第55話 アルはエミリアと鍾乳洞へ行く③
エミリアは余裕の微笑を浮かべながら、レイピアを構える。
「そんな一直線に突っ込んで来ていいのかよ?」
そう言ってブラックドラゴンに向かって一直線に突っ込んで行くエミリア。
お前もいいのかよ。
ブラックドラゴンよりも速い動きで距離を詰めるエミリア。
とうとう敵と衝突する。
そう思った瞬間だった。
「――!!」
ブラックドラゴンを迂回するように、背後から白いドラゴンがエミリアに向かって襲い来る。
「っ――ホワイトドラゴンまでいるのかよ!」
白い炎を放射しながらホワイトドラゴンは飛翔する。
エミリアは咄嗟のことに一瞬驚きはしたが、それを軽いステップで避けてしまう。
「どれだけ威力があるか知らないけど、当たらなきゃ意味は無い」
これがエミリアの凄いところだ。
人並外れた反応速度と、それに対応することができる身体能力。
敵に向かって一直線に突っ込むような女性だが、瞬時の判断能力と身体能力が優れているため、想像以上の結果を出してしまう。
今も、普通だったら炎を喰らって致命傷を受けているところだが、楽に、気楽に回避してしまった。
そこからブラックドラゴンの追撃の黒い炎が眼前まで迫る。
「だから――当たらなきゃ意味無いんだよ!」
ブラックドラゴンの炎も、サッと横に回避してしまうエミリア。
そしてその勢いのまま駆けて行き、相手の左後ろ脚にレイピアを突き刺した。
「グオオオオッ!」
「ちっ! 浅かったか!」
そのまま俺の方に走り寄るブラックドラゴン。
俺は相手を迎え撃つように剣を構える。
「うわあああ!」
「?」
声に背後を向くと、なんとホワイトドラゴンが兵士たちに襲いかかっていた。
炎を巻き散らし、数名の兵士が炎上している。
ドシンと大地に降り立ち、今度は周囲に炎を吐き出した。
「エミリア、こっちのドラゴンは頼む」
「OK! 頼まれた!」
シュンッと素早い動きでブラックドラゴンの横についたエミリアは、光を纏ったレイピアで相手の腹部を数回突き刺した。
「グオオオオオン!」
痛みに鳴き、走る足を止めてエミリアの方向を向くブラックドラゴン。
俺はブルーティアをアローモードに変更し、走りながら弓を引き絞る。
「【スネークショット】」
左右に波打つような軌道を取り、矢が飛翔していく。
矢はホワイトドラゴンの右肩辺りに突き刺さり、やつは炎を止める。
「今だ、かかれ!」
動きが止まったホワイトドラゴンに向かって、兵士たちが総攻撃を仕掛けた。
だが、彼らの剣も槍もホワイトドラゴンの硬い鱗に弾かれるばかりで、効果は無い。
「バ、バカな……」
「俺たちの攻撃が……利いていない!?」
驚愕する兵士たち。
ホワイトドラゴンはその兵士たちを薙ぎ払うために、爪を横に振るおうとしていた。
「危ないから下がってなよ」
が、俺がその爪を矢で貫き阻止する。
そそくさと距離を取る兵士。
俺はブルーティアをソードモードに戻し、さらに距離を詰める。
「ゴオオオオッ!」
白い炎を吐き出すホワイトドラゴン。
俺は避けるのも面倒になり、それを正面から受け止める。
「ああ! アルベルトさんが!」
「い、いや! よく見ろ!」
兵士たちは炎に直撃した俺を心配する声を上げている。
だが、ブルーティアの防壁によりその炎は俺には届いていなかった。
「あ、あんな攻撃を喰らってもビクともしていない……」
「どうなっているんだ、あの人は……」
俺はホワイトドラゴンに斬りかかろうと闇の力を剣に纏わせた。
すると、横からブラックドラゴンが物凄い勢いでホワイトドラゴンの方へと飛翔する姿が目に映る。
いや、違う。
飛翔しているんじゃない。
ブラックドラゴンが物凄い勢いで吹き飛んでいる。
エミリアが蹴り飛ばしたのだ。
そこには技術もくそも何もない。
ただ力任せに蹴りを放ち、ブラックドラゴンを吹き飛ばしたのだ。
俺は呆れながらも、剣を下段に構える。
『エミリアは規格外もいいところですね』
「まったくだ」
ブラックドラゴンはホワイトドラゴンに激しく衝突し、互いにその場から動けなくなっていた。
「エミリア、一気に決めよう」
「ああ」
瞬時に俺の隣に移動してきたエミリアは、レイピアに光を宿す。
そしてドラゴンたちを左右から挟み込み、強力な一撃を放つ。
「「【クロススラッシュ】!」」
交差する光と闇の剣線がドラゴンたちを切り裂く。
俺たちの一撃で、二匹のドラゴンは絶命する。
「……す、すごい……凄すぎだ! この二人は!」
「俺たちじゃビクともしなかったドラゴンたちをこうもあっさり!」
「エミリア・スタウド……噂以上のバケモノだ!」
「いや、アルベルトさんも噂以上じゃないか!?」
兵士たちの声が鍾乳洞にこだまする。
うるさいほど大騒ぎする兵士たち。
俺は苦笑しながら一つため息をつく。
ティアは人間の姿に戻り、眼鏡をくいっと上げた。
「今回も楽勝でしたね」
「ああ……だけど、少々問題が発生しそうだ」
「問題……でございますか?」
俺は親指でエミリアの方を指す。
するとティアは「ああ」と短く漏らした。
兵士にバケモノ呼ばわりされて、鬼の表情をしているエミリア。
この後の彼女の反応を想像し、俺はもう一つため息をついた。
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