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第47話 アルはエミリアと散歩する

 それは、ゴルゴにガイゼル商店を奪われ、家を追い出された時のことだった。


「悪く思うなよ。お前より俺の方が一枚上手だった。それだけのことだ」


 ゴルゴは俺の顔を見て、ニタリと片頬を歪ませる。

 俺は怒りに怒っていたが、それを悟らせないように平静を装っていた。


「…………」


 笑顔は崩さず、心でゴルゴを睨み付けた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「…………」


 俺はあの時の夢を見ていたようだ。

 朝目覚めて、夢だと気づくがムカムカは収まっていなかった。


「……おい」


 そしてカトレアが俺のベッドに忍び込んでいるのに気づく。


 現在は3人分のベッドを用意していて、神剣の彼女たちはそれぞれの寝床についている。

 それなのにカトレアはすぐに俺のベッドに忍び込んで来るのだ。


 脅しではないけれど、「襲ってしまうぞ」なんて言っても、こいつは喜びそうだし、どうすりゃいいかな。

 困ったものだ。


 彼女の柔らかい感触が腕に当たる。


「アル。今日はレイナークに……って! 何やってんだ!?」


 エミリアが扉を開いて部屋に入って来た。

 そしてカトレアが俺に抱きついて眠っている(ふり)のを見て顔を真っ赤にして怒鳴り出す。

 また面倒なタイミングで……


「こらカトレア! 何やってんだ、てめえ!」


 エミリアはズカズカと俺たちのもとに詰め寄り、ひょいっとカトレアの首を掴んで持ち上げる。

 カトレアはがっしり俺を掴んでいたようで、簡単に引き剥がされたことに驚愕していた。


「あ……あはは。だってアル様とは心の距離だけじゃなくて体の距離も縮めたいんだもん☆」


 持ち上げられたまま、横向けたピースを自身の目の辺りで作るカトレア。

 エミリアはギロリとカトレアを睨んで言う。


「あの世とこの世ぐらいの距離なら簡単に引き離せるんだぞ?」

「こ、怖いよ、エミリアちゃん……」


 えへへっ。と青い顔で笑うカトレア。


「それよりアル。レイナークに行くんだろ?」

「ああ。だけど昼からだぞ。【空間移動】があるから到着は一瞬だ」

「ああ、そっか。あれが使えたな」


 エミリアは【空間移動】のことを完璧に忘れていたようだ。

 カトレアをベッドに下ろし、鼻先をポリポリとかく。


「時間はまだあるんだな……だったらちょっと散歩しないか?」

「いいよ。迷子になったら大変だから、俺がついて行ってやろう」

「なるかよっ」


 エミリアはバツが悪そうにちょっぴり赤い顔をぷいっと逸らした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 外に出ると、ジオを筆頭としていた【アルベルトファミリー】が綺麗な姿勢で待機していた。


「「「親分! 姐さん! おはようございます!」」」

「ああ。おはよう」


 ジオたちが俺とエミリアに頭を下げ、大きな声で挨拶をしている。

 【アルベルトファミリー】はいつの間にかエミリアが仕切ることになっていて、それに素直に従う男たち。


「今日は町のゴミ拾いでもしてこい。お前ら、前まではえらい迷惑かけてたらしいからな。少しぐらいはみんなも見直してくれるだろ」

「ですけど、最近は俺らも強くなったんで、認めてくれてま――」


 ギロッ! と音が聞こえてくるような睨みをきかすエミリア。

 ジオはガタガタ震え、これ以上ないぐらいピーンと姿勢を正す。


 俺はエミリアの代わりに言う。


「失った信頼というものを取り戻すのは時間がかかるものだ。お前らは散々迷惑をかけてきたからな。一部評判は良くなったものの、いまだに不信感を抱いている人も多い」

「そ、そうなんすか……」

「ああ。お前たちはマイナススタートなんだ。普通の人の倍以上、意識的に善行を積むぐらいの気持ちじゃないと、いつまで経っても評判は悪いままだぞ」

「…………」


 自分たちの今までの行いを悔いているのか、ジオたちは俯いて何も言えなくなっていた。


「……俺ら、最悪だったんすね……」

「それが分かったというだけで前進したということさ。そしてそれが分かったら、悔い改めればいい」

「……うっす」

「大丈夫さ。いつかジオたちも変わったとみんなも分かってくれるよ。そしてジオたちならできると、俺は信じている」

「アニキ……」

「親分……」


 ジオたちはジーンと感動した面持ちで、俺を見つめてきた。


「分かったらさっさと行って来い! 町の隅々まで綺麗にしろよ!」

「「「うっす!」」」


 ジオたちはエミリアの声に従い、町の清掃を開始した。

 エミリアはそんな彼らの姿を見て、一つため息をつく。


「しかし、よくあんな連中を改心させられたもんだな。どんな魔法を使ったんだよ?」

「別に? 人として当たり前のことを教えただけさ。あいつらに必要だったものは、人として正しい生き方を知ることだったんだよ」

「あいつらの元はよく分かんないけど……それぐらいで変わるもんか?」

「変わるものさ。ちゃんと相手を信じて、真摯に向き合えばな」


 エミリアは「そんなもんか」と少し納得して歩き出した。


 俺たちは天気のいい朝の町を、みんなの笑顔を見ながら散歩する。


 大きく伸びをして、大きくあくびして。

 やっぱり俺には、こういう時間も必要だな。

  

 心を陽の気で満たし、穏やかな状態でのんびり散歩する。

 なんてことのない行為ではあるが、これで心の状態がよくなるんだから、言うこと無いよな。

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― 新着の感想 ―
[一言] キラキラ商人が黒幕ですがどうやって正体を見破るか 看破スキルが欲しいですな
[一言] >「あの世とこの世ぐらいの距離なら簡単に引き離せるんだぞ?」 怖ッ!? 脳筋さ……エミリア怖すぎッ!? 全く、カトレアもおちょくるのをやめれよなー……。 ただでさえエミリアを怒らせたら血の…
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