第83話 戦闘は開始される
マーフィンを背にしエミリアを筆頭とした大勢の冒険者が桁違いの多さのモンスターたちと対峙していた。
だがその数の違いに怯えている者は少ない。
恐怖とは逆に、自身に満ち溢れ、血が滾るほどに燃え上がっていた。
「デイジー! 私は指揮とかそういうのは得意じゃないから、後の事は全部任せたぞ」
「う、うん!」
エミリアの言葉に頷くデイジーは、まるでカチッとスイッチが入ったように、全員にテキパキと指示を出し始める。
「【ハイプリースト】の方々は、二組に分かれて下さい。一つは後方支援。もう一つは町を守るための【結界】を張ってください」
「あ、ああ」
そこから即席の作戦を皆に伝えていき、デイジーの指示に従う冒険者たち。
デイジーの訓練を受けた者も多く、彼女の言葉に反する者は少ない。
いや、むしろ喜んでデイジーに従う者ばかりであった。
「デイジーちゃん! これが終わったらデートしてくれよ!」
「俺も俺も! 一緒にどこかでかけようぜ!」
「戦いが終わってから話をしましょう。今は町を守ることに集中してください」
「「了解!」」
この町にはデイジーのファンが多い。
心底彼女に惚れている者もいるので、統率力は高いと考えられる。
そんなデイジーと双璧をなすぐらい、エミリアに好意を持っている者もいるのだが……エミリア派の者たちは何か言うこともなく、彼女を背中から見つめるのみ。
理由は二つある。
一つは、彼女がアルに惚れているのを知っているからだ。
何度も男から誘われてきたエミリアだが、一度たりとも他の男に靡いたことはなかった。
彼女にどれだけ甘い言葉を囁いたとしても、どうしようもない。
諦めの感情を抱いたまま、密かにエミリアを想っているのだ。
そしてもう一つの理由は――彼女が怖いからだ。
こんな時にそんな話をしたら……
ブルッと雪山を歩いているかのごとく震え出す男たち。
怖い……想像しただけでも怪我しそうだ。
「来るぞ!」
エミリアは敵が動き出したのを視認し、一人全力で駆け出した。
「皆さん! エミリアお姉ちゃんに続いてください!」
「「「おおおっ!!」」」
突撃を開始するマーフィンの冒険者たち。
先行していたエミリアはモンスターの大群と衝突し、次々とモンスターをこま切れにしてく。
「さすが【神力瞬殺】だ! 相変わらず敵を倒す速度が尋常じゃない!」
「強くて迅い……それしか形容しようがないが……とにかく強い!」
エミリアの力に鼓舞されるように、冒険者たちは勢いを増し、モンスターたちとの戦闘に突入する。
「【ガイアクラッシャー】!」
デイジーが後方から【大地】の魔術で攻撃を仕掛けた。
地面から巨大な岩の槍がいくつも飛び出し、モンスターを足元から葬っていく。
デイジーに続くように、【ソーサラー】たちも魔術を発動させる。
戦場には爆発音が鳴り響き、モンスターの数がみるみるうちに減っていく。
エミリアはモンスターたちの中心へと突撃し、止まることなく突き進んでいた。
モンスターたちはエミリアに恐怖をなし、後ずさり距離を開けている。
「おい! どきな、あんたたち!」
モンスターの遥か後方から響く声に、モンスターたちは中央に一本の道を作る。
エミリアから遠くにいる魔族へ続く、死地への道。
ピりつく空気に、心が足を踏み出すのを拒否しだす。
だがエミリアはそんなことを全て無視し、相手に向かって一直線に走る。
「ハッ! どんな奴かと思ったら、子供かよ!」
「誰が子供だ、コラッ!!」
エミリアの進む先にいたのは――剛剣のライオレッタ。
彼女は巨大な剣を手に取り、エミリアのレイピアを受け止める。
「うおっ! スゲー力だな……ガキのくせによ!」
「てめえ……絶対ぶっ殺す!」
◇◇◇◇◇◇◇
「敵の数に圧倒されることはない! 訓練通りにやれば問題なく勝てるぞ!」
「「「イエスマム!!」」」
ローランドではローズが指揮をとり、完璧な隊列をなし、冒険者たちがモンスターを睨み付けていた。
カトレアは【テイム】したスライムに【結界】を張らせ町を守る。
だがカトレアの【テイマー】としての能力は上昇しており、動きながらでもスライムたちを制御できるようになっていた。
「みんな~! ぜーったい、生き残ろうね!」
「「「カトレアちゃ~ん!」」」
「絶対絶対、死んじゃダメだし、町を守らなきゃダメだよっ☆」
「「「カトレアちゃ~ん!」」」
カトレア派の者たちは、ローズの指揮する部隊にいながらもカトレアに大声で反応する。
ローズは嘆息するものの、彼らの実力を認めているので何も言わなかった。
大丈夫。自分たちならどれだけ強敵がこようが負けるわけがない。
モンスターの大群を前に、ローズは冷静に、かつ熱烈的に彼らに指示を出す。
「全軍、突撃せよ!」
「「「おおおおおおっ!!!」」」
ローランドの冒険者たちはローズの一言に呼応し、武器を手に取り、敵との距離を詰めて行く。
そして彼らの最前列には、ローランド最強格の二人がいた。
「おいボラン! 今日こそ俺が一番敵を倒すんだからな!」
「ああっ!? そんなの知るかよ! 俺は町を守るだけなんだよ!」
いつも通りのやりとりをしながら、駆けて行く二人。
そしてモンスターたちとの戦いの幕が切って落とされた。
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