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第51話 ロイたちは強くなる②

 『弱虫ロイ』


 それが僕のあだ名だった。


 町に住んでいる同世代の友達にバカにされ続け、悔しくて悔しくて、毎日泣いていた……


 でも、一人だけ僕のことをバカにしない子がいたんだ。


 それが、ルカ。


 彼女が笑ってくれるだけで、全部救われた気がした。

 だから僕は彼女を振り向かせたくて、強くなりたくて……


 でも、それは全部自分だけの為だったんだ。

 ボランさんの戦いを見てそれは違うと、僕は知った。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「うおおおっ!」


 貧弱な男たちが、ゴブリンと接戦を繰り広げていた。

 盾を持った男が攻撃を受け、周囲から弱々しい斬撃を放つ。


 いつの間にか数人がかりではあるが、確実にゴブリンに勝てるようになっていた。

 ここに来るまでは、ゴブリン相手でも勝てなかったはずなのに。

 そもそもの原因は、勝てないと思い込み、立ち向かわなかったことだが。


 その中でも一際弱かったロイは、気が付けばゴブリンと互角以上の力で押していた。


「はぁはぁ……な、なんだかちょっと強くなったような気がします」

「気がする、じゃないよ。確実に強くなっている」


 ロイは俺の言葉にパッと明るい笑みをこぼす。

 最弱だったロイが、この中で一番強くなっていた。


 みんなも少しずつではあるが強くなってきている。

 俺は喜びに胸を躍らせ、ローズの方を見た。


「…………」


 ローズはなぜか、蒼い顔をしてキョロキョロ周囲を見渡していた。


「どうした?」

「い、いえ……先ほど、蜘蛛の巣を見ましたので」

「蜘蛛の巣? 蜘蛛の巣があったら問題でもあるのか?」

「大問題です」


 ローズは真剣な顔をして言う。


「な、何がそんなに問題なんだよ」

「だ、だって……怖いじゃないですか。蜘蛛」

「こ、こわ……?」


 すると、絶妙なタイミングでローズの真横にある木から蜘蛛が降りて来る。

 

「あ、蜘蛛」

「ひゃああああっ!?」


 ローズは悲鳴を上げて、俺に抱きついてきた。

 彼女は俺の顔を力一杯抱きしめる。

 柔らかい。しかし苦しいぞ。


 天国っぽいものと地獄っぽいものを同時に味わう。

 俺はローズの身体を引き剥がし、腕の中で振るえる彼女に訊く。


「蜘蛛、苦手なんだな」

「な、なぜでしょう……私は神剣だというのに、恐怖の対象があるなんて……」

「別に誰だって怖い物があってもいいだろ。人間だって神剣だって、モンスターだってそういうものもあるんじゃないかな」

「は、はぁ……」


 ローズは俺の言葉に頷いた。

 が、顔が近すぎたのか、みるみるうちに彼女の顔が赤くなっていく。


「あ、え、あいや……申し訳ございません! アルベルト様に抱き抱えていただくなんて、大変失礼なことを……」


 俺が手で蜘蛛を追いやってやると、ローズは安堵し俺の腕から離れる。

 黒い尻尾をふりふり動かしながら、赤くなった顔に手であおいで風を送っていた。


「ははは。ローズも人間っぽいところがあるんだな」

「や、やめて下さい。恥ずかしい」


 二人っきりの時は別人のようになるけど、こういう普段の可愛らしい部分もいいじゃないか。

 俺は彼女の意外な部分を見て、笑みをこぼしていた。


「うわあああ!」

「どうしたのだ?」


 急に、男たちが悲鳴を上げるように騒ぎ始めた。

 ローズはいつもの教官らしい顔つきに戻り、声の方を向く。


「……グリフォン。こいつははぐれでしょうか?」

「こんなところで単独でいるんだ。そう見て間違いないだろう」


 なぜこんな場所にグリフォンが……

 まぁ、生息地ではない場所にいるからはぐれなんだろうけど。


 鷲の頭と翼にライオンの胴体を持つモンスター、グリフォン。

 しかしその身体は、平均的なサイズよりも一回り大きいように思える。

 そして、全身には多数の古傷があり、激しい戦場を生き延びたような面構えをしていた。

 

「これは……Bクラス程度の実力があると見ていいだろうな」

「なるほど……厄介な相手ですね」


 しかしローズは鼻で笑う。


「私たちが相手じゃなければ、ですが」

「そういうことだな」


 ローズはロイたちに下がるように怒声めいた命令を出す。

 そそくさと俺の背後に回るのを確認し姿勢を正して俺の隣に立つ。


「ローズ。【大剣】スキルの取得と同時にグレートソードモードを頼む。攻撃を80、防御は20だ」

「はっ」


 ローズの全身が闇のような物に覆われて、巨大な剣へと変貌する。

 それは250cmはあろうかと言う大きな剣。

 真っ黒で、赤いラインが入った、禍々しい剣であった。


 ブラックローズを手にすると、ズシンと身体が重くなる。


 グレートモードは、攻撃力が50%上昇する代わり速度が30%低下する、という特性があり、普段より動きが鈍く感じた。


「オゴォオオオ!」


 はぐれグリフォンが翼をはためかせて、宙に浮く。


 敵のあまりもの威圧感に、男たちがゴクリと息を飲み、震える。


「こ、こんな化け物……さすがのアルさんでも……」

「アルさんだけではなく、こんなのに勝てる人間なんて」


 グリフォンは森を超え、天高く上昇していく。

 そして空中で体勢を変え、勢いをつけてこちらへと下降してきた。

 激しい風を裂く音が聞こえて来る。


「や、ヤベえ! ヤベえよアルさん!」

「アルさん、逃げましょう!」


 ロイたちが大騒ぎをしながら散り散りになる。


 だが、俺はその場を動かない。

 勢いを増していくグリフォンを迎え撃つため、ブラックローズを構える。


「アルさん!」


 ロイの叫び声とグリフォンの衝突は同時だった。


「……なっ!」


 俺はグリフォンの大きな体を、巨大なブラックローズで受け止めた。

 そのまま力尽くで押し返してやるとグリフォンは脚を絡ませその場に倒れる。


 「【バスター――」


 ブラックローズからとてつもない力が宿るのを感じる。

 俺はそれを解放してやるよう腕力だけで振り切った。


「スイング】!」


 ゴッ! と大地が爆発を起こす。

 軽い地震めいたものが起き、ロイたちは身体を揺られて、膝をつく。


「…………」


 そして、グリフォンが跡形も無く消え去り、ブラックローズの衝撃でできた跡を驚愕めいた顔で見つめていた。


「す、凄い……なんてでたらめな」

「ははは。まだまだこんなものじゃないんだぞ」


 俺は片手でブラックローズを持ち上げ、肩に乗せながらロイにそう答えた。

 ロイだけではなく、その場にいる全員が俺の強さに驚くばかり。


 ローズに人間の姿に戻ってもらい、ロイたちの訓練を再開させる。

 ロイたちは俺の強さに感化されたのか、さっきよりも気合の入った様子で戦いを繰り広げていた。

【皆様へのお願い】


ここまで読んでいただいてありがとうございます。

大感謝です!


これからもこの作品を他の沢山の方にも読んでいただいて、楽しんでもらいたいと考えております。

ランキングが上がれば自然に読んでくれる方も増えるので、ぜひお力添えのほど、よろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 中々面白くて一気読みしてしまった..... [気になる点] 神剣が強いのは良いが、通して見ても能力が曖昧すぎる。戦闘の度に武器を変えて、新たなスキルを得ているが、そんなにポンポンスキルを得…
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