第61話 ローランドとレイナークは合同訓練をする①
「いやぁフレオ様。おかげ様で上手くいきましたよ」
「ああ。バルバロッサから話は聞いているよ」
俺はレイナークの王室でフレオ様と気楽に話をしていた。
お互い気をつかわず、それでいて国王への敬意を忘れずにたわいもない話で盛り上がる。
「それより、さっきの話の続きを聞かせてくれないか?」
「ああ。エミリアの話ですか? あれからまたあいつを子供扱いした冒険者たちがいて、そいつら全員殴り倒してしまってですね、まぁ全員見事なまでにボコボコにされて、中には自信喪失して冒険者を辞めた人もいたとかいないとか。それでそれを見ていたテロンさんに、冒険者としてスカウトされたというわけです」
「ははははは」
大きな声で笑うフレオ様。
俺もそんな彼の姿を見て、笑顔を向ける。
「君の回りには面白い人物が多いようだ。いや、君が面白いから、そう言う人が集まっているのかも知れないけどね」
「類は友を呼ぶですか?」
「ああ」
くくくっと笑いながら言うフレオ様。
「やだなぁ。俺はみんなほど面白いエピソードなんて持っていませんよ」
「いやいや、Aクラスの大型モンスターを単独で撃破したり、ローランドを復興させつつあるのも、面白い話じゃないか。そんなことできる人間なんてそういない……というか、全くいないと思うよ」
「そうでしょうか?」
笑い疲れたのか、フレオ様はふーっと大きく息を吐く。
「ああそうだ。アルの助言通りやらせてもらったら、こちらの冒険者ギルドも騎士団も、活気あふれる組織になってきたよ。君の言う通り、コミュニケーションというのは大事なようだね」
「頭ごなしに命令しても効率が悪くなるだけなのでね。話し合い、話を聴き、褒めて任せる。そうしていくと、人は自発的に動いてくれるようになる」
「いや、君には勉強させてもらうことが多いよ」
「国王陛下にそう言っていただけるとは、光栄の至りでございます」
そう言って恭しく頭を下げると、フレオ様はふふっと短く笑う。
「だが、レイナークの戦力がなかなか上がってこなくて困っているんだ。ローランドの冒険者たちのように、順調というわけではなくてね」
「なるほど」
「そこでだ。君がよければだが、ローランドとレイナークで、合同訓練をお願いしたいのだけれど、どうだろう?」
「いいですよ。俺の数少ない友人の頼みなので」
「ふっ。君に友人は多いだろ? 僕と違って」
「いや、本当に友人は少ないですよ。仲間は多いですけどね」
フレオ様は「ふむ」と短く言って短く何度か首を振る。
「それじゃあ、訓練を任せるよ」
「ははっ。仰せのままに」
一度頭を下げてから笑みを向けると、フレオ様は楽しそうに笑っていた。
◇◇◇◇◇◇◇
「じゃあ、レイナークのみんなにも頑張ってもらったらいいってことですね☆」
「ああ。そう言うことだ」
カトレアは俺の腕に手を回しながらニコニコしている。
見ていて気持ちいいぐらいの笑顔。
自然にキュンと胸が高鳴る。
「カトレア。アルベルト様から離れるんだ」
「え~ヤダぁ。今日はずっとこうしてるんだもん」
ローズがカトレアをジロッと睨みながら言う。
だがカトレアはそんな視線を気にすることなく、俺の腕に頬をすり寄せる。
俺は嘆息しながら目の前にいる戦士たちに視線を移す。
現在、レイナークの城門前にはレイナークの戦士たちとローランドの冒険者たちが集結していた。
腰に黒い毛皮を巻いているローズ派は向かって左側に。
白い毛皮を巻いているカトレア派は右側に立っている。
その後ろにレイナークの戦士たちがいて、毛皮の意味を理解できずにいて怪訝そうにそれを視線を落としていた。
「これより合同訓練を行うが、その前に行っておかねばならないことがある! レイナークの戦士たちよ! 自分を信じることを忘れるな!」
ローズのどこまでも響き渡りそうな大声に続き、ローズ派の男たちが一斉に口を開く。
「「「自分を信じれない奴に強くなる資格も可能性もない!!」」」
綺麗に隊列を組み、腕を後ろに回しながら声を揃える男たち。
レイナークの男たちは「なるほど」などと声を漏らしながらうんうん頷いている。
「みんな~。今日も訓練、頑張ってね~。私、応援してるよぉ☆」
横向きのピースを目元でつくり、とびっきりの笑顔でみんなにそう伝えるカトレア。
「「「カトレアちゃーん!!」」」
カトレア派の男たちは自己アピールを始め、めいめいにカトレアに向かって何かを叫んでいた。
レイナークの男たちも「可愛い……」なんて頬を染めていたりする。
そしてローズとカトレアとどちらが好みか、討論のようなものを繰り広げ始めた。
「誰がお喋りをしろと言った!? お前たちがするのは無駄口を開くことじゃない! 強くなることだ! いいな!」
「「「イエス! マム!」」」
すでに数人のレイナークの戦士が、ローズ派の者たちと同じように腕を後ろに回してそう返事をしている。
「では参りましょう。アルベルト様」
「私がアル様の隣でお守りしますから、安心してくださいねっ」
「いや、守ってもらわなくても大丈夫だけど……」
ローズが空間を開き、別の場所への穴を開く。
俺はカトレアに腕を組まれたまま穴を通り抜ける。
こうして、異様に高揚した戦士たちの訓練が開始されたのであった。
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