第92話 ロイはブラットニーに立ち向かう
「すいません! 修行に行っていて遅れました!」
敵を吹き飛ばしながら駆けつけて来るロイ。
その姿にカトレアとローズは仰天している。
ボランはロイの登場に胸を熱くさせていた。
「てめえ……いつの間にそんな強くなったんだよ、ああっ!?」
「ア、アルさんに特訓を付き合ってもらってて……それに、自分だけでも修行してました」
傷だらけのロイの拳を見て納得するボラン。
こいつはもう一端の戦士だ。
守られているだけだった頃のあの頃とは違う。
仲間たちを守るために、戦うためにここに来たんだ。
「ジオ連れて下がって、みんなを守れや!」
「え……?」
「相手は四害王だ……てめえが強くなったといっても相手が悪過ぎんだよ! 下がって自分のできることしろ!」
「ボランさんが相手するって言うんですか?」
「あたりめえだろ! ああっ!?」
「でも、傷だらけですよね」
ロイの言葉に一瞬詰まるボラン。
しかしいつものように声を荒げて続ける。
「傷なんて関係ねえんだよ! 俺が全部守る! それだけだ!」
「……僕も、同じ気持ちです」
キッと意志を秘めた瞳でブラットニーを睨み付けるロイ。
ボランはたらりと汗を流し、ロイの両肩を掴む。
「バカな真似すんじゃねえ! あいつは俺が相手する! てめえも俺が守んだよ!」
「だから、僕も同じ気持ちなんです」
「ああっ!?」
「僕だって全部守りたい……この燃え滾る熱い想いを僕に与えてくれたボランさんだって守りたいんです」
「てめえが俺を守るだと!? あんな絶望的に強い奴相手に、どうやって俺を守るってんだ!?」
「絶望なんて、関係ないですよ」
ボランの手をゆっくりとどけ、ロイはブラットニーの方へと歩き出す。
「お、おい!」
「それを教えてくれたのは、あなたです」
「っ……」
ボランは静かに燃えるロイの想いを感じた。
もう、俺にはあいつを止めることはできねえ。
そう感じたボランは、黙ってロイの背中を見つめていた。
「ロイ! やめるんだ!」
「そうだよ! 君が戦えるような相手じゃないんだよっ!」
ローズとカトレアの言葉を無視し、ロイは歩み続ける。
そしてブラットニーの目の前で、奴と対峙した。
「……何、だ?」
「あなたを……倒す」
「……む、だ」
「無駄かどうかは――やってみないと分からない!」
瞬速の拳を突き出すロイ。
ブラットニーは予想外の速度に、顔面に直撃を喰らう。
「「「!!」」」
ロイの攻撃が決まったことに、驚愕するボランたち。
ボランはロイから視線を外すことなく、ジオを担いで後方へと下がる。
「意外とやる、な」
ロイは深呼吸し、ブラットニーに対して力強く構える。
「アルさんの弟子にしてボランさんの弟子――ロイ・ロンドニック。この拳であなたを打ち倒してみせる!」
◇◇◇◇◇◇◇
ブルーティアのアローモードでクリフレッドの頭部を狙う。
しかし、大地から突き出す岩に矢は弾かれてしまった。
「何もしなくとも世界が守ってくれるとは……俺がいうのもなんだけど、相手も大概チートだな」
『それはご主人様の所有物として、負けていられませんね――【フレアバースト】』
ブルーティアから炎の弾丸が放出され、前方が炎の海と化す。
クリフレッドは飲み込まれたはずだが――
「……また効果なしか」
「ふっ。君がアルベルトか。ブラットニーから話は聞いているよ」
「俺もお前の噂は聞いている、統率のクリフレッド」
爆炎を纏ったブルーティアで斬りかかるが、信じられないほどの風圧が奴の前に生まれ、それを阻止してしまう。
「モンスターを率いる王……だから統率という二つ名を持っているのか」
「違う」
クリフレッドが右腕を前に突き出すと、俺を襲う様に風が爆ぜる。
だがブルーティアの障壁によってこれを防ぐ。
「おっとっと。凄まじい威力だな」
クリフレッドは俺が無事だったのを見て、美しい顔をキョトンとさせていた。
そしてクスリと笑い、話を続ける。
「俺に付き従うように自然が統制を取って力を貸してくれる。その姿を見た誰かが言い出したのさ。自然をも統率する魔族、とね」
バッと左腕を振るうクリフレッド。
すると大地から岩が俺を襲うために、巨大な槍の形状となり突き出してくる。
これを飛んで避け、ショットガンモードでクリフレッドを狙い撃つ。
「君は面白い武器を持っているんだな」
「神剣ブルーティア。この力があれば、お前を倒すことができる。俺はそう信じている」
散弾は飛翔していくが、クリフレッドの前に現れる岩に全てを防がれてしまう。
相手の厄介さにやんわりとした焦燥感に襲われるが、それと同時に胸を熱くしていた。
強敵を相手に胸が躍っている。
俺はいつの間にこんなタイプになってしまったのだろうか。
自分が強くなったからこそ、その力を全力で振るえることに喜びを感じてしまっているのだ。
そしてクリフレッドも似たようなことを考えているのか、透き通るような綺麗な笑みをこちらに浮かべていた。
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