表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/100

第39話 アルはジオに人助けをさせる②

「うっひゃー! メチャクチャ気持ちいいっすね!」


 ティアをレイナークに呼び出し、ブルーティアのバイクモードで草原をビュンビュン疾走する。

 強い風を肌で感じながらミュウのお父さんを探していた。


 ジオはブルーティアの速さに感動し、後ろで大暴れしている。


「楽しい気持ちはよく分かるけど、お前もちゃんと探してくれよ」

「了解っす了解っす。くまなく探させてもらいますよっ」


 キョロキョロ周囲を見渡すポーズを取るジオ。

 人探しよりバイクの方が楽しすぎるようで、また感激した様子で笑っている。


『ご主人様、あれを』


 ティアが見つけたのは、壊された馬車だった。

 馬はどこかに逃げ出したようで、もう姿は見当たらない。


「あ、アニキ、中に人がいますよ」

「中に?」


 俺はブルーティアを止め、壊れた馬車の中を確認する。


「…………」


 意識朦朧としているが、生きている。

 手元には水があり、それを飲んでなんとか生き延びていたようだ。


 俺は怪我に響かないように、慎重に馬車の側面を取り外していく。

 一瞬で壊すだけの力はあるが、こうやってゆっくり剥がす作業は緊張するな。

 

 心臓をドキドキさせ、ゴクリと息を飲んでゆっくりゆっくり外す。


 最後にガッと外れ、中からうめき声が聞こえてくる。

 

「……問題はないみたいだな」

「そのようでございますね」


 ホッとため息をつき、俺はジオに指示を出す。


「ジオ。お前が助けてやってくれ」

「なんで俺が助けるんすか? 何があったか知らないっすけど、怪我した方が悪いでしょ?」

「悪い悪くないの問題じゃないんだよ。ジオはこれからも俺の子分としてそばにいたいか?」

「はぁ、そりゃ、そうっすけど」

「じゃあ、頼むよ」

「……はい」


 釈然としない表情でジオはミュウの父親を馬車から救い出し、背負う。

 俺が空間を開き、カトレアがいる場所へと向かった。


「カトレアはギルドの入り口にいるみたいだ」

「はぁ……」


 つまらなそうにジオは歩く。

 なんでこんなこと俺がしないといけなんだよ。

 そんな顔をしている。


「アル様~。その人ですか?」

「ああ。治療を頼むよ」


 カトレアは【回復】のスキルを習得しているので、彼の傷を癒すことができる。

 ギルドに入り、床に寝そべらせると、カトレアが【ヒール】を発動させた。


 「う……ううう……」


 傷が少しずつ塞がっていく。

 意識はまだ戻らないが、顔色が良くなっていた。


「…………」

 

 ジオは治療の様子より、自分の服についた血ばかりを気にしていた。


「お父さん!」


 ティアに話を聞いたミュウがギルドへと駆けこんで来た。


「お父さん、お父さん!」

「大丈夫だよ。もう心配ないからね」

「うん……ありがとう、アルお兄ちゃん!」


 ミュウは涙を流しながら笑顔でそう言った。


「……お礼は、こっちのお兄ちゃんに言ってやってくれ。お父さんを運んでくれたのは、あいつだから」

「え?」


 俺の言葉にキョトンとするジオ。

 ミュウはジオの前に立ち、ペコッと頭を下げる。


「ありがとうお兄ちゃん! お父さんを助けてくれて」

「お、おお……」


 ニッコリ微笑むミュウに、照れるジオ。

 俺は彼の隣に立ち、ジオに話しかける。


「どうだ? 悪い気はしないだろ?」

「……そ、そうっすね」


 照れて鼻をかいているジオ。


「これが人を助けるということだ。なんとも言えない喜びを感じないか?」

「ま、まぁ……」


 まんざらでもないと言った顔のジオに、俺はくすりと笑う。


「強い者が弱い者を喰うんじゃなくて、強い者が弱い者を助ける。それが本来の人間のあるべき姿だ。弱肉強食なんて野蛮な考えは捨てて、俺と一緒に人間らしい生き方をする気はないか?」

「……助ける、すか」

「人を傷つけるだけじゃ得られない感動を、あの子からもらえただろ? それがこれからも得られる報酬だよ」


 ジオは真剣な顔でミュウの横顔を見つめ、ポツリと呟いた。


「……悪くないかもっすね」

「だろ?」


 俺はジオの背中をパンッと叩く。


「お前ならきっと変われるよ。俺はそう信じている。ローランドはもう人を傷つけ、奪って生きていくような町じゃない。これからはお互いに助け合って生きていかないと。なっ」

「……うっす」


 ジオがどれだけ分かったのか。

 それは俺には分からない。

 だけど、今回のことがジオにとってのターニングポイントになってくれたらと、俺は願う。

 生まれ育った環境のせいでジオも悪党にはなったが、きっと優しい世界を知れば彼も変わるはずだ。


 俺はジオのなんとも言えない、むずがゆそうな表情を見ながら、くすりと笑った。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 一週間後。

 天気はよく、太陽が必要以上に燃えている朝。


「じゃあボラン、カトレア。町の守りを頼んだよ」

「任せとけ! 俺が全員守ってやるからよ!」

「は~い。私アル様のために頑張りま~す☆」

「俺のためじゃない。みんなの為に頑張ってくれ」


 ローランドをボランとその仲間たち、そしてカトレアに託して俺たちはレイナークへと向かうことにした。


 「四害王……強力なモンスターを送り込むってことらしいけど、大丈夫か、ティア」

「はい。ご主人様がいれば、どんな敵が来ようとも問題はありません」

「俺もティアがいれば、負ける気はしないよ」


 俺の横でニコリと笑うティア。


 ローズが空間を広げ、レイナークへの進軍が開始される。

 鍛え上げられたローランドの冒険者たちが堂々とした面持ちで隊列をなし、不敵な笑みを浮かべながら歩いていく。


 本当に心強くなったよ、みんな。

 俺も仲間たちに続き、空間の穴を通ってレイナークへと移動を開始した。

【皆様へのお願い】


ここまで読んでいただいてありがとうございます。

大感謝です!


これからもこの作品を他の沢山の方にも読んでいただいて、楽しんでもらいたいと考えております。

ランキングが上がれば自然に読んでくれる方も増えるので、ぜひお力添えのほど、よろしくお願いいたします。


そのため、もし少しでも、面白かった、続きが気になる。

そう思っていただけたなら、ブックマーク、高評価をお願いします。


評価はこの小説の下にある【☆☆☆☆☆】を押してもらえたらできます。


ブックマーク、高評価は、作品作りの励みになり、モチベーションに繋がります。

是非とも、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ