第78話 アルはフレオたちと会談する
「陛下! 今こそモンスターたちから、奪われた大地を奪い返すときでございます!」
「うん……」
それは昼過ぎのレイナーク城での出来事。
謁見の間にて、騎士団長であるユーリが、ソルバーン荒地へ攻め入るよるにとフレオ様へ直談判していた。
ユーリは25歳という若さで騎士団を率いる、黄金色の短髪の美男子。
銀の鎧を身に纏い、黄金の剣を腰に納めている。
背には赤いマントを、首元には銀のネックレスが覗いていた。
「現在我らには【人類最強】である、アルベルト・ガイゼルがついています! 【神剣使い】である彼が今この場にいることこそ、まさに神に与えられたチャンスではありませんか!?」
【人類最強】――
いつの間にか俺に付けられた二つ名。
四害王の一人、滅殺のブラットニーに勝利したことにより、勝手に人類最強の称号を与えられてしまった。
別にいいんだけど、ちょっと表現が直接すぎて恥ずかしさがぬぐい切れない。
「アルはどう考える?」
フレオ様はユーリの言葉に迷いつつ、俺に話を伺ってきた。
俺は顎に手を当て思案し、自分の考えを口にする。
「うーん……無理に攻める必要はあるのですかね? 四害王の一人であるブラットニーは、ゴルゴの件ではこちらに攻め込んでは来ましたが、それ以外は何も仕掛けてきていませんし……別段理由が無ければ無理に攻める必要もないでしょう」
ユーリはカッと目を見開き、信じられないといったような顔で俺を見る。
「理由!? 人間の大地を取り戻す。それだけで理由は十分だ!」
「奪われたと言っても、もう何百年も前の話だろ? そりゃ、取り戻したい気持ちは分からないでもないけど、攻め込むなんてことになったら、こちら側もただでは済まないと思うよ」
「痛み無くして、革命などない。ここで動かなければ、これから生まれて来る未来の子供たちも、モンスターに怯えて暮らしていくことになるんだぞ。今なんだ……取り戻せるのは、今しかないんだ!」
彼の言っていることは一理ある。
確かに計り知れない犠牲はあるのかも知れないが、『魔界』と呼ばれる北の大地を魔族から取り戻すことができたのなら、平穏な日々が訪れるのかも知れない。
争いのない、平和な時代。
だがしかし、疑問に感じることもあるのは確かなのだ。
「だけど、北を取り戻したとして、モンスターはこの世界から消えるんだろうか?」
「……そうだよな。奪われた土地を取り戻して、四害王を倒したとしても、根こそぎモンスターが消える保証はどこにもない。いや、逆にモンスターは消えないんじゃないのか?」
俺の右隣で腕を組んで話を聞いていたエミリアは冷静にそう言った。
「そうだよな、ティア」
エミリアと逆側……俺の左側に凛とした姿勢で位置していたティアはエミリアに静かに答える。
「ええ。私もご主人様とエミリアの言う通りだと思います」
「確かに、モンスターが消えていなくなる保障はどこにもない」
フレオ様の言葉に歯を食いしばるユーリ。
「しかし! 消える可能性もあるかと思います!」
彼は彼なりの正義があり、人間たちのためを思っての発言であるから、フレオ様も俺も無下にはできない。
だからフレオ様も真剣に話を聞き悩んでいるのだ。
ユーリの言うように、消えない保証もないけれど、消える可能性だって否定はできない。
そしてその答えは、多大なる犠牲を出さなければ、見出すことはできないのだ。
フレオ様の選択次第では、多くの人間を死地に向かわせることとなる。
慎重にならざるを得ない。
適当に決めていいわけがない。
真剣そのもので会話は続いていく。
「どうしたものか……」
「陛下。我々にはアルベルト以外にも、【神力瞬殺】に【抜刀天女】までもついているのですよ? 被害が出ないとは口が裂けても言えませんが、最小限に抑えられるのではないでしょうか?」
【抜刀天女】。
あまりにも美しく、あまりにも迅き剣技を誇るティアにつけられた二つ名。
ティアも力を蓄え続けてきたことにより、現在は最強クラスの実力を秘めた戦士となっていた。
さらに強くなったエミリアに、ティア。
そして俺がついているということをカードに、ユーリは交渉を続けていく。
三人がいれば戦いに負けることはない。
それに三人だけではなく、他の神剣たちにボランたち。
最強格の戦士が揃っていることを熱く語るユーリ。
自分の力にも自信があるのだろう。
これだけの戦力が整っている今ならば、苦戦することはあっても負けることなどありえない。
そう豪語するユーリ。
フレオ様は俺に意見を求めながら、悩みに悩み抜く。
結局その日は答えが出ず――話し合いは一ヶ月以上にも及んだ。
しかし、フレオ様は北の土地を奪還するという選択は選ばなかった。
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