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ヒトを勝手に参謀にするんじゃない、この覇王。~ゲーム世界に放り込まれたオタクの苦労~  作者: 港瀬つかさ
8章 オタク腐女子、本気出す

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ジャガイモ料理なう。

「……シュテファン、ごめんねぇ……」


 何度目になるかわからない謝罪を口にしながら、ワタシは黙々とジャガイモを剥いていた。ワタシの隣で、ユリアーネちゃんもジャガイモを剥いている。シュテファンはワタシ達の倍ぐらいの速度でジャガイモを剥きながら、いつもの優しい笑顔を浮かべてくれた。…なお、ライナーさんは料理番さんたちが緊張するので、相変わらず入り口の外で待機です。申し訳ない。


「ミュー様、お気になさらずに。それに、新しい料理を教えて頂けるのは、僕としても大変嬉しいですよ」

「うぅ、シュテファンが良い子すぎて、色々辛い……」


 ワタシがジャガイモ料理にバリエーションがあると教えたばっかりに、リヒャルト王子にめっちゃ食いつかれたし。とりあえず、今日の夕飯は元々の献立で、シュテファン抜きの皆さんで作って貰うことになりました。んで、ワタシはシュテファンと一緒に、ワタシの知ってるジャガイモ料理(つっても全部家庭料理だけどな!でぃなーとかふるこーすとか、庶民の我が家に縁はなかったよ!お洒落な料理なんぞ知るかい!)を作っているわけです。

 とりあえず、シュテファンに作り方を教えて、味見もして貰って、その中から、王子様に出してもおkそうな料理を見繕って貰うというか、献立に追加して貰うというか、ね。……幸いなことに、ジャガイモってのはどこにでもゴロゴロ転がってるしな。種芋一つからめっちゃ増えるよね。サツマイモもだけど。この二つの繁殖力の強さはビックリだ。しかも、ジャガイモって寒冷地でも温暖地でも育つしな。流石まいふぇいばりっとジャガイモさんやでぇ。


「それにしても、ジャガイモにそんな色々な使い方があったんですねぇ」

「ワタシとしては、何でジャガイモさんの可能性が無視されてたのか知りたいぐらい」

「ジャガイモといえば、主食代わりに蒸かして食べるか、他の肉類の添え物、或いはスープ類のかさましという感じですしね」

「失礼な話だなぁ……」


 三人でジャガイモの皮を剥きながら、延々とお喋り。いや、無言でやると、寂しいじゃないっすか?とはいえ、ユリアーネちゃんは黙々と皮むきしてるんだけどね。こっちが声をかけたら返事してくれるけど、自分からは話してこない。……うーん?やっぱりまだ、そこまで打ち解けて貰ってないのかな?それとも、ココが料理番さんたちの領域だから、遠慮してるのかな?

 皮を剥いたジャガイモは、そのまま水を張ったボウルにゴロゴロと転がされていく。数が必要だからね!色んなジャガイモ料理を作るからね!……つーわけで、ワタシの晩ご飯はこのジャガイモ料理になりそうだなー。味見してたら、それで満腹になりそうな予感☆



 ……ってことは、何を作ったか説明する課程で、覇王様が味見を要求する可能性があるな。あとでシュテファンに言っておこう。



 まったく、あの食いしん坊には困ったものだよ。ワタシが食べてると、すぐに横取りしようとするんだから。自分はどうせ、リヒャルト王子と一緒に、めっちゃ豪勢なディナーを食べるくせに-。え?ワタシもそこに同席しないのか?いやいやいや、王子様とご一緒にお食事とか、テーブルマナーアウトなんで、ご遠慮させて頂きました。かしこ。

 むしろそんな状態でご飯食べても美味しくねーもん。それならここで、シュテファンと一緒に作ったジャガイモ料理を、ユリアーネちゃんと、シュテファンと、ライナーさんの四人で、もしゃもしゃする方が良い。……あー、料理長は味見に顔出ししそうだな。まぁ、料理長には食べて貰った方が良いか。落ち着いたら食べて貰うか。

 だって、料理長、今、めっちゃ戦争中っぽいし。夕飯の豪勢なディナーの為に張り切ってらっしゃいます。他の料理番さんも。ジャガイモ剥き剥きしてるワタシ達のまったり具合が申し訳ないぐらいに。


「とりあえず、冷めてもおkな料理から作ろうかー」

「冷めても良い、ですか?」

「むしろ冷たい方が美味しい料理が二つほどあります」

「冷めても美味しいジャガイモ料理、なんですか……?」

「つーか、冷たいのを食べる、かな?」

「「……??」」


 首を傾げるユリアーネちゃんとシュテファンに、ワタシは笑った。ビシソワーズは、よぉっく冷やして飲む方が美味しいからね。あとは、ポテトサラダ。サラダなんだから、冷たい方が美味です。とりあえず、どっちもジャガイモを茹でないと駄目だから、お鍋、お鍋☆

 まず、ポテトサラダ用に、ジャガイモを大量に鍋で茹でる。柔らかくなるまで遠慮無く茹でる。ので、その間にビシソワーズの準備。こっちは、バターとオリーブオイルでタマネギを、しんなりするまで炒める。んでもって、コンソメスープにして、ジャガイモをコトコト茹でる。それこそ、ジャガイモもタマネギも溶けちゃうぐらいのレベルまで煮込む。

 鍋二つをコンロにかけている間に、ポテトサラダの具材を用意。あと、二つの鍋の隣でゆで卵を作るのも忘れずに!ウチのポテトサラダには、ゆで卵のみじん切りが必須でしたの。ポテトサラダの具材は各家庭によって違うと思うけど、我が家は、キュウリと人参、ゆで卵、あと時々ハムが入ってた。具材は全部みじん切り。人参は、みじん切りにしてからさっと湯通しして、柔らかくしておくのも忘れずに。キュウリは、みじん切りにした後に塩もみして、水をしっかり切るのも忘れずに。ハムも細かくみじん切り。我が家はみじん切りですが、千切りでも輪切りでもおkだと思う。食感の違いだよね?

 って言ったら、シュテファンが全種類試しましょうとか言って、千切りとみじん切りも作り上げました。あと、グリーンピースやコーンを入れても美味しいといったら、それらも準備してくれました。流石料理番。ワタシとユリアーネちゃんが一つの作業をしている間に、三つぐらいやってる。プロすげぇ。勿論、グリーンピースとコーンはちゃんと茹でて下さい。


「ミュー様、ジャガイモが茹で上がりました」

「じゃあ、ユリアーネちゃん、それ、潰して。はい、マッシャー」

「わかりました。お任せください。粒一つ残さぬように、完璧に潰してみせますね」

「……お、おう」


 にこやかな笑顔で言ってくれるのは嬉しいんだけど、なんでそんな、微妙に敵を殲滅しますみたいなノリなん?まだこの娘の性格を把握しきれてないわー。

 とりあえず、そんな風に延々とボウルの中の大量のジャガイモをマッシュしているユリアーネちゃんの隣で、ワタシはゆで卵の殻を剥きますよ。剥いたら水の入ったボールに転がしとく。シュテファンは三種類作る予定のポテトサラダの具材の用意をしてくれてるので、ゆで卵の殻剥きぐらい頑張るー!

 殻のむけたゆで卵は、半分に切って、マッシュの終わったジャガイモの上へ。え?みじん切りにしないのかって?これからするんですよ☆つーわけで、ユリアーネちゃん、よろしく。


「このまま潰せば宜しいんですね?」

「ういっす」


 半分にしまくったゆで卵を、ぽいぽい放り込むワタシと、楽しそうに卵をマッシュするユリアーネちゃん。こうすると、お手軽にみじん切りっぽくなるのですよ。え?ちゃんと丁寧にみじん切りにした方が良い?いや、どうせ混ぜたら形潰れるし、こういう、ちょっと雑で白身の大きさがばらばらしてる方が、食感楽しいもん。お客様に出すんじゃないし。ワタシ達が食べるだけだし。

 マッシュが終われば、具材とマヨネーズと塩こしょうとお好みでハーブとかレモン汁とかを混ぜつつ、味を調える。ポテトサラダってさ、具材の下準備が面倒くさいだけで、実は割と簡単だよね-。我が家は入れないけど、タマネギスライス入れるパターンもあるよね。なお、我が家で入れないのは、食感が違うから。あと、生のタマネギはちょっと辛いと弟妹に不評でな。

 とりあえず、ボウルに放置。味見はしましたよ。ワタシはこれでおkだと思う。あとは、シュテファンに調整を頼む感じ。盛りつけとかもおまかせ。


「こちら、十分に煮込まれたようですが?」

「じゃあ、裏ごししてください」

「わかりました」


 シュテファンは丁寧に、鍋の中のタマネギとジャガイモのコンソメスープを裏ごししていく。手際が素晴らしいっす。流石プロ。裏ごしが終わったら、鍋に戻して、生クリームと牛乳で伸ばして、塩こしょうとハーブで味を調える。まぁ、ジャガイモのポタージュスープっすよね。ビシソワーズって。

 できあがったみたいなので、味見させてもらった。温かいけど、美味しい。んで、コレを冷やしたら美味しいので、保冷庫に片付けて貰った。冷え冷えビシソワーズ、暑い夏にはオススメでござる!

 あとは、とりあえず本日作るのは、コロッケとガレット。サラダとスープを作ったら、後はメインになりそうなおかずでしょう!コロッケは、今回はシンプルにタマネギとミンチのポテトコロッケ。……個人的には、ツナとコーンでポテトサラダっぽい味を付けたやつが、ほどよくクリーミィで好きなんだけどね。ポテトサラダあるから、それはまたの機会に。

 ジャガイモを茹でてマッシュして、という簡単な作業はワタシとユリアーネちゃんで。ミンチとタマネギのみじん切りを炒めて下味を付けるのは、シュテファンに。いやー、凄いわ。フライパンを軽々と扱い、ミンチとタマネギが華麗に炒められていきますもの。やっぱりプロすげぇ。

 具材が準備出来たら、全部混ぜる。ひたすら混ぜる。ミンチとタマネギにちょっと濃いめに塩こしょうをしておくので、混ぜるときには味付けをしない。皆で楕円形に整えたら、小麦粉、卵、パン粉で衣を付ける。あとは、食べる前に揚げて貰おう。……なお、やはりシュテファンはプロなので、形がめっちゃ綺麗でした。ワタシのは歪で大小がありました。ユリアーネちゃんは普通に上手だった。うぐぅ。


「このコロッケという料理は、中身はアレンジが出来るんですか?」

「出来るよ。ジャガイモだけじゃ無くて、カボチャとかサツマイモとかでも作るし。ミンチじゃなくてツナ……、……えーっと、マグロとかカツオのほぐし身の油漬け?とかも使うし。そうそう、クリームコロッケも美味しいよ!」

「クリームコロッケとは?」

「簡単に言えば、濃いめに作ったシチューを丸めて揚げる」

「……どうやって、ですか?」


 想像しても思いつかなかったらしいシュテファン。まぁ、シチューを丸めるって想像出来ないわな。うん。


「我が家では凍らせてました」

「はい?」

「濃いめに作ったシチューを、こう、トレイに入れてね?凍らせて、適当な大きさに小分けにして、衣付けて揚げるの。衣付けた後は、溶けないように保存しとく」

「なるほど……!」


 他の家がどうやって作ってたかは知らないけど、ウチの母さんはそうやってました。マル。っていうか、何でワタシ、クリームコロッケの作り方レクチャーしてんの?今はジャガイモ-!

 そんなわけで、ジャガイモのガレットを作るために、千切りバージョンとすり下ろしバージョンの用意。生のジャガイモを、千切りにするか、すり下ろすかの違い。個人的には、千切りにチーズ乗っけるのが好き。すり下ろしもチーズ美味しい。千切りは、同じく千切りのベーコンと一緒に焼くと、お肉の旨味が味わえるので、おかずに最適。……って言ったら、千切り+チーズ、すり下ろし+チーズ、千切り+ベーコン、の三種類を試すことになりました。やったね☆

 ジャガイモのガレットは、適当な分量を油を引いたフライパンに広げて、円形を作りつつ、ジャガイモが白くなって火が通ってきたら、ひっくり返す。ジャガイモのデンプンでくっつくから、別に繋ぎの粉とかいらないんだよねぇ。我が家では、千切り+チーズがおやつ扱いだったけど。お好み焼きとか鉄板焼きの時に一緒に作ってたなぁ。ジャガイモのガレットうまうま。



 ……って、ジャガイモばっかりだよね!解ってたけど!あと、ワタシはご飯が良いです、シュテファーン!




なお、お料理の数々は、ミューちゃんが家で作っていた方法なので。

他の作り方があるとか、これはおかしいと思われても、スルーしてください。

調理方法なんて、各家庭で違うと思いますので…。

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「ヒトを勝手に~番外編」番外編やってます。

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こんなんも書いています。書籍化もしてます。よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミューもアディもかっこいいです [一言] 自分はポテトサラダの具材に美味い棒入れて作ってました。主に明太子味かチーズで
[良い点] 最強の鑑定士って誰のこと?の方でもあったような気がするけど語り手が違うだけでこんなに違うんだなって思いました! あと、アディとミューちゃんの関係がおいしいです。 最強の鑑定士のやつといいこ…
[一言] 後の世に食学の祖として名を残しそうな主人公ですね 読んでいるとお腹すいてきます
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