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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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特別な改造レシピ

 出雲がこの店を選んだのには、他の店には無い徹底した監視システムがあるからだった。従業員含め、一部の者達しか知らない事のようだが、店内やその他事務室などには複数の監視カメラや盗聴器が仕掛けられている。


 勿論犯罪防止の為というのもあるが、それ以上に店内での秘密の会話ややり取りを隠す為でもあったのだ。記録された映像や音声は、何かあった際に警察や出雲のようなサイバーエージェントに提出する為の証拠となる。


 ではそれが何故彼らを守る事になるのか。それはこの店のオーナーが細工をしているからだった。カメラに映し出された映像は解析されてもバレないよう偽造する事ができ、拾った音声は過去に蓄積された音声データから会話を偽造する事ができる。


 故に音声データについては、ある程度店に足を運んだ常連でなければデータが足りず、偽造は出来ないのだという。


 つまり、出雲が使っているこの店では、オーナーの思い通りに事実を捻じ曲げ偽造できるという訳だ。ただし、あくまでカメラや盗聴器での偽造に限る。直接店に来られたら、オーナーにはどうすることも出来ない。


 出雲は、警察や同僚に怪しまれない為に、こういった店をいくつか行き付けにしているらしい。


 オーナーは出雲が預けていたというドローンを机の上に出した。


「・・・何だ、これは」


 出雲の前に出された物は、彼に預けた時の形状とは明らかに違っていた。それなりのサイズ感があり、形もあまりコンパクトにはならなかった出雲のドローン。それが今、机の上にメタリックな銀色のキューブとなって置かれていた。


「何って、アンタのドローンだよ」


「これが・・・ドローン?冗談はよせ、預けた時とは随分と形状が変わっているじゃないか」


「だから最初にも言っただろ?アンタのドローンは、新しく生まれ変わったんだ。見ろよこのフォルム!コンパクトでスマートだろぉ?とてもこれがドローンになるなんて誰も思わねぇ」


 テニスボール程の大きさのキューブを手に持ち、それが出雲のドローンなのだとオーナーは口にした。彼の口ぶりから、そのキューブが変形しそうな事は伺えたが、俄には信じがたいといった様子の出雲が、どうやってドローンに形を変えるのかと口にしようとしたところで、それを察したオーナーが店の奥に来なと親指で扉の方を指す。


「見たいんだろ?ほら、着いてきな」


 席を立った二人は、そのまま目立たぬようカウンターを抜け店の奥へと消えていった。そこから更に奥へと進んだところにある、倉庫へとやって来た二人はそこで新しくなったドローンの動きを確認する。


「見てな、そらッ!」


 そう言うとオーナーは手にしていたシルバーのキューブを前方へ放り投げる。するとキューブは空中で形を変え、折りたたまれていた足が開くと先端に付けられたプロペラで宙に浮き始める。


「どうだ?驚いただろ」


「あっあぁ、これなら持ち運びや潜入の時に役に立つ。・・・だが少し小さくなったか?」


「軽量化に加え、機動力もアップした。今まで以上にポテンシャルを発揮できると思うぜ?」


 特に操作をするわけでもなくオーナーの周囲を飛び回るドローン。どうやら使用者の視線に連動して、移動して欲しい場所を認識し強く念じることでドローンはその場所へ移動するのだという。


「ただ軽量化はメリットばかりじゃない。一応外装の硬質化にも拘ったが変形する都合上、脆い部分もあるから無茶はさせないでくれよ」


 一通り飛び回ったドローンは、オーナーの手のひらの上で元のキューブ状へと変形して降りて来る。


「しかしどうして急にこんな改造が?新しい部品でも手に入ったのか?」


「まぁそれもあるが、実際のところレシピがあったってのがデカいだろうな」


「レシピ?」


 オーナーは何者かから、今回のドローンの改造に使う部品や構造、プログラムなどを見せてもらったのだという。それが誰なのかは分からなかったらしいが、必要な部品やデータなどから明らかに裏ルートで仕入れたであろうものが含まれていた事から、警察関係者らとは繋がりのない人物だった事は確かだと言う。


 何故そんな危険なものに手を出したのかと出雲が問うと、オーナーは自分の中に流れるハッカーとしての血がそれを求めたという曖昧な回答をし、出雲をこのまま店裏から出て行ってくれと、裏口へ案内する。


「言っておくが、あまり素性の分からん連中とは連むなよ?俺でも庇い切れない事だって・・・」


「分かってるっつぅの。それに俺だって馬鹿じゃねぇ。自分の身くらい自分で守れるさ」


 店の様子を見れば彼の発言の信頼度は伺える。用心深さに関してはオーナーは臆病と言っていいほど慎重だろうという事は出雲も分かっている。しかしそんな彼の好奇心が掻き立てられてしまうほどの“レシピ”とは一体何だったのか。


 今となっては、直接やり取りしたオーナーでさえその足取りは掴めそうにない。ただそのやり取りの際に出雲の影が向こうに悟られていなければいいがという不安は残る。


 裏口から店を抜けた出雲は、路地裏を通り被疑者である伊武に言われた場所へと向かう。特別、時間の指定も無かった事から出雲がそこへ迎えば分かるという事なのだろう。


 先程の店へ寄ったのが特別な行動ではないとカモフラージュする為、出雲はその後も何軒かの店や個人経営の如何にも怪しげな場所を訪れては時間を潰した。


 そして夕暮れ時になると、そろそろ動き出していい頃合いだと判断した出雲は、バラバラ殺人事件が起きた現場から南南東にあるビル群の路地裏に何があるのかを、一人確かめに行った。

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