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第87話 ライオレッタはクリフレッドを想う

「【サンダーウィップ】!」


 ローズはツヴァイクの背後から、電気を帯びた鞭を振るう。

 これを喰らえば大抵のモンスターは痙攣を起こし、身動きが取れなくなってしまうのだが――


 背中に直撃したツヴァイクは、傷を負うものの、麻痺を起こすことはなかった。


「四害王ともなれば、そうそう簡単に止められるものではないな」

「おい! そいつに傷を負わせんじゃねえ! こいつは血を流せば流すほど強くなんぞコラッ!」

「何!?」


 するとツヴァイクの頭上に血が集まり、球体となる。

 ローズはそれを見た瞬間、一瞬心臓が止まるような感覚を得て、飛び下がった。


 球体から放出される幾重もの血の閃光。

 ビュンビュン大地を走るそれは、周囲を不規則に薙ぎ払う。


「なんだよこりゃぁ!?」


 ボランは盾でジオを守りながら閃光を耐える。

 それは凄まじい威力で、踏ん張るボランだったが、あっさりと吹き飛ばされてしまう。


「クソッ! だけどな、やられっぱなしじゃねえぞコラッ!」


 鎖を現出させ、盾を放り投げるボラン。

 

「無駄なのである」


 しかし、それを目の前に血の盾を創り出し、易々と防いでしまう。


「んだよ! もう攻撃は喰らわなくていいのか? ああっ!?」


 盾を戻しながらボランは吠える。

 それとは対照的に、至極淡々とツヴァイクは答えた。


「貴様らを倒すのに十分な血液を流したのである」

「なめんじゃねえ……俺らはそんな簡単にやられねえぞ!」

「そのとーり!」


 宙を舞いながら、カトレアが弓を連射する。

 それら全てを血の盾で防いでしまうツヴァイク。


「あれ? 不意打ちだったのに効果なし?」


 冷や汗をかきながらも、カトレアはジオに回復魔術を施す。

 傷が治り、サッとツヴァイクとの距離を取る。


「ついでに【補助】もサービスしとくよ~っ!」


 ボランたち全員に【補助】を使用し、能力の底上げをするカトレア。


 それを察知した瞬間、ドンッと加速するジオ。

 続いてボランが盾を振り回しながら近づいて行く。


「ありがてえ! これならこいつに勝てる!」

「勝って町を守んぞコラッ!」


 ◇◇◇◇◇◇◇


 ライオレッタは元々オーガと呼ばれるモンスターだった。

 血の気の多いオーガの中でも、特に気性の荒かったライオレッタは、いつしかはぐれモンスターとして、自由気ままにいろんな場所へと渡り歩いた。 


 道中で出会う他のモンスターや人間たちとの戦いで、彼女はその力を練り上げる。

 昨日よりも今日。今日よりも明日。

 一日一日、強くなり続けてきた。


 そしていつしか、ライオレッタは進化し、見た目は【神】に近づくことになり、

 『神の似姿』とよく言われている人間と似た姿かたちになった。

 見た目だけで言えば角が二本生えてはいるものの、美しい人間の女性にしか見えない。


 彼女のこれまでの生き方は、ただ純粋に強さを追い求める、それだけであった。

 ライオレッタはそれ以外は何も必要としていないし、大事なものなども何一つなかったのだ。

 自分が強くなる様が、ただただ楽しかった。

 己に屈服する強者。さらに縮こまる弱者。

 強くなればなるほど世界が変わっていく。


 単純に、趣味のように強くなることを楽しんで生きてきた。


 だがある日、彼女はクリフレッドと出逢うことになる。

 強くなり続け、普通の人間程度なら1000人とも戦えるようになっていた頃のことだ。

 

 そんな彼女を傷つけることなく、大地に押さえつけてしまうクリフレッド。

 優しく、怪我をしないように、柔らかく彼女の頭を押さえつける。


「もういいだろ? 君では俺には勝てない」

「……いつか、てめえに勝つ」


 クリフレッドは穏やかな笑みを彼女に向ける。

 そしてライオレッタは――


 生まれてきてから初めて、他人を好きになるという気持ちを知った。

 その圧倒的な強さと魔族とは思えないような優しさに心を奪われたのだ。

 最初は戸惑うばかりであったが、いつしかこう思うようになっていた。

 クリフレッドのために何かしてやりたい。


 強さだけしか無かった彼女の心に、いつの間にかクリフレッドは住みついてしまっていた。

 

 今ライオレッタにとって大事なこと。

 それは……強くなること。

 そして、クリフレッドが喜ぶことをしてやりたい。


 クリフレッドが戦いを望んでいないことを分かってはいたが、強さを求め続けてきた彼女にはその心が理解できなかった。

 戦いこそが、魔族の本質。

 戦いの果てにある世界を掌握することこそが、魔族に与えられた使命であるというのに。

 だから彼女は、クリフレッドのために世界を取ろうと考えていた。


 そして今、ようやくそのための戦いができることに、無上の喜びを感じている。

 クリフレッドに世界を与えることができるのだ。


「ふっ……」


 ライオレッタはエミリアと剣を交わしながら、不敵に笑みをこぼす。

 オレは四害王の一人だ。

 戦いの歴史しかないオレが、こんな子供みたいな奴相手に負けるわけがない。

 そう思案し、小さなエミリアを大きな態度で見下ろしている。


「んだよ。余裕のつもりか?」

「いや。勝つのはもう決まっているからな。余裕以前の問題だ」

「なるほど……なら、余裕ぶったまま死ね」

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