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私の夫は鼻先零ミリ  作者: 鴉野 兄貴
聖女と魔女と勇者と眼鏡

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第二章 エピローグ 花咲く都の聖女

「旦那。旦那」


 おじさんの声で私の意識は再び小さな眼鏡の中に。

「つきましたぜ。あれが『花咲く都』でさ」

馬車は整備された道の上を走る。スプリングシャフトがついた馬車は可也快適で馬車に乗った子供たちがはしゃいでいる。


「うーん。やっとついたかあ」居眠りを楽しんでいた夫は大きく伸びをした。ずり落ちかけた私を彼の指先が優しくつまみ鼻先に戻す。

「『花咲く都』にやっと来たっ 」「とおちゃん。あれが都ッ?! 」

整備された街道はとても清潔かつ治安がよく、魔物も山賊も出ない。結果的に人々の交流も豊かだ。


「今代の聖女様は本当に有能な方だからね」「へぇ」


 うっとりとするおばちゃん。

なんでもこの国では聖女と言うのは女性の憧れであるらしい。

「聖女『マナ』と言えば近隣諸国にもその名を轟かせる人でね。医療に力を入れているんだ」「そりゃ立派だね。医者は育てるのが大変って言うし」「魔導士も良いんだけど医者の力って重要だよ。素養が必要な魔法が無くても怪我や病気を治せるってのは」


「治安維持にも貧困対策にも自ら足を運ぶ熱心さで」商人のおじちゃんが誇らしげ。自分の娘みたいに。

「もう、聖女様の為ならなんでもするね! 俺たちッ 」あはは。


 城門をくぐると華やかな香りの花弁が私たちに降り注ぐ。

「ようこそ。旅人さんたち。『また会いましたね』」

城門の上から華やかにほほ笑む『聖女』は私たちの知る少女だった。


 伝説に曰く。

勇者は瓦礫の中、風のように舞い降りる。

嵐のように戦い、夢と希望をつむぎだし。

朝日とともに帰ってきて爽やかに微笑む。


 夫は今日も旅を続け。私は彼の鼻先で揺れる。

私と夫の距離は何時だって『鼻先零ミリ』。

なのに、どうしてこんなに遠いのだろう。

「朝日ッ 未来ッ とおちゃんは必ず夢子と一緒に帰ってくるからなッ 家をしっかり守って頑張れよッ」

彼の瞳の先には、なにが映っているのだろう。その先をいつも私は見守っている。

「おい。愛しているぞ。夢子」バカ。ウソをつけ。

「ウソじゃないって」ば~か。

山を跳び、谷を飛び越え、川を走って楽しそうに呟く夫の瞳の先には、

何時だってキラキラとしたオオゾラが見えている。

 私の名前は旧姓白川夢子。現在遥夢子。

夢を追う者を守り力を与え導く『真実の眼鏡』とは私の事だ。


(第二章。了)

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