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私の夫は鼻先零ミリ  作者: 鴉野 兄貴
第二章 花咲く都の聖なる乙女

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天使の祝福(※ なわけがない)

「こ、この人はッ 」「これはいったいっ?! 」

パニックを起こすマナちゃんとその両親。しまいには変なことを呟きだす。

「この現象はかみさまだッ かみさまの力だッ そうに違いない」ご両親はまぁ解るんだけど。


 キラキラキラキラ。少女漫画もビックリの美男子を見たマナちゃんの頬は一気に朱が差していく。

寝起きにはそれはそれは刺激が強すぎる。服と言うのも憚られる粗末な布しか纏っていない娘には尚更だ。

「あ、貴方は……まさかッ?! 天使様ですねっ!! そうですねッ 」

いや、残念な中身エロ魔人だ。


 騒ぐ三人に夫は平然と秘密をしゃべりかけた。

「いんや。勇」だまれえええええええええっっ?! また逃げる羽目になるだろうがッ?!!!!!!!!!!!!!!

異臭ただようあばら家で夫は表情を改めて少し威厳のこもった言葉を放つ。


「ええ。私は天使です。心正しい少女に祝福を授けに来ました」

ウソにもほどがあるが、夫は実に平然とそう答えた。平伏する三人。

「天使様が娘を娶りに」「ありがてぇありがてぇ」「天使様。私たちを導いてくださいませ」

なんか。なんか多大な誤解受けていますよ?! 天使が女の子を娶りにくるとか?!


「え~と」


 戸惑う夫。三人の名前を知らないからだが戸惑うべきところが違う。

「夢子。この子誰? 」はぁ。ダメな子。「誰がダメな夫だ」もういい黙れ。

マナちゃんというの。世話になったんだから挨拶。


「マナ。私の夢……眼鏡を大切に守ってくれてありがとう。助かりました」

と、犯人は意味不明なうわごとを口にしており。

「心正しき娘を育てし親御さんにも祝福を」夫は適当に声をかけるが、二人は『奇跡だッ 』と大声で抱き合い、涙を流しあっている。

完璧に誤解されたわね。コレ。どうするのよ。というかまた女の子ひっかけちゃって。

夫が年齢を顧みない残念な子なのは今更だが、

さすがに天使を名乗るのはない。この世界は迷信深いのだ。


 夫の言葉に感激し、これからは妻子を大事にして、心改めて仕事に励むと誓ったマナちゃんのお父さんに夫は祝福を与える。

「では、その呪いは天使の名のもとに祝福となりました。今後は二人を精いっぱい守るように」

言外にマナちゃんのお父さんに以前私がかけた『真面目に働いて家にお金を入れないと勃起不全になる呪い』は解かないと告げる夫。アンタは鬼だ。私も激しく同意だけどね。

あれだ。へたくそな音楽をやめて家に金を入れる呪い、元の世界でも使いたいんだけど。


 そう思っていると夫の肩ががたんと落ちた。

「それだけは勘弁」なによ。いいじゃない。

まぁ私はあんたの歌、嫌いじゃないけどね。

「心正しき娘を育てし母にも祝福を」

夫の手のひらから温かな力が彼女に注がれる。

単純に体調を改善する効果のある能力だが、身体の弱っている女性には絶大な効果がある。

ましてやファンタジーな世界の人たちには効果は奇跡のように感じるだろう。

「さ、帰ろう」旅を続けると夫は私に告げる。

なんか納得がいかない。あんた、私の心読めるんだろ。

私の現状も判っていただろうに何遊んでたんだ。

「ん? 夢子が人の役に立ちたいって言ってるようだったから」思っていません。戯れよ。戯れ。


 私をそっと指先で支えながら駆ける夫はこう呟いた。

「戯れでも、誰かの役に立ったのは事実だろ。

あの子は、絶対イイ医者になるよ」そうかしら? 私はあの子に迷惑をかけたと思うんだけど。

それだけじゃなくて、癒し過ぎで患者になる人たちも怒っていたわよ。


「怒ったりさ、憎んだりさ、その場その場で人の気持ちは変わるだろさ。

俺たちだってそうだったろ? でもウソをついて『好きだ』っていう」

その場の気持ちが判るからって、人間の心が判るとは限らないだろと夫は呟いた。


 眼鏡の今は、人間の揺れ動く心が判りにくい。

そんな私のレンズ越しに夫は世界を見つめる。

「だからこそ、人は毎日恋ができるんだよ」

毎日浮気しているような気がする。

うちの夫は。ひたすら残念な人である。

夢溢れる大空の元、私たちは魔王の首を求めて歩く。

私は旧姓。白川夢子。勇者の瞳を守り、力を与える『真実の眼鏡』とは私のことである。

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