第62話 ローランドとレイナークは合同訓練をする②
レイナークから北へ向かい、ソルバーン荒地に近づいて行くと、そこそこ強力なモンスターが出現する。
「いい天気ですねぇ、アル様」
「本当だ」
俺たちが立っている場所もレイナークから続く草原で、足元には草の触感があり鼻には自然な香りが飛び込んでくる。
肌を優しく包む太陽の光を浴びながら一度大きく深呼吸した。
隣でカトレアも同じように深呼吸し、こちらに笑みを向ける。
いや、可愛いんだけどさ。
ファンも大勢つくぐらい可愛いカトレア。
先月なんてファンからプレゼントを沢山もらい、【収納】が無かったら大変だったぐらいだ。
さらには直接告白されたりラブレターをもらったり、愛を囁かれない日は無いという。
どれだけモテるんだよ、この子は。
「じゃあみんなも頑張っておいで~」
カトレアの言葉にスライムたちがピョンピョン跳ねながらモンスターのいる方向へと向かって行く。
そう、今俺たちの目の前では、戦闘訓練が繰り広げられているのだ。
俺たちをとりまく穏やかな雰囲気とはかけ離れた、殺伐とした様子。
皆武器を片手に、モンスターと戦闘を繰り広げているのだ。
ここはDクラスの上位に位置するモンスターが多数出現していて、レイナークの戦士たちから見れば、強すぎず弱すぎずといった丁度いいぐらいの相手のようだ。
「いいぞ! その調子だ! やればできるじゃないか!」
「「「イエス! マム!」」」
レイナークの戦士たちの実力が向上していく様子を怒声で褒めるローズ。
認められるのが嬉しくて、ローズの言葉にさらにやる気を出している男たち。
「他のみんなも頑張ってね~。私、応援してるんだからねっ☆」
「「「カトレアちゃ~ん!!」」」
カトレアの声援に大いにやる気を出す男たちも大多数。
戦場は真剣な表情で戦う者と、笑みを浮かべながら戦う者の二種類に分別でき、ローズとカトレア派のどちらかは見れば歴然である。
また二人のファンが増えそうだが、まぁ効率はいいしこのまま進めても問題ないだろう。
そんな中でも、その二つの派閥に属さない男が数人いる。
その男たちは、苦戦している仲間たちを援護し、やられそうになったら体を張って助けに入っていた。
「す、すまない、助かったよ」
「いいってことよ! 俺たちは一日一善、アルベルトファミリーだ! 困ったことがあればいつでも助けるぜ!」
それはジオたちだった。
以前のような悪人面はどこにいったのやら。
みな、穏やかな表情となり、気持ちよさそうに仲間たちを助けている。
人格は人相に現れる、なんて言葉もある。
悪人は悪人顔に。
善人は善人顔に。
今の彼らはチンピラの頃のような雰囲気は抜け切らないものの、本当に優しい顔つきになりつつあった。
俺はそんなジオたちの姿を見て、込み上げるものがあり、自然と笑みをこぼす。
「さすがアル様ですね。あんな人たちも改心させるだなんて」
「いやぁ。頑張ったのはあいつたちだよ。俺はその手助けをしただけさ」
カトレアはスライムたちに命令を出しつつ、腕を組んでくる。
スライムたちはジオのように、少し押されている男たちの援護に入っていた。
意外とスライムも強く、下手したらレイナークの兵士よりも強いかもしれないほどだ。
突進だけで、オークが軽く吹き飛んでいた。
「んふふ~私だってアル様のために頑張ってるんですよぉ」
頬をスリスリしてくるカトレア。
俺は微笑しながら彼女の頭を撫でてやる。
「カ、カトレア! 貴様うらや……無礼な!」
それを目の端でとらえていたローズがカトレアに怒鳴った。
「え~。ローズもやってもらったらいいじゃない」
「そ、そんなことできるわけないだろ!」
二人っきりならやってもらいたいようだが、他の誰かがいる時は断固拒否するローズ。
怒るローズと余裕の表情でやりとりするカトレア。
「今は訓練中なんだから、そろそろやめておけ」
「は~い」
「しかし、アルベルト様……」
「ローズも後で甘えてもいいから」
「……は、はっ!」
顔を赤くし、綺麗な姿勢で返事をするローズ。
甘えることは否定せず、心なしかさっきよりもより一層指揮に気合を入れているような気がする。
「ローズって素直じゃないですよね~。アル様のことが好きならもっと……?」
突如、空から破裂音のような物が聞こえて来る。
ボンッボンッと不規則に音は鳴っていた。
「……なんの音だ?」
「分からんが……北の方から聞こえて来るぞ」
「北って言えば、ソルバーン……って、おい、あれ……」
一人の兵士が、空を指差す。
「……アル様、ちょっとあれ……何ですか?」
つーっと一つ汗を流すカトレア。
ローズもそれも睨み付ける。
天空から飛翔する3匹の大型モンスター。
金属のような硬質の赤い肉体を持つ龍。
太陽の光に体を反射させて飛んで来る、規格外のサイズのそれは――
アダマンティンドレイク。
Aクラスのモンスターだ。
「グオオオオオオッ!!」
「!?」
さらには、大地を揺らせながらこちらに歩行してくる、巨人の姿が。
それは人間のような胴体で肌は黒い。
二頭の龍の頭を持ち、手には大きな棍棒を二つ握り締めている。
そして体の大きさはとてつもなく圧巻の一言しか思い浮かばない。
まだ遠くにいるはずなのに姿かたちがハッキリと分かる。
ドラゴンエティン。
こちらもAクラスモンスターであり……そのドラゴンエティンが同時に二匹進軍してきている。
さすがにローランドの冒険者たちも青い顔をしたまま、敵の姿を見据えていた。
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