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私の夫は鼻先零ミリ  作者: 鴉野 兄貴
第三章 銀の瞳の赤子と少女

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秘密の娘

「動ける身じゃないだろ。大人しくしているといい」


 またか。私の探知に引っかかったお馬鹿さんたち。数は一〇人ほど。

最近数が減ってきたんだけどまだまだね。私は上空からの画像、敵の身体能力や魔力所持量、装備などを手短に表示し、敵の襲撃に備える。

「油を持っているのか。耐火結界をかけておく」夫が私のレンズ越しに揺れる炎を睨み、ふうと強力な息吹を放つ。


 あっという間に暖炉の火が消え去り、同時に明かりが消える。

しんしんと音もなく降り注ぐ雪に臭いも味覚も閉ざされ、

接近に気付かないと思うのはあちらの油断ね。何度来ても同じよ?


 夫は彼女と赤ちゃんに耐熱結界をかけた毛布をかけ、

『眠り』の術をかける。楽しい夢が見れる術だ。

「ゆっくりお休み」彼は赤ちゃんに優しく微笑む。


「さて」


 雪原に似合わない猛虎の威圧感をもって彼は打って出る。

突如扉が開き「やぁ」と手を振って嗤う彼に戸惑う暗殺者たち。

「お前ら、懲りないな。いい加減にしないとダメだって言ってるだろ」まぁ殺していないから仕方ないわよね。

何人か粛清されたっぽくてメンバーチェンジしているけど私の所為じゃないし。


 翌朝、少女が目を覚ますと夫は何事も無いかのようにスープを作っていた。

「ハルカナル。おはようございます」「よ。えっと……」マキちゃんよ。いい加減覚えてあげなさい。「マミチャン! 」ダメだコイツ。


 少女が口を膨らませる。

「マキです」「えっと、薪がどうしたって? まだあるよ? 」こら。ボケるな。

「ほら、刺激物が無いように作ったつもりだけどダメなら遠慮なく吐いてくれていい」夫は妊婦向けの料理を作ってみせる。意外と手先が器用な男で料理も得意なのだ。

「赤ちゃんは無事だから安心していい」カンの良い子で助かるわ。朝日の小さいころは泣き虫で困ったもの。

「男だな。なかなか立派だ」何見ている。馬鹿。

そのやり取りをみて彼女は頬を赤らめる。

「で、事情をまだ話してくれないのかな」

夫の問いかけに彼女は首を振ってみせた。

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