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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第1章:トールステイン大王伝記黎明編

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第9話 一歩ずつの進歩 5歳 冬

 昨日のサウナで、すっかり元気一杯に。体が軽い。

 明日の村長ヤールの訪問に備えて、西風炉の移築を頑張らねば。

 明るくなったらすぐに作業開始だ。

 もたもたしていると、夜はすぐに来てしまうから。


 北方の朝は寒い。白い息を吐きつつ、さくさくと雪を踏みしめて家の裏に回る。

 腕力が要る作業なので左腕に包帯を撒いた父ちゃんに手伝ってもらいながら、ちょっとボロい作りの西風炉を壊して出た石材や粘土を、橇の代わりの毛皮に積んで引っ張っていく。

 ちゃんとした大きな荷運び用のソリもあるんだけど、そこまで大した量じゃないし、すぐそこの海岸まで引きずるだけだからね。


「石なんかは海岸に落ちてるものを使えばいいんじゃないか」

「父ちゃんもわかってないなあ。サウナ石と一緒で、水を含んでる石は爆発するかもしれないじゃない。この石もずいぶん頑張って選んだんだよ」

「む…そうか」


 軽く焚き火するぐらいならどんな石を使おうが問題ないだろうけど、製塩は高温で長時間の火にさらされるからね。このあたりに耐熱レンガが気軽に買えるホームセンターはないわけで自力で調達しないとならない。


 あーあ。断熱もしくは蓄熱性能が高くて高温にも耐える石材が、近くで豊富にとれればいいんだけど……あれ?


「あっ…サウナ石を使えばいいんじゃないか!」


 …僕はなんて間抜けなんだ。

 答えはすぐそこにあったのに、試行錯誤と称しては、拾ってきた石を燃やして爆発させてたのだから。おまけにドヤ顔で父ちゃんに説教までしちゃったよ。

 まあ、いい経験だったと思うことにしよう。


 素材としてのサウナ石の良いところは、どこの家にも豊富にあることだ。

 この地に入植して以来、それこそ何百年も皆はサウナに入り続けているので、各家にはサウナ用の石が山のように積んである。

 もしも村で製塩用の炉が普及したとしても材料に困る家はないだろう。


「父ちゃん、予定変更」


 毛皮に載せていた石と泥は、この場で捨てられた。

 さらば、僕の黒歴史よ。

 一応、泥を固めるのに使ってた羊や馬の毛の余りに未練はあるのだけど、あとで家畜スペースを掃除したらいくらでも手に入るし。


「サウナ石で炉を作るのか。考えたこともなかったなあ」

「サウナの中も焚き火するじゃない?火に強いなら中でも外でも変わらないし」

「言われてみればそうなんだがな…」


 父ちゃんが首を捻りながら、サウナ小屋で適当な石を毛皮に載せる。

 サウナ用に積んであるサウナ石の良いところは、大きさがだいたい同じで積みやすい形になっていることだ。

 これでパイロット製塩炉の建設にかかる労力を大幅に節約することが出来る。


◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「…大人の力ってすごいなあ」

「ふふん。そうだろう?」


 父ちゃんが軽く胸を張った。

 製塩炉の建築は、小一時間であっという間に終わった。

 僕は5日もかけたのに…。


 父は力が強いだけでなく、要領も良い。

 ここに穴を掘ってとお願いすれば、スコップ代わりの木の棒であっという間に必要な深さまで土を掘ってくれるし、ここに石を積んでと指示すればサウナ石をいい具合に組み合わせて、炉の形にしてくれた。


 今は石積みの隙間に泥と粘土と家畜の毛を混ぜた手製の漆喰で隙間を塞いだり、風を取り入れる口を広く、燃焼室側を狭くして流速を上げる工夫をしてる。


「あとは、どこまでやるかなあ」

「なんだ?完成したのか?」

「炉の部分は完成といえば完成なんだけど」

「けど?」


 今の炉のつくりだと熱が逃げて勿体ないんだよね。

 石鍋を熱するための炎と煙が熱として大気に逃げてしまう。

 最高の熱効率を考えるなら、薪を燃焼させた熱い煙はトンネルに誘導して煮炊きや床暖房に使ったり燻製に利用して温度が下がりきるまで活用したい。


 だけど、煮炊きや床暖房に使うなら家の改築をする必要があるし、コールドスモークが可能なまでに温度を下げるなら、相当に長いトンネルを掘らないといけないし、その先に燻製小屋と高い屋根よりも高い煙突を作らないと煙が逆流して危ない。

 かなり複雑な熱回収の仕組みになるから、結構な試行錯誤になりそうなんだよなあ。


 ちらり、と父ちゃんの包帯が巻かれた腕を見た。

 ちょっと今日のところはなし、かなあ。

 

 海岸の流木を拾ってから帰ろうかな、と海辺を歩いたら、干潮で頭を出した岩場に黒いムール貝が密生しているのを見つけた。

 フジツボも生えていたりするから剥がすのが固くて面倒なんだけど、茹でても蒸してもスープの具にしても美味しいんだよね。


「父ちゃん、母ちゃんとエリン姉に朝ご飯持って帰ろうよ」

「おう、そうだな」


 父ちゃんがナイフを出して慎重に岩からムール貝とフジツボをガリガリと削って引き剥がした。僕はまだ力が足りないのと危ないので、食事用以外のナイフは持たせてもらえない。石製以外のナイフは、わりと貴重品だからね。


 たぶん一人前になって家の仕事をするようになったら、自分のナイフや斧を貰えるんだろう。今のいろいろなやらかしも子供だから見逃されている部分も多分にある。


 僕はまだ5歳だし、なにもかも一気にやれるわけじゃない。

 大規模にやるしかなかった製塩作業を、各家庭で子供が拾った流木や小枝を燃やして出来るようになるだけでも、村にとっては物凄い進歩なんだから。


 一歩ずつ、技術だけでなく周囲の信用を固めながら進んだ方がいい。


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理解あるいいお父さん
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