第56話 デイジーはみんなから愛される
「新しい眷属を生み出すことが可能になりましたが、どういたしますか?」
ティアが鍾乳洞から帰るなり俺にそう言ってきた。
優秀な人材が増えるのはこちらとしては願ったりかなったりなので、もちろん否定などしない。
【パープルデイジー】
それが新たなる神剣の名前だった。
紫色をベースに、中央に白色のラインが入っているショートソード。
見た目の迫力には欠けるものの、ブルーティアと同じように、無限の可能性を感じる。
翌日俺はパープルデイジーを片手に、意気揚々と能力の解放に勤しんだ。
まぁ四本目となると、経験値稼ぎの効率が尋常ではなく、あっという間にヒューマンモードの解放ができた。
人間の姿になるパープルデイジー。
紫色のツインテールに垂れた犬の耳。
オドオドしながら周囲を見渡すその顔は、大変可愛らしく、守ってあげたくなるような愛らしさをこれでもかというぐらい持っている。
服装は異世界の学生服をチョイス。
白いシャツの上からノースリーブの灰色のカーディガンを着ていて、チェック柄のスカートを穿いている。首元には紫色の宝石がついたチョーカー。
スカートの少し下ぐらいまで伸びたニーソックスに黒い学生靴。
お尻からは犬の尻尾が生えており、それをふりふり動かしていた。
背は小さいが、胸は大きく、そのアンバランスさにクラッとくるものがある。
「は、はじめまして……お兄ちゃん」
「はじめまして。君のことはデイジーって呼んでもいいかい?」
デイジーは短く「うん」と首肯する。
現在、アウタン鍾乳洞で戦闘をしていて、彼女は怯えるように周囲を見渡し、タタタッと俺の背後に回り、背中にピッタリとくっついて来る。
彼女の体温を背中に感じ、俺の心臓が一瞬飛び上がった。
「怖いよ……」
ウルウルしながらデイジーは俺を見上げる。
なんだ、この全力で守ってあげたい気持ちは。
「とりあえず、ローランドに帰ろうか」
◇◇◇◇◇◇◇
ローランドの自室に戻り、ホッとため息をつくデイジー。
これから彼女には戦ってもらわなければならないのだが……
「デイジー。モンスターと戦うことはできるか?」
「うん……お兄ちゃんのために頑張るよ」
健気にデイジーはそう言う。
なんていい子なんだ……
妹力が高すぎて甘やかしてしまいそうにもなるが……
ここは我慢だ。
彼女にもやってもらいことがある。
まずはデイジーの武器を用意しなければ。
それにティアたちにもそろそろ武器を新調してやらないとな。
(ティア。今大丈夫か?)
(にゃははは。もっともっと頑張って、ご主人様に褒めてもらうにゃ。エミリアとの差をつけるにゃ~!)
(……ティア?)
(……なんでございましょう、ご主人様)
また何事も無かったかのように平然と応えるティア。
誤魔化せているとでも思っているのだろうか?
まぁどちらでも構わないけど。
(【錬金術】を使用したいから戻って来てくれないか?)
(かしこまりました)
ティアはどこかの森でモンスターと戦っていたらしく、空間を開けて自室へと戻って来た。
「ティアお姉ちゃん……はじめまして」
「はじめまして、デイジー」
デイジーは無垢な笑顔でティアの胸へと飛び込んだ。
ティアは穏やかな表情でデイジーを包み込む。
仲のいい姉妹といった感じだな。
俺はその様子を微笑ましく見守っていた。
「ご主人様、何を作成されるおつもりですか?」
「みんなの武器を新調しようと思っていてね。ティアとカトレアとデイジーの分だ。ローズの物はまだ十分使えるだろう」
ティアは俺に礼を述べ頭を下げる。
さて。
では彼女たちに何の武器を用意するかな。
ティアに【収納】の中身を確認させてもらいながら、新しい武器のことを思案する。
そして辿り着いた答えは――
ティアにはギガタラスクの鱗を使った【亀龍刀】。
Aランクの武器で攻撃力は770。
追加性能は防守値が150上昇するというものだ。
カトレアはホワイトドラゴンの牙を使用して【白龍の弓】を作った。
性能はB+で攻撃力は350、魔力が50上昇する。
デイジーには鍾乳洞で捕れた魔鉱石を使い、【ウィザードロッド】を作成した。
武器のランクはBで、魔力値が250上昇する。
なぜロッドにしたかというと、デイジーみたいな可愛い子には遠距離から安全に攻撃してもらいたい。
って、いきなり溺愛しすぎてしまっている気がするが……まあいいか。
武器が出来上がったのでカトレアを呼び出すと、デイジーを見るなり抱きついて頬ずりをしだした。
「かーわーいーい! デイジー可愛いよぉっ」
「えへへ。カトレアお姉ちゃんも可愛いよ」
スリスリ頬ずりをしまくるカトレア。
デイジーは困ったような顔はせず、嬉しそうに頬ずりを受け入れていた。
もう、みんなが溺愛してるな。
いやしかし、この圧倒的可愛さの前では仕方がないというものだ。
「あ、アル様。これが私の新しい武器ですね」
「ああ。以前の物と比べると、数段強力なはずだよ」
カトレアは新しい弓を引いて使用感覚を確かめていた。
大変気に入ったようで、可愛らしい笑顔をこちらに向ける。
「デイジー。明日は一緒にモンスターを狩りに行こう。俺が援護するよ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
そして帰還したローズもデイジーを見るなり、彼女を抱きしめていた。
「な、なんと愛らしい奴!」
「ローズお姉ちゃん……」
その夜はデイジーと一緒に誰が寝るかでもめにもめ、大騒ぎしっぱなしだった。
結局カトレアがじゃんけんに勝ち、デイジーを抱きしめながら眠りにつく。
本当、どれだけ溺愛されるんだよ、この子は……
【皆様へのお願い】
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
大感謝です!
これからもこの作品を他の沢山の方にも読んでいただいて、楽しんでもらいたいと考えております。
ランキングが上がれば自然に読んでくれる方も増えるので、ぜひお力添えのほど、よろしくお願いいたします。
そのため、もし少しでも、面白かった、続きが気になる。
そう思っていただけたなら、ブックマーク、高評価をお願いします。
評価はこの小説の下にある【☆☆☆☆☆】を押してもらえたらできます。
ブックマーク、高評価は、作品作りの励みになり、モチベーションに繋がります。
是非とも、よろしくお願いいたします!




