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第41話 ローランドの冒険者は強い②

 走るモンスターの端から、弾丸をバラまいていく。


「ギョアアアアアアッ!!」


 バラバラバラバラッとブラックローズから無数の弾丸が飛び出し、片っ端から敵を落としていく。


「す、すげー!!」

「アルさんはやっぱ違うな!」

「俺達とは根本的に違いすぎる……やっぱり俺たちの大将はすげえぜ!」


 ローランドの冒険者たちは驚きと興奮に満ちた声を上げ、走る速度を速めていた。


 そして、正面衝突する仲間たちとモンスター。


 俺は攻撃の手を休めることなく、ブルーティアで戦場を駆け巡っていた。


「ははは! 泣く子も黙るアルベルトファミリーだ! 俺たちの恐ろしさを教えてやるぜ!」


 ジオを筆頭に、毛皮の服を着た集団が勢いよく敵をなぎ倒して行く。

 と言うか、アルベルトファミリーはやめてくれ。

 俺が悪党の親玉みたいに聞こえるじゃないか。

 半分ほど真実になってしまっているのがなんとも言えなくて辛い。


 だが、ジオが名乗るアルベルトファミリーは戦場で一番勢いがあった。

 そしてジオは戦場の誰よりも速かった。


 モンスターが反応できない速度で、縦横無尽に斬り倒していく。


「行くぜ、野郎ども!」

「「「おおっ!」」」


 数では圧倒されていたものの、気迫でジオたちが圧倒している。

 気持ち的にも実力的にもモンスターたちを凌駕していた。


「つ、強い……ローランドの男たちは強いぞ!」

「いつの間にこれほどの実力を……!」


 ジオたちの力に仰天しているレイナークの男たち。

 もし現在、レイナークと戦ったとしたらローランドは勝利を収めることができるのではないだろうか?

 そう感じられるぐらい、みんなは強くなったし勢いがある。


 俺はブルーティアで駆けながら、少しばかりジーンとしていた。

 やはり人間やればできるのだ。

 元々ただのチンピラ集団でしかなかった彼らが、一目置かれる戦士に成長していた。

 それがとてつもなく嬉しく、感動が込み上げる。


 俺はさらに全力で駆け、モンスターをハチの巣にしていく。


「や、やっぱアニキはすげーな……でも、俺も負けないぜ! 【バインドエッジ】!」


 ジオは逆手に持った短剣で、モンスターに傷をつけていく。

 するとモンスターたちは、麻痺し痙攣を起こし始める。


「うおおおお!」


 動きが止まったモンスターを、男たちが斬り倒していく。

 

 ジオがモンスターを麻痺させ、続く男たちが倒す。

 その連携は面白いほど型にはまり、モンスターはドンドン倒れていく。


(アル様! アル様!)


 突如、カトレアの声が頭に響く。


 俺は攻撃の手を休めることなく、彼女に応答する。


(どうした、カトレア?)

(ローランドに、モンスターの大群が現れたんです!)


 ブルーティアを止めて、俺は会話に集中する。


(ローランドに……? 大群ってどれぐらいの数が来たんだ?)

(分かりませんけど……こんな数、私たちだけじゃ持ちこたえられませんよぉ!)

(……分かった。一度そっちに――?)


 カトレアに帰還の返事をしようと思った矢先、ズシーン、ズシーンと大きな地響きが鳴り響く。


「……な、なんだあれは……」

「でけー……」


 モンスターたちの後方から驚くほどゆっくりとした足取りでこちらに向かってきている巨大モンスター……


 ドラゴンのような顔に亀の甲羅。

 胴体と4本の足は岩のように固そうで、見るからに屈強である。

 その身体はすさまじく巨大で、10mをゆうに超えていた。


 ギガタラスク。


 文句なしのAクラスモンスターで、これに近寄る冒険者は愚か者の称号を問答無用で与えられるという。


「こんなモンスターまで用意してたのか……」


 そして問題はギガタラスクだけではなかった。

 後方にいくにつれ高ランクモンスターが配備されている。


「か、勝てるのかよ、あんな奴に……」


 さすがのローランドの男たちも、ギガタラスクの姿を見て固唾を飲み込んでいた。


(悪いけど、もう少し持ちこたえてくれ。こっちも大変なことになっている)

(分かりましたけど、できるだけ早く帰ってきてくださいねっ。私はいつでも逃げれますけど、町のみんなが危険なので)

(ああ。分かってる)


 なんでこんなタイミングでローランドにモンスター現れるんだ……

 それとも、誰かがこれを狙って仕掛けてきたとでもいうのか?



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ローランドを守るように、ボラン率いる自警団がモンスターたちを待ち構えていた。

 ザッザッザッと早くもなく遅くもない速度でモンスターはローランドへと近づいて来る。


「た、隊長……ヤバくないですか?」

「ああっ!? そんなことは分かってんだよ! だからって逃げるわけねえだろ!」

「だ、だったらあんな数、どうするんですか?」


 何百という数のモンスターの目が怪しく光って見え、それに怯える自警団の男たち。

 だがボランは違った。

 彼の目には確かな意志が宿っている。

 何があろうと、折れることのない鋼鉄の意志が。


「ああっ!? 決まってんだろ……ただ町を守るだけだろうが!」


 背中から盾を取り、右手に剣を構える。

 どっしり腰を下ろして、ボランは敵を睨みつけた。


「簡単に抜けると思ってんじゃねえぞコラッ!」

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