裏切り者とチャラ勇者
「ハルカナルさんっていい人ですよね。なのに私」
私の指示で夫に作らせた乳かけはエプロンドレスっぽく見えてデザインも良い代物だ。
ちなみに彼は裁縫もある程度こなす。音楽馬鹿で衣装を私に作らせようと何度もした所為でいい加減自分で作るように仕込んだからだ。
「うん? 」夫は相変わらず残念な男である。
「疑ってごめんなさいって」「ああ、良い良い。普通オカシイから」
夫はひらひらと手を振って薪を再び割り出した。
「私」「あ。黙っていても良いよ。俺も素性は黙っているし」
夫はそういうとまた薪を割る。綺麗に二つに割れた薪を夫は投げる。
「じゃ、素性を聞いていいですか? 私が話したいですし」「聞かなかったことにする」賢いな。お前。
彼女は孤児として生まれ育ち、奉公先の貴族の息子に見初められたそうだ。
彼女は妾になるのを拒み、彼から逃げんと首をくくろうとしたが。
「本気だって叱られて。それから」いつも優しく(今の彼女からは信じられないけど! )暖かく周りの気配り上手な彼女は主人たちの覚えもめでたく、地位は高いが実質地方貴族であった彼女たちの結婚を阻むものもおらず、彼女と彼は幸せに結婚を済ませ。
「ロリコン……」黙っててよ。良いとこなんだから。私は夫をたしなめる。
「なのに。私捨てられちゃったみたいです」彼女はそうつぶやいた。
「子供。彼に捨てられたと知ったのに。……嫌ですよね。私って」




