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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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対イデアール戦 視影

素早い突進から繰り出される突きを避けようとするが、視界の中央付近がイデアールの振るった槍の残像で確保できない。


間一髪のところで何とか突きを避けるシンだったが、その後の横薙ぎを片手に持った短剣で防ぎ、更に力を込めるようにもう片方の手で、手首を持つ。


横薙ぎからイデアールは、巧みに槍を回転させシンの短剣を弾くと、石突で心臓を狙う。


シンの咄嗟の機転で、これを肩で受け止めるが、受け止めた側の腕が麻痺して上がらなくなる。


イデアールは更に攻撃の回転数を上げ、槍を縦横無尽に回転させながらの斬撃でシンを追い詰める。


すぐさまシンは、自分の前に手をかざすと、道具から数本の短剣を取り出し、ボロボロと落とし始める。


上体を反らしたり、左右に避け、避けきれないものを短剣で防ぎながら、落とした短剣をイデアールへ向けて蹴りつけ、相手にガードさせることで、手数を減らす。


先ほどの戦闘で、上空に短剣を弾くと影を作られると考え、地にはたき落としていくイデアールだったが、片腕を封じられたシンにとってこの行為は、好都合だった。


足元へ落とされてくる短剣を、巧みに足で蹴り易い位置にまで上げると、身体を回転した遠心力を使い、攻撃の手数を増やしていく。


「・・・ッち! 手負いの身でよく動くッ!」


「アンタが落としてくれるッ・・・、おかげだよッ!」


シンの攻撃の回転数は上がったが、それでも視界は更に狭まっていき、イデアールの攻撃を徐々に食らい出し、身体のいたるところに斬撃の傷が増えていく。


上に弾けば影が、下に落とせば手数が、ならばとイデアールは短剣を手の届かないようなところまで横に弾き飛ばし始める。


「これでもう・・・、その五月蝿い攻撃はできなくなるなッ!」


シンの周りに舞っていた短剣は一本、また一本と左右に弾かれ、その数を減らしていく。


「あぁ・・・。 だが、アンタがすぐにそれをしないでくれて助かった・・・。 腕の麻痺もッ・・・、治ってきたし・・・なッ!!」


麻痺していた腕が動くようになってきたのを確かめると、シンは一気にイデアールの懐に飛び込むと、その勢いのままイデアールの重厚な甲冑の胴体を蹴る。


俊敏さを上げ、一瞬にして飛び込んで来たシンに対応が遅れたイデアールは、体勢を崩し、後方へよろめき顔は空を向いた。


急ぎ視界を前方に戻すも、そこにシンの姿はない。


「・・・ッ!?」


イデアールの足に痛みが走り、鮮血が飛ぶ。


完全武装の甲冑でも、関節部位は装甲が薄い。


そしてシンのクラスであるアサシンは、会心率や会心ダメージへの補正が掛かっており、命中させることができれば、大きな主戦力ダメージソースにもなり得る。


何よりも、一撃必殺を生業とするクラスが故、どんなに小さな部位へも狙いを定めることができる精密性も持ち合わせている。


シンとイデアールは、属性の相性こそ最悪ではあるが、重鎧のイデアールには素早いシンの動きを上回ることが出来ない点では、相性の良い相手とも言える。


「見えなくなる前に・・・、アンタを動けなくしてやるまでだ・・・」


イデアールの後方で、滑り込んだ低い体勢のシンが両腕を広げ、手にした二本の短剣を回転させる。


隙を与えまいと、すぐにイデアールの方へ向きを変えると、今度はシンが間合いを詰め、素早い動きとフェイントを交えた攻撃で翻弄する。


「・・・っく! 動きが速くッ・・・! だが、お前も消耗している・・・。 短期決戦を仕掛ける気かッ!?」


それでも彼の槍捌きは速く、中々致命打を狙えられる関節部位を晒さない。


強く地を蹴れば、素早く身体を捻れば、美しく攻撃を避ければ、その度にシンの受けた傷が開き、身体が悲鳴を上げる。


だが、シンにはこれしか無い。


スキルは打ち消され、遠距離からの投擲もダメージにならないのなら、ジリ貧になる前にスピードを加速させ加速させ加速させ・・・、ギアを上げていくしか方法が無い。


自分にもっとスキルがあれば、イデアールのように視界を奪うような、器用な技があればもっとまともな戦い方が出来たのに・・・。


シンがギアを上げれば上げるほど、その身体からは薄黒いオーラのような靄が溢れ出す。


「・・・ッ!?」


イデアールへの攻撃を加速させる中、 彼の槍から何やら蛍火のような、小さな光の球体が宙に現れ出していた。


「何だ・・・ コレはッ!?」


そしてそれは、イデアールの攻撃に呼応する様に強い光を放つ。


「うっ・・・! コレは・・・まさかッ!?」


「コレはさっきまでの比じゃないぞ? もっと速くお前の視界を見えなくするッ! 要するにコレは・・・小さな太陽だ」


光球が光りだすと、シンは眩しさで目を細める。


そしてその後の視界には、球体状の残像が残るようになってしまった。


球体であるが故に、先程までの線のような残像ではなく、広範囲に渡り視覚を阻害されてしまう。


徐々にシンの攻撃は、空を切りだし、隙をついては攻撃され、持ち前のスピードも失われていった。


「もう時期お前は視界を完全に奪われる。 そうなれば最早、戦うどころではなくなってしまう。 ・・・これで終わりにしてやろう」


イデアールは攻撃の回転率を上げ、複数の光球を次々光らせる。


もうほとんど見えなくなってしまった視界で、シンはあるアイテムをイデアールへ投げつける。


「今更飛び道具か? そんな物は端から通用しないんだよッ!!」


イデアールがそのアイテムを斬り落とすと、一気に二人の周辺を煙が覆う。


「煙玉・・・? こんな子供騙しでは、時間稼ぎすらできんぞッ!」


槍を素早く回転させた風で、煙を辺りへと散らしていくが、量が多く彼の周囲しか晴らすことが出来ない。


「視力を回復させるつもりなのか・・・?」


イデアールが絶えず槍を回転させていると、横の方から薄黒い影が動くのを視界に捉える。


直ぐに鋭い突きを影に向けて放つが、イデアールの攻撃は何に命中することもなかった。


「気のせいか・・・。 もしや退却でもしたのだろうか・・・。 それならそれで助かる・・・、殺さなくて済むからな・・・」


そうこうしている内に、またしても黒い影が視界の端に入り込む。


イデアールは再度攻撃をしてみるも、またしても攻撃は空を切るだけ。


「・・・? 何だ・・・、これは奴ではないのか?」


その時、彼の膝裏が切られ、思わず体勢を崩してしまう。


直ぐに後方へ槍を振り回し、反撃を試みるも手応えはない。


「馬鹿なッ! ・・・何が起きている!?」


それから数度、同じように影が見えては攻撃するイデアール。


そして別の角度から攻撃されるのを繰り返した。


煙のせいで光球の光も機能せず、イデアールはただ、一方的に攻撃され続けていた時、何処からかシンの声が聞こえてくる。


「俺はこの国に来て良かった。 アーテムからは短剣を活かした戦い方を、朝孝さんからは刀の技術を学べた。 ・・・そしてイデアール。 アンタからはスキルの応用を学ばせてもらったよ・・・」


「スキルの応用・・・だとッ!?」


煙が徐々に晴れていき、遂にシンは彼の前に姿を現した。


一見すれば満身創痍の、ただの瀕死の相手に過ぎないが、シンからはまだ闘志が消えていないとイデアールは感じた、何か勝利への算段があるのだと。


「俺ももう限界だ・・・これで最後にする。 この戦いで得た“新たなスキル”でアンタを・・・越えるッ!!」


もう受けたダメージで立っているのがやっとの身体を、己の闘志で必死に前へ進ませる。


走ってくるシンを迎え撃とうとするイデアールの視界に、またしてもチラチラと小さな影のような靄が映り込む。


「もう騙せれんぞッ! これは囮ッ! 俺の気を逸らす為のスキルッ! まやかしに過ぎないッ!」


影を追うことをやめ、向かってくるシンにタイミングを合わせ、槍の横薙ぎ一閃を放つ。


シンは、寸前のところで踏みとどまり、イデアールの一閃を避ける。


「何故だッ!? どこからッ・・・!!」


イデアールの首や肘に、何処からやってきたのか、短剣が突き刺さっていたのだ。


「言ったはずだぞ・・・。 アンタから学んだこの力で、アンタを越えると」


シンが彼から学び、そして目覚めた新たなスキルとは、イデアールの光による【残像】と同じく、相手に接触することで、相手の眼球自体に影を送り込み、視界不良や飛蚊症に似た現象を起こさせるスキル、シンはこれを【視影しえい】と呼んだ。


彼の目の前にいたシンは、間違いなく攻撃をしていない。


ならば視界に映り込んでいた影が、何かをしてきているのだろうと、イデアールは考えた。


そして、イデアールは身に纏った甲冑を外し始める。


「お前に注意を向ければ影が・・・、影に注意を向ければお前自身が攻撃を仕掛けてくる。 なら・・・、俺は影も、お前自身も全てを討ち払って見せようッ!」


イデアールの振るう槍の速度が、今までの比ではない。


二人は死力を尽くしてぶつかり合う。




イデアールは、シンとシンの作り出す影からの攻撃を受けながら、その身軽になった槍術で全てに攻撃を。


シンは、影の投擲に加え、彼自身もイデアールの懐に飛び込み、更に威力の増した攻撃を掻い潜る。


そしてイデアールの攻撃に呼応し、光球達が爆発でもするかのように強い光を放ちながら膨張し、二人を包み込む。


激しい風きり音と、鉄と鉄が打ち付け合う高い音だけが響き渡る。








暫くすると、物音は消え、光球もその光を弱めていき、消えていく。










目を覆う光が消え、土煙が晴れていき、そこに立っていたのは・・・。



















・・・イデアールだった。

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