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私の夫は鼻先零ミリ  作者: 鴉野 兄貴
第三章 銀の瞳の赤子と少女

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花が咲いています

 今朝も寒いわよね。

私のフレームに夫の白い吐息が当たる。

「だなぁ。夢子」彼は新雪を掘って今朝のお湯の元とする。

「でもさ、みろよ」彼が掘り出した雪の下には早くも春の花が育っていた。

「もうちょっとしたらいい匂いがする花が咲くぜ」『花咲く都』を思い出すわね。


 そういって彼の両手は優しく花を包む。

こら。抜いちゃダメ。そう伝えると彼の表情が不思議そうになる。

「む? 暖かい部屋に移してあげようと思ったんだが」その種類はダメよ。逆に弱っちゃうもん。

そう伝えると彼はそっかと答えて作業を再開した。

流石に敵に場所がばれた小屋には何時までもいるわけにはいかず、子供の状態が安定した今は場所を移動している。

母子共々元気だけど難点は彼女の態度はまだ固い事くらい。

「おーい。花だ花だ。もう花が咲いている」それでも夫の言葉に反応したり返事したり笑ったりはする。元々は愛想の良い子だったらしいけど。


「綺麗ですね」「うん。まぁ君ほどではない」こら。余計なこと言うなバカ。

夫の冗談に儚く微笑む彼女は告げる。

「こんな冷たい雪の下で小さくても強く咲いている。私と大違い」そうかしら?

「そうか? 君は強いだろう。俺は子供産めないし」「当たり前です」夫の言い分ってどうもボケが入るのよね。

「裏切られても悲しくても生きていかないとダメですよね」そうね。夫がバカで阿呆で浮気者でどうしようもない音楽馬鹿の放蕩者でも生きているのだけは。

「夢子が苛める」夫が急に落ち込みだしたので戸惑う少女。こら。しっかり立ちなさい。私の所為だけど。


「そういえば」夫が呟く。

「俺、実は歌うたいなんだぜ」「嘘つき」本当さ。

夫は雪原の上で春を称える歌を歌いだした。

「冬の魔王が立ち去って 春を呼ぶ乙女と夏の青年が目を覚ます。

花咲く香りに目を覚まし 谷は雪解け春を待つ。さぁ歌いましょう 春の訪れを♪ 春は隠れ家から小さな顔をだし 夏は飛び出すときをまつ。夏が少し顔を出せばその次はあっというまの秋の空♪」


 しばし時を忘れて聞いていた。

夫は下手だけど楽しそうに歌う。

「素敵な歌声でした」しばしして拍手がなる。

少女の抱く赤ちゃんは機嫌よさそうにしている。


「そのうち、この雪原も花畑になるよ」夫は楽しそうに返答した。

そうなると。いいなぁ。

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