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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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真実を伏せた口実

 ミネの名前を出し、彼がそう言っているとカガリを説得する事で、一旦街へ戻ることに同意させる事に成功する。しかしこれはまだ作戦の初歩段階に過ぎない。


 何にしろ、カガリが納得しなかったところで強引に連れ去るしか選択肢はないのだ。本人が不本意とはいえ街に戻る事に同意しているだけでマシと言える。


 シンの言うように、必要な物だけ持ち出し野営を後にした一行は、早速撤退に至った経緯をシンとツクヨに問う。捲し立てるような質問の数々に、急がねばならない焦燥感とミネが本当に無事なのかと言う不安で、冷静に答えられるかどうか本人達も気が気ではなかった。


「アンタ達の必死の形相に渋々従ったが、納得のいく理由は聞かせて貰えるのか?」


「アクセルの言う通りだ。俺達は仕事としてここに来てるんだ。トミの依頼を進める為にも、これまでに無い山の変化は是非とも調べておきたいものなんだがな・・・」


 アクセルとケネトの当然の言い分が二人に突き刺さる。


「おう、二人の言う通りだぜ!ここまで来て危ないからやっぱやめます、じゃぁ済まないだろ?」


「私は正直、安心したかな・・・。何か嫌な予感がしてたし、紅葉もあんな危険な目に合わせちゃったし。安全に山を越えられる時まで待ちたいって言うのが本音です・・・」


「・・・みんな思うところはある。強要する訳じゃないが、アタシらには事情が飲み込めない。何せ野営では何も無かったんだからな。退き引きならない事情があるのだろうから、アタシは二人が最善の選択をしたと信じてる」


 ツバキやアカリも、思い思いの言葉を口にする。アクセルらのようにもう少しで手の届きそうなところを調べるべきだと言う気持ちもあれば、アカリのように安全第一で身を案じている考え方も理解できる。


 だが、何よりも信じていると言われたミアの言葉が、シンとツクヨの心の不安を少しだけ取り除いたのだ。長い付き合いでミアは分かっているようだった。二人が何も考え無しに、危険だからという理由だけで撤退を命じた訳ではない事を。


「分かってる、ちゃんと説明すると言ったしな」


「私とシンは、精気を纏ったモンスター達を誘き出そうと、持ち場から少し先の森の中へと向かったんだ。そこで開けた場所にある湖を見つけたんだ」


 ツクヨから語られた、回帰の山にある湖というもの、現地に詳しいアクセルらとカガリは知っていた。しかしそれは、過去の調査隊の記録やミネの与太話で聞かされたものであり、実際にその湖を発見した事はないようだった。


 湖の話が出たところで、色々と募ることもあっただろうが、一行はまず話を聞こうと、誰も質問でツクヨの話を遮ろうとはしなかった。


「そこで“例“の記憶の光景を見たんだ。みんなもこれまで何度か見ただろ?きっと誰かに見た記憶の光景だろうと話してたアレだよ」


「野営に戻って撤退の話をした時、みんなはあの記憶を見てないって事が直ぐ分かった。だからこそ信じて貰えるか不安だったんだ」


「そこで見た記憶には、山のヌシの真実と、過去に行われた儀式の事。そして山のヌシがどうやって引き継がれるのか、そのカラクリが映し出されていた」


 シンだけはツクヨが言葉を選んで話しているのが分かった。実際のところ、ありのまま話せば簡単な話なのかも知れない。だがこの場には、ミネを実の親のように慕っているカガリがいる。


 彼にミネの身に起きている信じ難い真実を伝えれば、間違いなくここまでの道のりを戻り、命と引き換えにしてでもミネを救いに向かうに違いない。だが、二人もまだ全貌を知らぬ山の神の所業は、この山の大半を喰らわんとするほど想像もつかない事。


 単純に、それほど広範囲に渡る食事ともなれば、その身体は想像を絶するほど巨大である事が予想される。まだ確かなことまではシンとツクヨにも分からないが、兎に角ミネが言っていた五号目よりも下に降ることを上手く伝えねばと頭を働かせた。


「記憶の光景を見終わった後、私達の側にはいつの間にかミネが居たんだ。彼は私達よりも遥かに多くの記憶の光景を見たようで、私達がどんな記憶の光景を見たのかと聞いた。そこで彼から、回帰の山で山のヌシと呼ばれているものがどんな存在なのかとか、儀式の目的、その背後にいる黒幕の存在について聞かされたんだ」


 ツクヨはミネの記憶を、あたかも他の誰かの記憶の光景であるかのように説明した。ミネもまた、その記憶を探り多くの秘密を解き明かしていたのだと。


 その後は山のヌシの他に、山の神なる者が存在している事や、山のヌシが山の神の道具に過ぎない事。山のヌシが山の神の食事の為に、回帰の山やそこに足を踏み入れた生物に精気を纏わせ集める役割があった事や、過去の白装束の者達が行っていたものが、その山の神の食事、神饌の儀式であった事を一行に話した。


「ミネさんの話では、その神饌の時期が近付いているのを察した為に、最近の彼の行動がおかしく見えたのかも知れない。それでアクセルさん達も感じた事のない山の異変が、その神饌の為にヌシが動き出したものだとミネさんは推理した。彼は今夜、その神饌が行われると言っていたんだよ・・・」


 山が大きく抉られた記憶の光景は、一行も見ている記憶の光景であり、ツクヨの話からその神饌が行われれば、それと同じ事が今の回帰の山にも起こるのだと理解した。


 故にシンとツクヨが必死に逃げろと撤退を伝えに来たのだと、そこで漸く一行は彼らの行いに納得がいったようだ。


 ただ一人、それならミネは今何をしているのかと疑問の表情を浮かべるカガリを除いて。

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