第74話 アルは今回もみんなに料理を振る舞う②
「アルさん、とうとうガイゼル商店が戻ってきますね」
食事が終わり、みんなで他愛もない会話をしていると、ペトラが天真爛漫の笑顔で俺にそう言ってきた。
「ああ。ゴルゴもいなくなったし、フレオ様も動いてくれるみたいだしね」
ゴルゴがいなくなったことにより、店主のいなくなったガイゼル商店。
本来なら残っている者たちで跡取りを決めるところなのだろうけど、元々が俺の親父の店だったということもあり、フレオ様が口を挟んでくれて元の持ち主の下へ。ということで俺があの店を引き継ぐこととなった。
本当に、フレオ様には色々と世話になっているなぁ。
また何か恩を返さないと。
「それで……」
ペトラは少しだけ不安そうな顔をして遠慮気味に口を開く。
「アルさん、マーフィンに帰っちゃうんです、か?」
「…………」
なるほど。
俺がいなくなることによって、自分の商売がどうなるのか心配しているのだな。
ペトラはもう一人でもやっていけそうなぐらい立派になったと思うけど……
「心配しなくても、俺はローランドに残るつもりだよ」
「何だ。せっかく取り戻したのに、ここに残るつもりかい?」
「お力添えいただいたフレオ様に申し訳ないのですが、今はこちらの方が大事なので……」
「いや、僕のことは別にいいのだけれど……そうか。お父上の店よりも、こちらの方がすでに大事なんだね」
「ええ。もちろん、思い出も思い入れもありますけど……自分の感情だけで物事を決めていい立場にないので」
「アルはもう、ローランドにいなくてはならない存在だからな! いてもらわねえと困るぞコラッ!」
ボランの言葉に、ジオたちがうんうん頷いている。
ペトラはホッとした様子を見せるが、何か疑問に思ったらしく、口を開く。
「じゃあ……ガイゼル商店はどうするんですか?」
「ああ。あの店は……」
俺は近くにいたノーマンの肩を叩く。
「ノーマンに任せようと思う」
「え……えええっ!?」
飛び上がる勢いで驚くノーマン。
それを聞いたペトラは感嘆の声を上げる。
「ノーマンさんなら、絶対に大丈夫ですね!」
「えええ!? お、俺には無理ですよ……」
「そんなことないよ。ノーマンは真面目に仕事をするし、それに人の痛みというものをよく知っているからな。部下を大切に扱う、いい店主になるよ」
あわあわ戸惑いっぱなしのノーマン。
ザイが彼の隣に立ち、淡々とした声で言う。
「近くに俺がいる。困ったことがあればいつでもフォローする。だから、とりあえずはやってみろ。俺だって最初は不安が無かったわけではない。それでもアルさんが信じてくれたからな。だから俺はマーフィンで成功することができた」
「ザ、ザイさん……」
「俺はノーマンのことも信じている。きっとノーマンなら、上手く切り盛りできるはずだ」
ノーマンは信じられないと言ったような顔で俺を見るが、いつの間にか真剣な面持ちとなり、口を開く。
「……ア、アルさんがそう言ってくれるなら……頑張ってみます」
「うん。期待しているよ」
ザイがノーマンの肩に手を当て、ニヤリと笑う。
ノーマンは苦笑いでそれに応える。
この真面目な二人に任せておけば、マーフィンのことは大丈夫だろう。
「しかしアルの組織はドンドンと大きくなっていくのだな」
フレオ様はノーマンとのやりとりを見ていて、羨ましいような、それでいて微笑ましそうな表情を浮かべ俺にそう言う。
「俺の組織が大きくなれば、それだけフレオ様のお役にも立てるというものです。これからも期待しておいてください」
「ああ。期待しているよ。そしてこれからも僕のよき友人でいてくれ」
「ええ。そのつもりですよ」
「友人を止めたら、レイナークを奪われてしまうような気がするしね」
「……俺がそんな人間に見えますか?」
クククッと笑うフレオ様。
「いいや。見えないな。冗談だよ、冗談」
人間同士のいざこざはとりあえず終わり、平穏がこれからも続くと誰もがその時は信じてやまなかった。
しかし。
魔族たちの――
四害王たちとの決戦は、着実に近づいていたのであった。
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