第84話 ボランたちはツヴァイクと対峙する
「アーチャー部隊! 撃て!」
「いっくよ~、みんなっ☆」
カトレアを筆頭に、【アーチャー】系統の弓使いたちが天に向かって弓を引く。
「【アローレイン】!」
天へ飛翔した矢の数々は、何倍の量になってモンスターのみに降り注ぐ。
矢の雨に絶命していくモンスターたち。
しかし敵の数が多すぎる故に、大して減ったようには見えない。
「続いてマジシャン部隊! ぶちかませ!」
「「「イエスマムッ!!」」」
火、水、風、土、四属性の魔術が一同に開放され、放出されていく。
これも数多くの敵の命を奪うが、やはり敵の数が減ったのか分からないほどだ。
敵の数は万単位でいるだろう。
圧倒的な数の暴力。
絶望としか言えない数の差。
しかし、ローランドの冒険者たちは誰一人として諦めたりはしていない。
自分たちを信じ……そして、仲間たちを信じているからだ。
「行くぞ、みんな!」
「おう!」
それは元落ちこぼれ組と呼ばれた男たち。
ローランドの冒険者の中でも最強クラスに位置する者たちだ。
彼らは武器を片手に、勢いよく敵を切り伏せていく。
後方に位置する元落ちこぼれ組の者も、周りの者たちよりも強大な魔力で援護する。
「これがあの『落ちこぼれ組』の奴らかよ……本当に強くなったな」
「……悪かった。今までバカにしてよ」
「悪いと思うなら、一緒に全力を尽くして町を守ろう」
「……ああ!」
彼の言葉に奮起し、魔術師たちは大きな魔力を練り上げていく。
「行くぞ! 【ファイヤーストーム】!」
いくつもの炎のうねりが発生し、モンスターたちを飲みこんでいく。
炎に焼かれ、消し炭になり、風に乗って天へと昇る。
「アルベルトファミリーも負けてらんねえ!」
「よっしゃー! 突撃だ!」
ジオ率いるアルベルトファミリーの面々が、猛スピードで敵を抹殺する。
以前とは比べ物にならないほど速くなったジオの動きから繰り出される【バインドエッジ】。
モンスターは次々と麻痺をしていき、続くアルベルトファミリーの刃がそれらを葬っていく。
「やるじゃねえか、ああっ!?」
「あったりまえだろ! 適当な仕事してたら、姐さんにどやされるし、アニキに面目が立たねえ!」
ボランの腕に光の鎖が発生し、それは盾と繋げられている。
それをブンブン振り回し、盾を投擲し、モンスターの頭部を破壊していく。
「面目か半目かどうかしらねえけどよ、みんな守る方が大事だろうが! ああっ!? そんなんじゃいつまで経っても俺には敵わねえぞ!」
「……そ、そんなことは分かってんだよ! 俺だって今は、みんなのために戦ってんだ! 俺ができる限りの数を減らして、みんなの負担を減らす! お前は仲間たちを守ってくれ!」
「おおっ! 任せとけ!」
ジオは敵の隙間を風のような速度で走り抜ける。
そしてところどころ、大地に手を添えていく。
ジオの添えた手の跡には、何か魔力の塊のような物が発生していた。
「喰らえ! 【バインドトラップ】だ!」
敵がそれを踏んだ瞬間――周囲に稲妻が走り、複数のモンスターが痙攣を起こし出す。
これは【シーフ】の上位職である【ローグ】のスキルだ。
罠は着実に発動し、それに巻き込まれたモンスターたち。
ローランドの仲間たちは、動きの止まった敵へと追撃を仕掛けていく。
「助かるぜ、ジオ!」
「サンキューな!」
「おお! いいってことよ!」
いつの間にか、仲間たちから信頼を寄せられるようになっているジオたち。
その彼らの反応が嬉しく、アルベルトファミリーの皆はさらに気分よく力を振るう。
今までクソみたいな俺たちだったけど……
今はこうして頼ってくれる仲間たちがいる。
もうあの頃には戻らない。
仲間たちと共に、これからも前に進んでいく。
何十倍という数の差を、正面からぶつかり押して行くローランドの冒険者たち。
このままの勢いなら、勝てる。
だが、そう思った時――
「な、なんだ!」
周囲のモンスターとは比較できないほど禍々しい空気を吐き出す魔族が一人、遠くから宙を浮き現れる。
それは鮮血のツヴァイク。
彼はジオたちを冷酷な瞳で見下ろしていた。
「こいつは俺に任せろ! みんなは雑魚を頼む!」
「おお!」
ジオがその男と静かに対峙していると、ボランも人相の悪いその顔で、敵を睨み付ける。
「誰だてめえ……ああっ!?」
「……貴様らを屠る者である」
「上等だ……逆にコテンパンにのしてやんぜ!」
「簡単に勝てると思ってんじゃねえぞコラッ!!」
盾を構えるボラン。
ツヴァイクの動きを目で追いつつ距離を少しずつ詰めて行く。
しかし、相手は動くような気配を見せない。
ボランは怪訝そうにツヴァイクの表情を視認する。
まるで幽霊のような顔……
生きているのか死んでいるのか……動いているし喋ってもいるから生きているのだろうが。
とにかく生命力を感じない。
死んでいるようで生きているような生物。
「隙だらけだぜ、てめえ!」
ジオが背後からツヴァイクの背中を斬り付ける。
あっさりと攻撃が通ってしまったことにキョトンとするジオ。
相手は地面に落ち、ピクリとも動かなくなってしまった。
背中からはドクドクと血が流れ出ている。
「え……雑魚だったのかよ、こいつ」
「油断すんじゃねえ! 何か、嫌な予感がすんぞ!!」
「…………」
血を流し続けるツヴァイクは、地面に倒れたまま、くつくつと笑いだす。
ゾワッと背筋に寒気が走るボランとジオ。
周囲のやかましいぐらいの戦いの音が遠のいていくような感覚を得て――
静かに起き上がるツヴァイクの足音が聞こえてくるようだった。
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