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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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ギルド内のイベント

 粗方の事情と、今後シンが行うべき事についてヘラルトから説明を受けたシンは、一度白獅らの元へ戻り他に自分に出来ることがあるかを聞いた後に、WoFの世界へ戻ることを伝えに行こうとした。


 そんな彼を引き止め、くれぐれも他の者達の前で“ヘラルト”と呼ばないように注意を促す。


「いいですか?くれぐれも皆さんの前では、私のことを“ヘラルト”とは呼ばないでくださいね」


「最初から気になっていたんだが、何で“ヘラルト“という名を隠してるんだ?別に名前や素性がバレたところで、何かある訳でもないだろ?」


 元々この世界の住人ではないヘラルトの素性が分かったところで、彼が転移の際に歳を取っていた事とWoFの世界の住人である事くらいしか出て来ない。彼を起点に何かを調べるにしても、余りにも情報が少な過ぎる。


「いえ、私自身の素性を隠したいのではありません。いずれ時が来たらお話しします。それまではどうか、私とシンさんとの関係はご内密に・・・」


 ヘラルトが何を考えているのかシンには分からなかったが、彼がそうしたいと言うのであればそれを断る理由も特に無かった為、疑問を抱えたままではあったがシンは彼の申し出を受け入れた。


「きっとお前には、俺には分からない考えがあるんだろう・・・」


「すみません・・・」


「いや、それでこそ俺の知っているヘラルトだ。子供のくせに底の見えない考えを巡らせている」


「そんな事を思っていたんですか?ふふ、ですがもう子供ではありませんよ」


 年相応になり、知略を巡らせ人を動かす参謀のような見た目となった今、ヘラルトが何を企んでいても、きっとシンを裏切るような事はしないだろうという、不思議な信頼が彼の瞳にはあった。


 別れ際に再びローブのフードを被り顔を隠す。作業へ戻る彼の後ろ姿に、彼のラボを去るシンは最後にヘラルトと再会した率直な気持ちを彼に伝える。


「あの時お前は死んだものだと思っていた。何も出来ない自分が悔しかった・・・。でも形はどうあれ、こうしてまた会えて嬉しかったよ”ヘラ“」


 らしくない言葉を送った事に恥ずかしくなったのか、シンはヘラルトの反応を見ぬままラボの扉を開けて出て行ってしまった。だがヘラルトはシンの言葉に思わず手を止めていた。


「覚えていてくれたんですね・・・その呼び方。最初にあった時の事・・・。今度こそ僕も、期待に応えて見せますよ。そして必ず元の世界へ・・・」


 シンの言葉に背中を押されたようにやる気に満ち溢れた瞳に変わるヘラルト。彼は彼なりに目的があり、元の世界へ戻る為に尽力しているようだった。


 その為にこの世界にある異変や、自分と同じように異世界からやって来た者、そして別の世界間を行き来できる唯一の存在である、シン達のようなWoFユーザーについて調べているようだ。


 何よりも、異変について調べる事がシンの為にもなると分かった彼は、自分だけの為ではなく他者の為にも頑張れる昔のヘラルトという少年の頃から、根っこの部分では変わっていなかった。


 ヘラルトのラボを出たシンは、薄暗い通路を来た時の記憶を辿りながら戻り、最初にWoFの世界から転移した部屋へとやって来る。厚いガラスの自動ドアがシンの気配を感知し、彼が入ろうとする前に扉が開く。


「ん?おぉ、戻ったかシン」


「あっあぁ」


「その顔は長話を永遠と聞かされたという顔だな。オッド氏は自分の研究の話になると止まらなくてな。こっちの世界の出来事について知らないお前は、彼の格好の餌食だった事だろうな」


 悪そうな笑みを浮かべながらシンを見る白獅。彼はこうなる事を知っていてシンをオッドに差し向けたのだろう。


「ギルドの現状については?オッドさんから聞きました?」


「あぁ、大体はな。それと調査の為に向こうの回復薬が必要なんだって?」


 疲れた様子のシンに話しかけたのは、沢山のモニターの前で装置を弄る瑜那だった。ヘラルトが内緒にしろと言っていたのは、シンとの関係とその本名の事だけ。


 物資の転送についてはその範囲では無かった為、確認も兼ねてWoFの回復薬が必要なのだという事を瑜那に問う。


「流石!話が早いですね。今僕達が早急に行わなければならないのは、生存している仲間達と合流する事、そして襲撃を受けて廃墟となったアサシンギルドが保有していた貴重なデータや機材を回収し持ち帰る事です。現状の戦力では、敵対するフィアーズには到底敵いませんからね」


「だからぁ〜!アジトへなら俺が行ってくるって!」


「宵命・・・今は無茶をする時ではないんだよ。これ以上戦力を欠く事なく、こっちの物資や人員を増やして戦いに備えなきゃならないのが分からないの?」


 あまり物事を考える方ではない宵命は、アジトが廃墟となっているのなら今のうちに人の気配の無いところから調べに行けばいいと主張したようだが、オッドが言っていたように距離を移動するにも公共の道は見張られており、機械などの装置を使った移動もハッキングに遭う可能性が高い。


 現地へ向かうには道なき道を自力で進むしかないのだ。そうなると道中で襲われる可能性や、仲間を見つけたとしても怪我を負っていたら連れ帰ることも出来ない。


 現実の世界にWoFのような回復薬を生成する術を持たないアサシンギルド側は、慎重に動かざるを得なかった。そこに向こうの世界から物資を送れる仕組みをオッドが作り上げたおかげで、世界間を行き来できるシンの協力を経てギルドの再建と拡張が可能になるという訳だ。


「出来ればありったけの物資を送ってもらいたいですが、送れる種類や量には限りがあります。それに向こうでも、上位手の回復薬など容易に手に入るものではないのでしょう?」


 瑜那の質問にふと感じた事、それはオッドのラボで彼と話した内容を彼らは全く知らないのだという事だった。その場にいなかったのだから当然と言えば当然だが、そもそも外部の協力者であるオッドの事をやけに信用しているのだなとシンは感じていた。


「それについては考えがある。丁度今のパーティに・・・」


 オッドに話した内容と重複する話を彼らにも違和感なく、あくまで自然に話していくシン。聞かれた事に率直に応えているだけ。意識して同じ話を瑜那にしていた訳ではない。そしてシンの話を聞いていた誰もが、特にシンを疑っているという様子もない。


 だが本来、WoFのゲームの中でも、アサシンというクラスのギルドは素直に物事を聞き入れたり話すような組織ではなかった。アサシンのギルドに限った話ではないが、クラスによってはギルド内の抗争や内乱、裏切りや権力争いなど、現実世界にもありそうな実に人間らしい醜いイベントが起きる事がある。


 今シンの脳裏に過ったことで、このアサシンギルドにそのようなイベントが起こるとは思えなかったが、彼らの人を信じる基準となるものとは何なのか。そんな疑問を薄っすらと湧かせながら、彼らとの会話の中でいつの間にか頭の中から消えていた。

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