立ち上がって昼食の準備をしようとした時にテーブルの上にあった1枚のチラシが目に入りました。



「花火大会ですか……」

「ああ、()()()()()に神社まで━━━━」



 私は湊二郎様から発せられたその単語に反応し、まるで獲物を狩る猫のような瞳で湊二郎様を見つめました。



「……心雪も行くか?」

「はいっ!」



 私が笑顔で湊二郎様に返事をしますと、湊二郎様は何故かため息を吐きました。けれど、私はそんなことにも気づかず、湊二郎様と一緒に花火大会ということで浮かれていました。 



「花火といえばここからでも見えましたよね? どうして神社まで?」

「屋台だよ。たまには行ってみたくてさ」

「そうでしたか。それなら先に言って戴ければよろしかったのに……」

「ごめんな。今度からは気をつけるよ」



 湊二郎様は立ち上がって、私の頭の上に手を乗せてゆっくりと撫でました。

 またヒトの頭を撫でておけば良いものだと思って……



「今回だけですよ」

「(毎回同じようなことを言ってるような気がするんだが……まあ、本人も満足そうだしいっか)」



 それから二週間後、花火大会の日になりました。私と湊二郎様は浴衣を着て多久郎さんと柚葉ちゃん、それと夏海さんと合流しました。



「湊二郎くん、どう?」



 夏海さんが湊二郎様に会うなりくるくると回って自分の浴衣姿を見せていました。

 なんかいつもよりも大きく感じます……この前は良い人だと勝手に思ってましたが、やはり湊二郎様の為に消すべきでしょうか?



「ああ、綺麗だ」

「っ!?」



 思わず湊二郎様を二度見してしまいました。

 私の時にはなにも言ってくれませんでしたのに……


 私は少ししょんぼりとしながら湊二郎様のお手を握りました。



「ん? 心雪、お前はいつもかわいいな」



 湊二郎様はにっこりと笑って私に言ってきました。

 思ってたよりも強い攻撃力があり、私は鼻を抑えました。


 それから皆さんで神社へ向かうと、多くの人々で賑わっており、はぐれてしまいそうな気がしました。



「あっ、湊二郎さまっ……」



 人混みに入るなり、湊二郎様から離されてしまい、私からは完全に見えなくなってしまいました。

 すると何処かから一本の手が伸びてきて、私の手を掴みました。



「心雪、大丈夫か?」



 湊二郎様に握られた腕を見て若干顔を赤く染めながら頷きました。

 結局他の皆さんとはぐれてしまったので、二人で回ることになりました。



「湊二郎さまっ、わたあめですよ」

「よし、早速食べるか」



 私はお財布からお金を取り出してわたあめを二つ購入して、1つを湊二郎様に渡しました。

 他にもりんご飴や焼きそば、フランクフルト等々、色々なところに…………食べてばかりですね。

 何か他のモノはあるのでしょうか?



「おっ、射的か」

「やりますか?」

「ああ、そうだな。心雪、どっちが多く取れるか勝負しようぜ!」



 湊二郎様、楽しいのは分かりますが、若かれし頃にまで精神がお戻りになられてますよ。

 私はお金を取り出して、湊二郎様と射的で勝負をします。

 ただし、上手く湊二郎様に勝たせて上げなければなりません。下手くそな芝居も禁止です。湊二郎様が上機嫌になれるよう、努力しなければならないのです。

 やってやりますとも! この難関過ぎる接待ぐらい私に掛かれば余裕ですッ!!



 5分後……



「ううっ……」

「よしよし、ほら、コレやるから元気出せよ」



 湊二郎様は私にキャラメルの入った箱を持たせて頭を撫でました。

 まさか1つも取れないとは思いませんでした……


 すると花火の上がる音が聞こえてきました。湊二郎様は私の手を引いて共に階段を登り、花火が綺麗に見える椅子に私を座らせました。



「みんなでここに来るつもりだったんだが、はぐれちまったしな。どうだ? 綺麗だろ?」

「はいっ! ありがとうございます。湊二郎さまっ!」



 私と湊二郎様は二人きりでベンチに座り、花火を眺めていました。



「心雪……」

「はいっ、なんです……か……?」



 私が返事を返すと湊二郎様は私の両肩を掴んみ、そっと口唇を重ねてきたのです。

 私は湊二郎様が成すがままになり、身を委ねました。



「実はずっと待っていたのですよ。私は最初から湊二郎様のモノなのですから……でも、嬉しいです。ありがとうございます。湊二郎さまっ……」



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