表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトを勝手に参謀にするんじゃない、この覇王。~ゲーム世界に放り込まれたオタクの苦労~  作者: 港瀬つかさ
5章 参謀改め、覇王の親友

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/144

46

ミューちゃん、ちょっと遊ぶ。


 おはようございます。快晴でとても心地よいお天気(四月の快晴とか普通に青空綺麗くね?)なのですが、戦闘が本格的に始まってしまって、何も美しくねぇです。つーかキャラベル共和国、日が昇るやいなや攻めて来んの止めれ。ゆっくり朝ご飯食べる暇も無く、兵士の皆さん出陣したじゃ無いですか。可哀想すぎる。とりあえず作り置きしてあったおにぎり食べて、慌てて飛び出していくの可哀想すぎた!

 んでもって、ワタシも早朝に無理矢理たたき起こされた感じでイラッとしました。キャラベル共和国滅べ。自分とこの都合で勝手に戦争仕掛けてくる阿呆な大統領なんて滅べ。キャラベル共和国というか、今の大統領が悪いと思うことにしておく。アーダルベルトに対抗意識燃やして、こっちが協力しようとしてんのに突っぱねて、そのまま宣戦布告レッツゴーとかただの阿呆だろ。阿呆で良いよ!

 なお、覇王様は面倒そうにおにぎりを数個一瞬で食べ終わると、兵士を率いて飛び出しました。寝ぼけ眼でとりあえずお見送りしたら、「大人しくしてろ」と言われたんですが。お前そこは、「危ないから安全な後方で待機しとけよ」ぐらいの表現使えよ。意味は通じてるけど。面倒だったから省略したんだろうなってことはわかるけど。隣にいたライナーさんが、思いっきり笑い堪えてたぞ。

 あと、地味にむかついたので、後で物見櫓から見物してやろうと思います。ちゃんと戦ってなかったら、仕事しろーってヤジ飛ばしてやるんだからな!


「ミュー様、少しは陛下の心配をされたりはしないんですか?」

「は?何言ってんの、ライナーさん。アディをどうにか出来る相手なんているわけないじゃーん」

「…………まぁ、そうですね」

「でしょ?あと、一応エーレンフリート傍に居るんでしょ?」

「離れろと言っても離れませんね。……せめて陛下の邪魔にならない程度の武働きをしていれば良いですが」

「ライナーさん、何気にエーレンフリートの扱いヒドイというか、雑ですよね」


 しみじみとした顔で呟いたライナーさんに、思わずツッコミを入れてしまった。いやだって、このヒトってば、相棒兼同僚のエーレンフリートのこと、割と適当に扱ってるもん。最近気づいたんだけど、ライナーさんって、エーレンフリートのことだけかなり雑に扱ってる。面倒見てるのも世話焼いてるのもツッコミ入れてるのも標準装備なんだけど、ふっと気づくと毒舌っぽいの口にしてるし。え?何?親しいからこそ適度にこき下ろすあんな感じ?

 そんなワタシに、ライナーさんはにっこりと笑った。笑うだけだった。何も言わなかった。……あ、うん。何となく察しました。長い付き合いだからそういう感じです、みたいなアレですよね?相変わらず本当に、腐女子(ワタシ)ホイホイなんですから~。

 まぁとりあえず、朝ご飯も食べたことだし、物見櫓でも行くかな。戦況が気にならないと言えば嘘になるし。別に負けないだろうけど、負傷者が少ないと良いなぁとは思ってる。今回は回復魔法の使い手もそこそこ連れてきてるみたいだし、ラウラ達魔導士部隊も超張り切ってるみたいだから、むしろキャラベル共和国に合掌って感じだろうけど。

 そういや、アルノーは斥候の情報を元に敵の兵糧を潰しに出かけたらしい。五十路のオヤジのくせに、嬉々として戦場を走り回るよなぁ、あいつ。強くなることに貪欲だし、五十路で人間としては頭オカシイレベルで強いくせに、まだまだ強くなろうとしてるし。何でそこまで強くなりたいんだか。とはいえ別に戦闘マニア(バトルジャンキー)ではないんだよね、アルノー。オヤジの考えはよくわからぬ。

 てってけてーとたどり着いた物見櫓では、見張りの兵士さんが一生懸命周囲を見ていた。お疲れ様です。とりあえず、アーダルベルトはどの辺にいるのか教えてください。見てみたい。


「陛下でしたら、あそこの一角で戦っておられますよ。敵の主力部隊と交戦中だそうです」

「へー。わー、流石にデカイと見つけやすいなー」


 教えて貰った方角を見たら、めっちゃ普通にアーダルベルト見えた。巨体ってのはこういう時に便利ですね。そこそこ近い距離じゃないかな。少なくとも、ワタシの視力で解る程度の距離だし。……ん?ってことは、結構キャラベル共和国がこっちに突出してきてるんじゃね?引き込んだの?

 こっちの戦力で考えたら、押し戻すのも簡単だし、逆にぐいぐい押し込むのも出来そうなのに、何で?何であえて、こっち側で戦ってんの?ライナーさん、説明よろしく。


「おそらくですが、アルノー殿達に気づかれないように、引き込んでいるのでは?」

「あぁ、なるほど。陽動作戦みたいな感じですね。わかりました」


 それなら納得できる。わざわざアーダルベルトが出て行って、目立つ感じで大暴れしてるのも、それなら納得ですよね。アルノー達が兵糧を潰すまでの間は、こっち側に意識を集中してて貰わないとダメなんだ。だからわざわざ陣地の傍まで引き込んで、皇帝陛下御自らお相手してるってことっすか。わかりやすい。

 ……で、そのわかりやすい作戦に、まったく気づいてないんじゃね、キャラベル共和国?だって、どんどん敵がやってきてるもん。次から次へと兵士を送り込むのは、やっぱり、目立つアーダルベルトを討ち取るのが目的かね?確かに、頭を潰せば終わるし、アーダルベルト倒したらガエリア帝国を倒したになるよね。理屈は解る。解るんだけど、さ。



 キャラベル共和国が人種のるつぼだったとして、あの最終兵器(ラスボス)様をどうやって倒せると思うんだ。



 ぶっちゃけ、「伝説の武具装備した最強レベルのパーティーを編成しないと倒せない!」ぐらいの難易度でしょうが。ゲームプレイしながらいつも思ってたのは、「こいつが主人公で良いの?絶対死なない主人公過ぎて、危機感が薄い!」という感じだったよ。普通、主人公って最初は弱いのにね。アーダルベルト、最初からパーティーの盾が出来るぐらいにタフでしたよ。皇太子様のスペック間違ってた。

 とはいえ、迫る敵を延々と迎撃するという単調作業。これがあんまり続いたら、流石に向こうもこちらの思惑に気づくんじゃないかな?そうなるとちょっと面倒だろうし。アルノーもその部下も弱くないだろうけど、少しでも楽な方が良いだろうしなー。さて、どうするかね?


「……ミュー様、何か企んでおられますか?」

「別に企んでないです。お手伝い出来るかなーって考えてるだけで」

「はぁ、そうですか……?」


 何でそんな微妙に胡乱げなんですか、ライナーさん。ワタシのような戦闘能力皆無の小娘に、何が出来ると思ってるんですか。ちょっとお茶目するだけですよ。うん。ちょっとしたお茶目です。

 ごそごそとポケットから取り出したのは、ラウラがワタシに与えた試作品の魔導具。身につけても邪魔にならないように、と指輪型だ。指輪を右手の中指に装着すると、鎖が伸びてまるで手袋のように右手を覆う。……なお、この無駄に厨二病をくすぐる変形は、一応意味があるらしい。魔力を循環させて発動を補助させるため、というもっともらしい理由がある。あるけれど、このデザインは確実に開発者であるラウラの趣味であろうと思う。断じてワタシの趣味では無い!

 だって、金色の指輪から金色の鎖が伸びて、それが魔力を取り込んで手袋型に右手を覆うとか、完全に厨二病じゃないですか!誰だ!魔導具の開発はともかく、デザインまであいつに任せたの!どっかにあいつに対するツッコミいれないと、作成される魔導具が全部厨二病仕様になるじゃん!……お城に戻ったらアーダルベルトに進言しよう。デザイン担当必要ですぜ、覇王様…。

 つーわけで、試運転(テスト)やってみましょうか。ワタシ、一応魔導具の開発に関わる協力者(モニター)さんですのでな。右手に魔力を集中するイメージ。……一応、魔導具の起動には魔力が必要で、その扱い方も一応教えて貰いました。んで、制御(コントロール)には問題無いと言われました。魔力の含有量もね。……それで何で魔法使えないんだと、むしろ塔にいた魔導士連中に哀れみと驚愕の視線を頂きましたが。うるせぇ、放っとけ。



「……発動(ベヴェーゲン)、ブラスト!」



 発動目標は視認した場所、と言われていたので、真っ直ぐとその方角を見ています。えぇ、覇王様がドンパチやらかしてる最前線を見ておりますよ。んでもって、ワタシの魔力を吸って魔導具が起動し、発動キーワードを口にしたことで魔法が発動。いわゆる爆発呪文であるブラストが、目標である覇王様達のいる一角に、炸裂しました。

 ちゅどーんって感じ?いきなりの魔法攻撃にてんやわんやしてますね。敵味方問わずに。ついでに、その戦場を見ていた皆さんも大慌てしてますね。てへぺろ?まさか味方諸共爆発呪文ぶっ放すとか思わなかったようです。ははは、ヒトがゴミのようだ!みたいな気分?

 いや、皆さんが心配するほどじゃないですよ。これ、試作品の魔導具なので、威力がめっちゃ低く設定されてるんです。爆発呪文なので煙がもくもくしてたりしますけど、ダメージ殆どないと思いますよ。正規になったら、使い手の魔力に応じて威力が変更される仕様とかするらしいけど。今はまだ無理ぽ。


「……ミュー様、何やってらっしゃるんで」

「魔導具の試運転(テスト)。ついでに戦況に一石投じてみました」

「…あそこでは陛下が戦ってらっしゃるんですが?あと、ついでにエレンも」

「これ、爆発呪文だから見た目派手なだけで、ダメージ殆ど無いよ。あの二人がこの程度でどうこうなるわけないってば~」


 にへっと笑って見せたら、ライナーさんは諦めたように脱力してました。ごめん。でも、やる前に言ったら止められそうだったから。だって、試運転(テスト)したかったんだよー。あ、隣で見張りやってたお兄さんが、この世の終わりを見たかのような顔で、ワタシを見ている。あと戦場とワタシと両方見比べて、絶望してる。ごめん。慣れてないヒトの前でお茶目やり過ぎた。本当にすまない。

 いやでもね、心配ないと思うんだけど。あの最強無敵の覇王様が、この程度の爆発呪文でダメージ喰らうわけ無いじゃん。むしろダメージ喰らってたら、お前どうしたと聞きたいぐらいだ。

 実際、動揺する戦場の中で一人普通にしてた。めっちゃ普通に敵を吹っ飛ばしていた。その隣で俊敏に飛び回ってるのはエーレンフリートかな。アーダルベルトより小さいからわかりにくいけど。んで、覇王様、こっち振り返った。物見櫓にワタシがいるのは見えてるんじゃね?獣人(ベスティ)の視力なら楽勝だろ。



 んでもって、おもむろに頷くと、右腕を真っ直ぐ上げて、来い来いという感じで手首を動かしやがりました。



 おk、解った。二発目を希望だな、我が悪友(とも)よ。それならいっちょ、ワタシもお手伝いしちゃろーじゃないか。ダメージが殆ど存在しない爆発呪文を、敵への目くらましとか、動揺を誘うとかそういうのに使いたいんですね?俄然張り切った!


発動(ベヴェーゲン)、ブラスト!」

「ミュー様、何でもう一発撃ってるんですか」

「だって、アディが寄越せって言ってる」

「……陛下」

 

 隣で阿鼻叫喚に陥ってる見張りさんには悪いけど、ワタシは覇王様に要求されたので撃っているだけですよ。あ、連発おkっていうのラウラに報告しておこう。魔導具の回路に負荷がかかるかと思ったけど、短時間で二発目撃っても威力とか発動とか影響なかった。これなら、正規版に出来るのも近いんじゃないかな。楽しみ~。



 その後、更に要求されて数発ぶっ放した頃には、敵も(覇王様によって)壊滅していて、戦闘はこちらの圧勝で終わりました。



この参謀にしてこの皇帝あり。

というか、この皇帝にしてこの参謀あり、なのかもしれませんが。

威力が低いのでダメージはほぼありませんが、気にせず味方にぶっ放す辺りがミューちゃんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字脱字報告は、ページ下部の専用箇所をご利用下さい。(明確な誤字脱字のみ反映します)

lj0ckmqe5sj317f2bciyf3la82ir_yns_is_rs_7
双葉社Mノベルス様より書籍版全4巻発売中。

ヒトこのコミカライズ、「がうがうモンスター」で連載中。コミックス1~3巻発売中。4巻11月15日発売。
「ヒトを勝手に~番外編」番外編やってます。

cont_access.php?citi_cont_id=445315341&s最強の鑑定士って誰のこと?~満腹ごはんで異世界生活~
こんなんも書いています。書籍化もしてます。よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ