第35話 アルは山へ仕事に行く
「やあ、アルさん。よく来てくれましたね」
山の麓に到着すると、レイナークの兵士が10人ほど待機していた。
「な、なんだあれは……」
「よく分からないが……あの人のことだ。我々には理解できないが素晴らしいものなのだろう」
バイク状態のブルーティアを見て、兵士たちがざわついていた。
ま、驚くよね。俺も知識が無かったら絶対驚く自信あるし。
ブルーティアから降りると、人間の姿に戻るティア。
また驚く兵士たち。
「それで、問題の敵はどこにいるんだい?」
「あ、ああ。現在は山頂付近をウロウロしています」
俺とティアは、目の前の山を見上げる。
標高は1000mもないだろう。
ゴツゴツした岩場が多く見られる、山だ。
山としか形容できないほどに山であった。
「ここで出現するモンスターは……オークとオルトロス、か」
「はい。両方ともDクラスのモンスターでございますね」
Dクラス程度なら特に問題ない。
問題なのは、討伐の依頼を受けた方のモンスターだ。
「よし。とりあえずは山頂に向かうとしよう。考えるのは相手を見てからだ」
兵士たちを引き連れて山を上がって行く。
獣道を上っていくとすぐに犬型のモンスターの姿を発見する。
「オルトロスだ。ティア、お前だけでも問題ないかい?」
「はい。おまかせください」
オルトロス。
それは黒い犬型のモンスターで、頭が二つあり、尻尾は蛇。
見ているだけで、背筋がゾワゾワッとする。
ティアがオルトロスに近づいていくと、相手はティアに気づく。
「あ、あの子一人じゃ無茶じゃないですか?」
「いやぁ、大丈夫だと思うよ。ティアは結構強いからね」
足場を蹴り、駆け出すオルトロス。
ティアは刀に手を置き、相手を待ち構える。
オルトロスは二つの頭でティアに噛みつこうと、大きく口を開いた。
「【一の太刀・瞬閃】」
チンッという刀の音だけが聞こえ――
オルトロスの二つの頭が大地に落ちる。
「おおっ……オルトロスをあっさり倒したぞ」
「なかなかやるな……」
ティアは眼鏡をくいっと上げ、俺たちの方を見る。
「先に進みましょう」
モンスターが大量発生しているのだろう、次々にオルトロスが襲いかかって来る。
だがティアはそれを軽く一蹴していき、俺は鼻歌交じりで歩いていた。
二足歩行で豚頭のモンスター、オークも出現するがそれもティアは簡単に倒して行く。
背後や側面から来るモンスターは兵士の人たちが対応し、なんとか敵を倒していた。
見ててちょっと危なっかしいし、ピンチになったら助けてあげよう。
そう思いながら突き進んでいたが、結局手を貸す必要もなく、山頂付近へと到着した。
「あ、あれです……」
「あれか……ティア、あれは一人で倒せるか?」
「ご主人様のご命令ならば、一人で相手してきますが」
「ははは……そんな無茶は、可愛いティアにはさせられないな」
俺たちの視線の先にいるのはBクラスの大型モンスター――
キングコカトリスだった。
茶色い鶏の体に竜の翼と尻尾。
体はとても大きく、かるく4mは超えている。
ピシピシ地面を叩く尻尾の音に、兵士たちは怯えているようだった。
一人の兵士がゴクリと息をのんで俺に言う。
「あ、あいつに近づいたら石化させるつばを吐くので、気をつけて下さい」
「了解」
ティアに神剣の姿になってもらい、俺はゆっくり相手との距離を詰めた。
山頂付近は岩場が多く、足元が悪い。
それを飛んで渡って行くと、キングコカトリスはこちらを認識したようで、「コケー」と鳴き声をあげる。
つばを周囲に巻き散らしながら、ズンズンこちらに向かって走って来た。
「うげっ。汚いなぁ」
『あまり近づきたくはありませんね』
「あまりどころか、一切近づきたくないよ」
当たった所で【状態異常無効】があるから問題はないが……やはり当たりたくはない。
突進してくるキングコカトリス。
「あ、危ない!」
兵士の叫び声が上げていた。
だが俺はそれを空中に飛んで避け、くるくる回転しながら自然落下し、相手の尻尾を切断する。
「ゴゲーッ!!」
キングコカトリスは痛みに全力で駆け、目の前の岩場に頭を打つ。
ふらふらしながら振り返り、こちらを睨んでくる。
俺は嘆息しながらブルーティアの鍔部分で肩をトントン叩く。
「もうやめておいた方がいいと思うんだけどなぁ」
『同感です。ですが、相手は本能のみでこちらに向かって来ますので……』
「倒すしかないよな」
俺はティアにアローモードに変形してもらう。
ブルーティアは輝きを放ち、弓の形態になる。
「ティア。【弓】スキルの習得を頼む。もちろん、最大でだ」
『かしこまりました』
淡い光を放つブルーティア。
俺はキリキリと弓を絞る。
「コケー!!」
キングコカトリスがダラダラ涎を垂れ流しながら駆け出した。
さっきとは比べ物にならない速度でだ。
「に、逃げろ! たとえ君でも怒り狂ったキングコカトリスには勝てない!」
「ここで逃げても誰も責めやしない! いいから逃げるんだ!」
兵士たちが大騒ぎし、撤退を推奨してくる。
だが俺はそれを無視し、キングコカトリスの頭に狙いを定めていた。
「【プラズマショット】」
光の矢は、バチッと電気を散らしながら飛んで行き――
キングコカトリスの額をスコーンと貫いた。
「コ……ケ……」
巨体が岩場に沈み、大きな音を立てる。
「今回も楽勝だったな」
『はい。この労働力で考えれば、破格の報酬でございますね』
「ははは。本当だ。楽に稼げてみんなも助かる。これぐらいが俺には丁度いいよ」
「…………」
あまりにもあっけない結末に、兵士たちは目を丸くして俺を見ていた。
「う、噂以上じゃないか……?」
「あ、相手はキングコカトリスだぞ」
「こんな強い人がこの世にいるのか……」
人間の姿に戻ったティアと俺は、そんな彼らの姿を見て、顔を合わせて笑った。
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