第38話 アルはジオに人助けをさせる①
「四害王? なんで四害王が……」
俺はレイナークの兵士と、ギルドカウンターの前で会話をしていた。
「じ、自分もよく知らないのですが……四害王の一人、滅殺のブラットニーがそのように宣戦布告をしてきたようなのです」
「宣戦布告って……なんで魔物がそんなことするんだろう」
「分かりません。ですがレイナークの北の方でブラットニーと接触した兵士がそう宣言されたようなのです」
四害王――
モンスターは独自の思考で行動し、人を襲う。
だが、モンスターには上位の存在がおり、奴らの命令を何よりも優先すると言われている。
以前、レイナークを襲ったデビルグリズリーの集団。
あれも上位存在の命令があったのだろう。
そしてその存在というのが、四害王。
モンスターたちを束ねる4人の王。
その強さは文句なしのSクラス。
ちなみに『Sクラスのモンスターと出逢った時は、諦めて死ね』とまるで神様のありがたいお言葉のように、冒険者たちの間では伝えられている。
そのSクラスモンスターである四害王の一人、滅殺のブラットニー。
奴が強力なモンスターをレイナークに攻め込ませる。と、布告してきたそうだ。
なぜわざわざ宣戦布告などするのだろうか。
人間とモンスターの間にルールなんてないというのに。
勝手に攻め込んだ方がどう考えたっていいに決まっているというのに。
考えれば考えるほど分からなくなる。
真実が逃げまわっているように、答えが掴みきれない。
「……分かった。とりあえずローランドの総力をあげて協力するよ」
「ありがとうございます! 現在ローランドの冒険者たちは強くて有名になっていますからね。こんなに心強いことはない!」
喜びを隠そうともせず、兵士は軽い足取りでギルドを後にする。
「アル、さっきの話、いつだって?」
「ああ。一週間後だってさ」
近くで聞き耳を立てていたテロンさんが俺にそう訊いてきた。
「しっかし妙な話だよなぁ。攻めることを伝えてくるなんて、行儀が良過ぎやしないか?」
「だよね。なんだか裏がありそうな気がするんだけど」
「……何もなければいいんだけどな」
◇◇◇◇◇◇◇
塔の隣の大きな建物。
以前はみんなここで寝泊まりしていたが、現在は家が建ち始めたので、空きが出始めていた。
そこで今は町の商店の本拠地として利用している。
この間までは吹き抜けの部屋がない広い空間だったが、今は区切りなどを設置し、いくつかの部屋ができあがっていた。
その中の一つに、アイテム製造をしている人たちが集まる部屋がある。
そこではティアがみんなに錬金術を指導しながら働いていた。
「ご苦労様。みんなの様子はどうだ?」
「さまにはなってきております。みなさんやる気があるので覚えるのも速いですね」
ポーションなどを製造し、それを町の出店や他の町で買い取ってもらいお金を稼いでいる。
ここは女性が多く、和気藹々とした雰囲気で仕事をしていた。
「来週、レイナークで大きな戦いがあると思うから、そのつもりでいてくれ」
「かしこまりました。ローズらにもそう伝えておきます」
「頼んだよ」
その場を後にし建物の中をぶらぶら歩いていると、一人の女の子が泣いているのを発見した。
「どうしたんだ?」
「あのね、お父さんがレイナークに行ったっきり帰ってこないの」
「お父さんが……」
この子はミュウ。
確か、レイナークに商品を運んでいる人の子供だ。
「いつから帰って来ないんだ?」
「昨日から帰ってこないの……」
レイナークは早朝に出ればその日のうちに帰って来れる距離だ。
それが昨日から帰っていないとなると……何かあったのか。
「……よし。俺が様子を見に行ってくるよ」
「あ、ありがとう、アルお兄ちゃん!」
「いいよいいよ。その代わり、笑顔で待っていてくれ。ミュウがずっと泣いていたら俺も心配になるからね」
「うん。分かった!」
そう言ってミュウは無邪気な笑顔を俺に向ける。
俺もミュウに笑顔を向け、その場を去った。
建物から出てレイナークと空間を繋げようとすると、ジオがなんとも嬉しそうに駆け寄って来る。
以前までジオは薄汚い服装をしていたが、今は動きやすそうな毛皮の服で着飾っていた。
俺がウルフの毛皮で作ってやった物だ。
強さも段違いになり、ギルドでも重宝される存在となっている。
「アニキ! どこか行くんすか?」
「…………」
俺はジオを見てとあることを思いつく。
そしてジオの背中を押しながら穴をくぐりぬける。
「ちょ、どこ行くんすか?」
「いいからいいから。黙ってついて来なさい」
レイナークでローランドの道具を取り扱ってくれている店に行った。
俺が王都の為に何度も貢献しているので、喜んで取引をしてくれている店だ。
扉を開くとそこは大きな店で、いくつも並んだ棚には色とりどりのアイテムが置かれている。
「すいませーん」
「はい、いらっしゃい……って、アルさんじゃない」
おかみさんが笑顔で俺を招き入れてくれる。
「商品を運んでくれてる人がいるんだけど、まだ帰って来ないんだ。おかみさん、何か知らない?」
「ええ? 昨日、品物届けに来て、元気にローランドへ帰って行ったよ」
「そう……ありがとう」
納品を済ませたってことは、帰り道で何かあったのか。
「よし。ローランドに向かってみるか」
「えええ……面倒っすね」
俺は嫌がるジオの背中を押して、レイナークの外まで移動した。
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