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第8話 アルは仕事をする②

 あまりの驚きに、俺はその場にしゃがみ込み、ブルーティアの操作を続ける。

 【成長加速】をさらに加速させたい。

 そう思い、スキル上昇をパッとすます。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 神剣ブルーティア・ソードモード

 FP:50

 攻撃力:25

 防御力:25


 スキル 剣2 弓1

 サポート 収納 自動回収 成長加速10


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 どうやら、サポートは10までスキルを上昇させられるらしく、これで【成長加速】はMAXになったということだ。


 近距離戦闘しかできないのもなんなので、ついでに【弓】を習得しておいた。


 ブルーティアの新しいモードの設定をする。

 パワーバランスは攻撃100だ。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 神剣ブルーティア・アローモード

 FP:50

 攻撃力:45


 スキル 剣2 弓1

 サポート 収納 自動回収 成長加速10


 モード性能:命中補正+ 攻撃力10%減 


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ステータス画面を閉じるとブルーティアが光り出し、蒼い弓へと姿を変えた。

 それは俺の身長と同じぐらいのサイズで、中央部分に宝石がついてある。


 弦を指で一度ピンと弾き、次に弓を引いた。

 すると光の矢が出現し、俺の手から放たれる。


 ピュンと勢いよく飛翔し木に刺さると、木はシュンと消え失せた。

 【自動収納】は弓でもしっかり機能しているようだ。


 光の矢は少量のFP(フォースポイント)消費することによって創られるようで、FPが尽きない限り矢を放ち続けることができる。

 攻撃力自体は若干低下するものの、状況に応じてモードを変更して戦えるのは嬉しいな。


「おっ」


 現在俺がどの程度弓を扱えるのかを確認したいと思っていたところにゴブリンが現れた。


 俺は近くの木にさっとよじ登る。

 深呼吸し、息を整え、ゴブリンを見下ろす。


 相手は3匹。

 1匹は近くまで距離を縮めてきていたが、残りの2匹はまだ遠くにいる。


 俺は弓を引き絞り、近くの一匹に狙いを定めた。

 手を離すとビインと耳元で弦がしなる音が響く。


 矢はコーンとゴブリンの頭部に刺さり、その一撃で命を奪う。

 攻撃力はやはり申し分なし。

 命中精度も、そんなに悪くない。


 続いて二匹目のゴブリンをさっと射抜き、最後の一匹の胸に矢を放つ。


「ゲェエ……」


 しっかり素材として吸収されるゴブリン。

 俺は木を下りて、ため息を吐く。


 遠距離から攻撃ができるようになったのは便利だな。

 これで遠くからチクチク狙うような戦いも悪くないかも。


 そのまま気分よく奥に進んで行き、目に入ったゴブリンを片っ端から撃ち抜いていく。

 ああ。なんてラクチン。

 命をかけて戦うとか俺の性に合わないから、これぐらいが丁度いいや。

 楽に戦い余裕で勝つ。

 ブルーティアならそれが可能。


 そうやって木々の間を歩んでいると、『グリーンリーフ』が大量に生い茂っている場所へと行きついた。


 俺はブルーティアをソードモードに変形させ、『グリーンリーフ』切り刻んでいく。


 みるみるうちに消えて行く『グリーンリーフ』。

 あらかた回収が済み、俺はその場に座り伸びをした。

 

 陽の光と木々を揺らす風に俺は眠気に誘われる。


 だからって寝るのはダメだろ。

 さすがにモンスターが出現する森で、眠りにつくことなんてできるわけがない



 ◇◇◇◇◇◇◇



 目を覚ます。

 案の定眠ってしまっていたようだ。

 奇跡的にモンスターは周囲にいなかった。


「……帰ろっと」


 俺はあくびをしながら、のんびりとローランドに帰還した。

 

 戻る頃にはすっかり日が沈んで真っ暗になり、酔っ払いたちが俺に視線を向けている。

 ペトラとの話でも聞いたのだろうか。

 俺を睨むことはあっても、襲おうと近づいて来る者は誰一人としていない。


 内心ホッとしながら、俺はペトラの店に足を踏み入れる。


「あ、おかえりなさい。生きて帰って来れたんですね」


 賑わう店内。

 俺は空いたカウンター席に着き、食事を頼む。


「あ、グリーンリーフ。納品しておくよ」

「わかりました。じゃあ、品物を出して下さい」


 俺はコクリと頷き、『グリーンリーフ』をドサドサと大量にブルーティアから取り出す。


「納品しすぎでーす! ななな、なんですかこの量は!?」


 驚き大きな声をあげるペトラ。

 店内の人たちはペトラの声にピタリと話をやめて彼女を見ていた。

 シーンとする周囲にペトラはハッとして「なんでもないです」と否定するように胸の前で両手を振る。


 その一言にざわめきが店に戻り、ペトラはグリーンリーフを目の前に申し訳なさそうな引きつった笑みを向けてきた。


「あの……お金は後日でいいですか? その……これを本部に手渡してお金が手に入ったらお渡ししますので」

「あー別にいいよ。その代わりじゃないけど、飯代だけそこから引いておいてくれる? 俺も金が無いからさ」

「は、はい。本当、ごめんなさい」


 店を畳もうかって言ってたぐらいだし、蓄えが無いんだろうなぁ。

 俺はいまだ申し訳なさそうな顔をしているペトラを不憫に思い、この子をもう少し楽させてやりたいなんて考え始めていた。

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