第64話 ブラットニーは襲来する②
『アルベルト様! アダマンティンドレイクが来ます!』
俺がドラゴンエティンを一匹仕留めると、空を舞うアダマンティンドレイクのうちの一匹が炎を吐き出しながら飛翔して来る。
サイズがサイズだから、口から吐き出す炎の面積が冗談のように広い。
城ぐらいなら4往復で燃やし尽くせるほどの範囲がありそうだ。
避けるのも可能だが、それよりは全力で防いだ方が確実だろう。
俺は神剣をクロスさせ、相手の攻撃に備える。
『アル様。【補助】を習得していいですか? それならより確実に相手の攻撃を防げると思いま~す』
「ああ。頼むよ」
他人を強化することができる【補助】。
ホワイトカトレアが淡い光を放ち、それを習得する。
『【ガードフォース】』
俺の体を包み込む、青い光。
アダマンティンドレイクの炎が直撃するが、神剣の防壁とガードフォースのおかげで無傷に終わる。
「ア、アニキ……どうなってんすか?」
今の攻撃を防ぎきったことにジオは驚きすぎたのか、大きく開けた口が閉まらなくなっているようだ。
別にいいけどジオ、今は戦闘中だぞ。
アダマンティンドレイクが炎を止め、空中で旋回しようとしている。
その姿を見て俺は、ドラゴンエティンとの距離を詰めはじめた。
『【スピードアッパー】! ついでに足も速くしておきますねっ☆』
「助かるよ、カトレア」
『いえいえ~。私はアル様のために存在しているので、こんなぐらい当たり前ですよっ。お礼なんて……結婚してくれるぐらいでいいで~す』
『バカなことを言っているんじゃない、カトレア。今は戦いに集中しろ!』
『バカなことじゃなくて、やってほしいことを言ってるのっ。ローズだってアル様と結婚できたら嬉しいんじゃないのぉ?』
『ななな、何を言っている! アルベルト様は私たちの所持者であって……神剣がそんなことを望むわけないだろ!』
俺の手元で、剣同士が喋っている様子に、くすりと笑う。
なんだか緊張感がない戦いになったなぁ。
ま、それはいつものことか。
カトレアの強化のおかげで、いつもより速く駆けることができ、一瞬で詰め寄りドラゴンエティンの背後を取れた。
「!?」
棍棒を背後に振り回すドラゴンエティン。
これをホワイトカトレアで受け止める。
「ジオ。敵がこっちに来る。早く離れろ」
「うっす!」
風のような速度で離れて行くジオ。
速さだけなら、そのうちエミリアより速くなるかもしれないな。
そんな期待を抱きつつ、ブラックローズを上段に構える。
「行くぞ、ローズ」
『はっ!』
ブラックローズが、俺の手の中で黒い大剣へと変化する。
ずしりと重量感が一気に増す。
そのままブラックローズを、力任せに振り下ろし、ドラゴンエティンの肩口から切り裂いていく。
「ガアアアアアアアッ!!」
相手の左腕が落ち、左脚の肉を抉り取る。
片膝をつき、右手の棍棒をむやみやたらに振り回すドラゴンエティン。
そのドラゴンエティンの頭上から、炎が降り注ぐ。
アダマンティンドレイクは、仲間がいようがお構いなしに、こちらに攻撃を仕掛けてきた。
俺はこれを神剣でガードし、やり過ごす。
燃え尽き、塵となるドラゴンエティン。
俺はその死体を見下ろし、すぐさま、上空へと視線を移す。
器用に逃げ回るアルベルトファミリーの面々とそれを追いかけるアダマンティンドレイク二匹。
もう一匹はまたこちらに方向転換しようとしている。
「ティアたちは……もう済んだみたいだな」
ティアとデイジーはすでに仲間たちを避難させていたようだった。
俺はティアたちの目の前と空間を繋げ、移動する。
人間の姿に戻るローズとカトレア。
「ちょっと試してみますね」
カトレアは弓を引き、アダマンティンドレイクに向かって矢を放つ。
しかし無情にも、キンッと弾かれるだけで効果は無かった。
「……硬すぎですね」
「面倒だな……ティア、何かいい案は無いか? あいつを楽に倒せるような新しいモードなんかあればベストだけど」
そんな都合よく、新しいモードなんてないだろうけれど。
だけど一応そう聞いておく。
「ございます。あれを楽に倒せるモードがすでに解放されておりますよ」
「……あるのか」
都合よく、相手を倒せるモードがあったようだ。
なんて便利な美少女なのだ、ティアは。
この戦いが終わったら、たらふく美味い物を食べさせてあげよう。
「それじゃあ、さっそく頼むよ」
「かしこまりました」
いつもより激しい光を放つティア。
ティアの放つ蒼い光はほんのり温かく、輝きは増すばかり。
「……おいおいおいおい」
静かに光が収まると、なんとブルーティアは――
――戦車になっていた。
太く長い砲身に、蒼い装甲。
どんな場所でも移動できそうな頑丈なキャタピラ。
車体は何人も乗れそうなほど大きく、その迫力に、カトレアがゴクリと息を飲む。
「お、お姉ちゃん……すごい」
「さすが姉様。私たちとは一味違う」
俺はさすがに戦車になれるとは思ってもいなかったので、ブルーティアの姿を見て飽きれ返っていた。
「お前は本当になんでもありだな」
『ええ。【神剣】でございますから』
「…………」
それは全く答えにはなっていなかった。
だけどそんなことはどうでもいい。
あいつに楽に勝てる方法があればそれでよいのだ。
しかし、バイクだけではなくて戦車にも乗れるとは……
俺は密かに胸を躍らせながら、ブルーティアに搭乗した。
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