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ミューちゃんが遭遇した魔王とは?
頑張れミューちゃん。負けるなミューちゃん。
あ、ネット小説大賞に応募してみました。知名度アップしたら良いなー!(/・ω・)/
ワタシの絶叫に、眼前の絶世の美丈夫はきょとんとしたように瞬いて、そして実に楽しそうに微笑んだ。それはもう、楽しそうに。うん、漢字が違う。愉しそうに、だ。もうこれどう考えても愉悦の笑みだろう。しまった、目を付けられた。黙ってれば良かった……!
いやでも、何でお前がいるんだって言いたいんだもん!いや、いるのは解ってるけど。ここはこいつの領域だけど。でも、この時間軸だったらこいつは、《寝てる》筈なのに、何で起きてるんだよ!そこはシナリオ通りにしててよぉおおおお!
「私をその名で呼ぶ者が、十神竜以外にいるとは思わなかったな。流石は噂に名高きガエリアの《予言の参謀》殿」
ふんわりと微笑む姿は慈愛に満ちていて大変美しい。ワタシだって、画面越しにだったら目の保養をしたいぐらいだ。だがしかし、今、ワタシの目の前に、いるのだ。会いたくなかった相手。出来るなら関わりたくなかった相手。世界の根底すら揺るがすだけの力を持った圧倒的強者。人の世界に君臨する、全てを蹂躙するほどの力を有した、かつての魔王。
いやもう本当、こいつ魔王なんですよ。元魔王って呼ぶべきかも知れないんですけど、中身変わってないから魔王のままで良いんじゃないかなって思うんだよね!
「ちなみに、どこで私の正体を?」
「……この世界の過去についても多少存じ上げておりますので」
「それはそれは。……実に興味深い」
「いえ、興味など持って頂かなくて結構です!えぇ、もう、金輪際会わないという感じで、綺麗さっぱり忘れて頂ければと思います……!」
愉しそうな《彼》に対して、ワタシはぶんぶんと首を左右に振って切実に訴えた。本当に切実だ。こんなのに気に入られたくない。それなら、腹黒眼鏡ウサギにとっ捕まって小言言われてる方が全然マシだ。こいつはワタシの存在なんて、その気になればプチッと潰せるバケモノなのだから。
「ミュー様、理事長様のことをご存じなのですか……?それに、魔王、とは……?」
「エレオノーラさん、その件については黙秘したいんで、突っ込まないでください!切に!」
「え?あ、はい」
不思議そうに問い掛けてきたエレオノーラ嬢に、ワタシは腹の底から叫んだ。そこは突っ込まないでください。嬉々として奴がワタシに話しかけてきそうなので。ワタシは奴と関わりたくないのだ……!
……なお、ワタシの眼前で丁度良い玩具を見つけたと言わんばかりに眼を細めて愉しそうにしている絶世の美丈夫は、この学園都市ケリティスの理事長様である。世界の叡智を束ねる長殿で、まことしやかに不老不死が疑われている規格外の魔道士様だ。
理事長様としかゲームでも呼ばれていないが、1からプレイしているユーザーは彼の名前を知っている。彼の名前は、ワスタレス。……1のラスボス魔王様にして、2の主人公になって学園都市を作っちゃったという、色々アレな存在である。
ワスタレスは、人ではない。この世界に生きるありとあらゆる種族に該当しない、唯一無二の存在。彼は、この世界の創造神であるユーリヤ女神とその配下である十神竜の力を集めて生み出された、準神みたいな存在だ。不老不死もリアルに嘘じゃないレベルのバケモノである。
ちなみに、彼が魔王をやっていたのは、「何か暇だったから、とりあえず魔物束ねて世界征服でもやってみようと思う」みたいなふざけた理由だ。あまりにもふざけていた。息子の暴走に頭を抱えた女神と十神竜達は、地上に干渉しないという盟約から直接は行動が出来ないので、1の主人公に助力をしてワスタレスを倒して貰ったのだ。
とはいえ、女神の息子、十神竜の属性全てを有した、準神とも呼べる存在。そんなのを殺せるわけもなく、当人も別に世界に悪意があったわけでもないので、1の主人公に「そんなに暇なら、お前の持ってる知識を人々に分け与えて世界を満たせば良いだろう?全てを伝えるのには時間がかかるだろうから、退屈しないだろうし」と言われて、学園都市を造ることにしたらしい。
何だそれと言わないで欲しい。
ワタシも1のエンディング見て頭抱えた。魔王倒した筈なのに、その魔王が女神の息子だとか、殺せないとかなって、結果として世界に叡智を広げる役割を担うとか、どんなコントだ。しかも2でそいつ主人公にして、学園作る場所を探して三千里みたいなゲーム作るとか、スタッフ何がしたいのか解らない!
……そう、『ブレイブ・ファンタジア』シリーズにおいて3以降が特に愛されているのは、正統派RPG色が強かったからだ。1も確かに正統派だったけど、オチがいかん。オチが!倒した魔王のせいでコントに走って2に続くとか、本当に勘弁して欲しい。
……まぁ、当時は悲壮な展開のゲームが多かったらしくて、1の結末もそこからの2の流れも、逆に珍しいということで受けたらしいけど。……受けたからって、5の後半でまたこいつ出す必要無かったと思うし、今の時間軸は《寝てる》筈なんだから、ワタシとエンカウントしなくても良かったと思う。切実に。
そう、ワスタレスは定期的に《寝る》のだ。それはもうぐっすりと。人とは違う生命体なので、自分の眠りの深度や時間を調整できるらしく、数十年単位でぐっすりお休みになるのだ。
ちなみに理由は、「暇だから」という実に彼らしいものだ。
というのも、数十年単位で寝ていれば、起きたときにアレコレ進歩とかが起きていて、それを知るのが楽しいと気づいた、らしい。なので、数十年単位で《眠り》、気まぐれで起きてまたしばらくしたら数十年単位の《眠り》についている。それを繰り返すことで、退屈を持て余さず、再び世界征服とか阿呆をやることもなく、今に至る。
そんなわけで、ワスタレスは学園都市ケリティスの最高権力者である理事長様だけれど、彼と直接面識がある存在は片手で足りるらしい。秘書をやっている人ぐらいしか、多分直接顔を合わせていないだろう。学園の行事の時にはあらかじめ作製してある立体映像っぽいので対応してたはずだ。
え?そんな便利な魔導具あるのか?……門外不出っつーか、ワスタレス専用の魔導具ですよ。自分が《寝てる》間に変な用事で起こされないように、様々なバリエーション入力して作り上げたらしいですよ。才能の無駄遣い怖いよね!
まぁ、とりあえず、そんなわけだからこいつは今、《寝て》いなければおかしいのだ。なのに何で起きてるんだ。解せぬ。
「……一つだけ、お伺いしてもよろしいですか?」
「幾つでも」
「では……。……何で起きてるんですか。今は、《寝てる》筈なのでは?」
なるべく関わりたくはないけれど、どうしても確認しておきたくて問い掛けたら、ワスタレスは愉しそうに笑って口を開いた。……本当お前、愉しそうだな。ワタシはそんなに玩具の資格ありましたか?そんなもの、投げ捨てたいですけど。
そして、美貌の理事長様から告げられた、お答えは。
「一年と少し前に、揺らぎを感じて起きた」
「……え?」
思わず顔が引きつった。一年と、少し前。明確に何ヶ月前とか言ってないけど、真っ直ぐワタシを見ているワスタレス。……待って?こいつ起こしたの、もしかして、ワタシ???ワタシがこっちの世界にやってきたことで、こいつ起きたの?マジで?!
いやいやいやいや、そこは目覚めても、もう一度寝れば良かった思うんですけど!何でそのまま起きた!ワタシはお前と関わりたいと思わないし、何か凄い力を持ってるわけでもないんだから、感知されるわけがな……。
「その揺らぎで目覚めてから、未来が見通せなくなってね」
「……っ」
「そんなこと今まで無かったから、何か面白いことでも起きるのかなと思って起きていたんだ」
「………………さ、左様で、ござい、ます、か……」
にこにこと楽しそうに笑う美丈夫からすすーっと目をそらして、ワタシは片言で答えた。何コレ圧迫面接並みに重圧感じるんですけど。怖すぎる。やだ、こいつの顔見たくない。
……というかお前、未来わかるんだ……。あぁ、そりゃ退屈か。大きな流れがわかるなら、何が起きるか予想が出来る。そんな能力まで持っていたら、退屈で退屈で仕方ないかも知れない。だから数十年単位で睡眠と覚醒を繰り返すんだな。
つーか、そこまで見通せるなら、自分が魔王やったら女神達が困って討伐者がやってくるってわかってたんじゃないの?それも踏まえて、暇つぶしに魔王やってたの?そうだとしたら本当に性格拗くれまくってんだけど。
「勿論、元々全ての未来が見えたわけではない。ただ、世界の転機に繋がるような大きな流れは見える。……その流れが不明瞭になっていたら、興味が湧くだろう?」
「……ソウデスネ」
「だから、私が君に興味を持つのも当然だと思わないか?」
楽しそうなワスタレスから視線を逸らす。持つな。そこは持たなくて良い。確かにワタシがアレコレやらかしてきたのは事実だが、それが世界にどんな影響を与えてるかまでは知らない。ワタシはただ、相棒の死亡フラグをへし折りたいだけだ。確かにシナリオ改変しまくってるけど!
……うん、わかった。こいつに関しては保留にしよう。むしろ、せっかく起きてるんだから、活用させて貰おう。そうしよう。
「では、もう一つ質問しても良いですか?」
「どうぞ」
「イゾラ熱について記した文献はありませんか?」
「……」
世界の叡智が集う場所。そこの長であり、その知識はこの世界最高峰であろう女神の息子。まさか知らないとは言うまい。イゾラ熱がどんな病であるのか、この男が知らないわけがない。世界は全てユーリヤ女神が生み出して、十神竜と作り上げたものだ。その彼らから力と知識と知恵を与えられて生み出されたワスタレスに、知らないことがあるわけがない。
ロクサル教授が頭捻りながら引っ張り出そうとしても出てこないのなら、それだけレアな記述なんだろう。それでも、こいつなら持っている可能性はある。……いや、正直、文献が無くても、情報を引き出すことは可能だと思うけど。
そんなワタシに向けて、ワスタレスは楽しそうに笑った。それはそれは、楽しそうに。そして、謡うような口調で答えが突きつけられる。
「こちら側に、イゾラ熱についての記述は存在しない」
「……っ」
「おそらく、こちら側にイゾラ熱の文献が広がるのは、まだ随分先だろう」
「……広げるつもりも、ない、と?」
ギリギリ歯ぎしりしながら問い掛けたワタシに、ワスタレスはにっこりと笑った。それはそれは慈愛に満ちた美しい微笑みだった。……だが、ワタシにしてみればそれは、悪魔の微笑みだ。おのれ魔王。
未来を知っているワスタレスが告げた「こちら側」というのは、大渦よりこちら側ということだろう。大渦の向こう側には、イゾラ熱についての記述はある筈だ。あちらの風土病なんだから。だから、知識も文献も存在しているのに、こいつはそれを、こちらへ持ってくるつもりがないと言っている。
つまりこいつは、未来が見えているのに、アーダルベルトを救うつもりがないと、言っている。世界の転機が見えるというなら、ガエリア帝国皇帝アーダルベルト・ガエリオスの病死は、立派な転機だ。広大なガエリア帝国の滅亡と合わせて、世界を動かす大きな出来事だろう。
それがわかっていながら、いや、わかっているから、か。ワスタレスは明言した。自分には、自分達には、アーダルベルトを救うつもりがない、と。
あぁ、そうか。お前が、お前達がワタシの敵ということか……!
上等だ。相手が魔王だろうが神様だろうが、知ったことか。何が何でも情報、吐いて貰うからな……!
敵が強くても負けるなミューちゃん!
負けたら色々面倒くさそうだから頑張れ。
しかし味方は誰も役に立たないぞ!←ヲイ
ご意見、ご感想、お待ちしております。
あ、あと、しれっとお月様追加してるので、何でも許せる人はどうぞ。





