第93話 クリフレッドは底が知れず
「【暗黒七星】」
ブルーティアが纏う闇の炎が星の如き輝きを放つ。
瞬時に闇の七連撃が放たれる。
奴を守る鉄壁と言う名の自然の壁。
【暗黒剣】最上位クラスの技ならどうだ?
「むっ?」
黒き七星は出現する岩を砕き、クリフレッドの体を捉えようとしていた。
しかし――
大地から蔦が生え、暴風が吹き荒れ、自然発火した炎、それらがこちらの攻撃を阻止する。
「おいおい。今の攻撃さえも防いでしまうのか」
『想像以上でございますね……』
「君たちの方が想像以上だ。俺を守る岩を砕いた者など、未だかつて一人としていなかったのだからね」
クリフレッドはそう言うと、右手をこちらに突き出した。
同時にボンボン! と空気が破裂し、俺の体を襲う。
障壁によって届きはしなかったものの、凄まじい威力。
勢いよく俺の体は後方に吹き飛ばされた。
「そうか。今のでも通用しないか」
「まだ余裕があるような言い方だな。お前に今以上の手があるとでも言うのか?」
「勿論、あるよ」
「え?」
クリフレッドは穏やかに微笑み、すっと目を閉じる。
「な……なんだ……?」
『大気が震えている……?』
ゴゴゴと微かに大地が揺れ、空気も振動しているようだった。
奴は熱波を発すると共に、冷気さえも発しているようだ。
クリフレッドの体から熱と冷気、それが代わるがわる連続で発生している。
そうしていると揺れも振動も熱波も冷気もピタリと止まり――
クリフレッドに信じられないような変化が訪れる。
「あ、あれは何だ……?」
『申し訳ありません……私にも理解できないものでございます』
クリフレッドの背後……いや、もう背後なのか上なのかも分からない。
とにかく、奴の後ろには半透明の巨人が現出していた。
それは巨大で、洪大で、膨大。
指先だけで俺の体の大きさがあるのではないだろうか……
上半身しか無いが、人の形をした何かが、奴の背後にそれが現れた。
「これは俺の意思に従い、自然が集まり具現化したものだ」
「自然の具現化……」
「ああ。俺が君を倒すという意思に従って形作られたもの……俺は【穏やかなる死を】と呼んでいる。要するに、君を倒すのにこれだけの力が必要だったというわけだ」
「俺に勝てるとでも言いたげな説明だな」
「こちらはそのつもりだけど?」
「そうかいそうかい」
俺はジリジリと首筋に焦りのような物を感じつつも、ブルーティアの柄部分で肩をトントンと叩き――
一気に飛翔する。
「こちらもお前に勝つつもりだけどな」
◇◇◇◇◇◇◇
「はぁはぁ……」
ボランはモンスターを蹴散らしながら、ロイとブラットニーの戦いに視線を向ける。
「つ、つええ……強すぎんだろ……」
そして一方的なその戦闘に驚愕していた。
「……お前じゃ俺には勝てな、い」
「くっ……」
一方的なのは、ブラットニー。
ロイの力はまるで歯が立たない。
右の拳を振るうが、ブラットニーは足元の影を狼に変化させ、それを迎え撃とうとする。
「う!」
ロイは咄嗟にそれを避け、相手の左側から接近しようと試みた。
が、ブラットニーの左腕が影に変化し、ロイの動きを阻止する。
「む、だ」
ガバッと影は狼の形となりロイに襲い掛かり、なんとかそれを回避した。
ブラットニーは地面に膝をつくロイにゆっくりと近づき、蹴りを放つ。
「がはっ!」
激しい威力に転げ回るロイ。
赤い血を吐き出し、息を大きく乱している。
だがまた立ち上がり、ブラットニーを睨み付けた。
「……お前ほど無駄なことをするやつ、初めて見、た」
「……あなたは、何のために戦っているんだ?」
「俺は、クリフレッドのた、め。あいつを世界の王にするためだけに戦ってい、る」
「……やっぱり、僕は負けるわけにはいかない。何かを得るために戦うあなたに、絶対に負けない……僕はみんなを守るために戦っているんだ。仲間を、町の人を、大事な人を! その全てを守るために命をかけているんだ!」
ロイは走りながら【回復】で自身の体を素早く癒す。
傷がある程度回復したところで、上空に飛び上がる。
「【覇光拳】!」
光を宿した拳でブラットニーの顔面を狙う。
だがやはり、彼の前に現れる影によってそれはあっさりと阻まれてしまう。
また先ほどと同じように、ブラットニーの側面から狙うロイ。
「【連牙拳】!」
高速で放たれる幾重もの拳。
ブラットニーはそれら全てに反応し、左手だけで全てを防ぎきる。
「同じことの繰り返、し。もう飽き、た」
「がっ――」
槍のように突き刺す蹴りが、ロイの腹部に突き刺さる。
大袈裟に吹き飛び、両手を地面に着くロイ。
「もう止めろ! 俺が今から代わりに――って、こっちに来過ぎなんだよ、ああっ!?」
ロイに代わりブラットニーと戦おうとするボランであったが、津波のように襲い来るモンスターに手間取り、助太刀にも行けないでいた。
「大丈夫です……僕が、僕がこの人を倒してみせますから!」
そう言ってロイは飛翔し、ブラットニーに飛び蹴りを放つ。
「だから、もう飽き、た」
「――えっ?」
バクン!
と、ロイの右脚は影に喰われ――
膝から下を失ってしまう。
「う……うわあああああああああ!!」
ドバドバ血が大量に吹き出し、痛みと足を失ったことにロイは悲鳴を上げた。
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